小回りのきく中小企業と革新的な事業展開を目指す大企業「製造マネジメント」ランキング

@IT MONOist 製造マネジメントフォーラムでアクセスが多かった記事を紹介します。今回の集計対象期間は、2012年4月16日〜30日です。

» 2012年05月02日 11時00分 公開
[原田美穂,@IT MONOist]

 2012年4月後半のランキング第1位は、日本の太陽光発電技術の歴史と、今、かつてない取り組みを始めつつあるシャープの事業戦略について紹介した記事でした。

 この記事が掲載される直前、液晶テレビ事業の失速などによる決算情報が話題となりましたが、エネルギー事業戦略では攻めの姿勢が明らかになった格好です。

 第2位は「大企業は『普通の活動』を実現するのが難しい?」がランクインしました。記事では、大企業にありがちな情報連携の不備やそれに起因するムダを改善するためのマネジメントプロセスについて紹介しています(バックナンバー参照)。



 本フォーラムで取り上げるのは大企業の話ばかりではありません。先日は、勢いのある中国の新興企業を取材しました。また、別途記事として紹介予定ですが、日本のある部品メーカーを訪問しました。こちらは歴史ある企業ですが、非常にうまく世代交代を実現するとともに、新しいアイデアを積極的に取り入れて売り上げを伸ばしているようです。全体に目が届く若手がおり、その若手が現代的な感覚で企業ブランディングや新規事業展開をどんどん進めています。

 興味深いのは、その日本の部品メーカーも中国の企業も、全体に目が届く立場の方が最適な提案をしている点です。中国企業の方は拡大路線を進んでおり、いまや大企業となっていますが、スタートアップ時のメンバーはごく数人。「なんでも屋」でなくては業務がまわらない時代を知っているリーダーが、全体を見ながらハンドリングしているのでしょう。もう1つの国内部品メーカーの場合は、生産管理部門の担当者が、経営トップと共に全体を見渡して行動しているようです。小さな所帯なので何でもやることができる、それが面白みだと、その担当者は語っています。

日本版FITに大企業が動く

 さて、第1位にランクインした記事で紹介しているシャープは電機メーカーとして初めて、電力を作り出す事業を展開しようとしています。記事で言及しているように、日本版FITのスタートが目前に迫っていることもあり、電力買い取り指針の動向は一般紙でも大きく取り上げられています。この分野でどの戦略をとった企業が勝ち残っていくのか、今後の動向が注目されるところです。

 この分野にいち早く乗り出し、蓄積したノウハウを自社の技術開発にフィードバックする環境を得て、そこにアドバンテージを持たせていくのだとしたら、今後の展開が非常に面白くなりそうです。連載では新エネルギー関連の技術動向を紹介していますので、バックナンバーもぜひ参照してみてください。


「小寺信良のEnergy Future」バックナンバー

事業戦略と技術ポジションの確認

 事業戦略に関連していうと、以前、知財マネジメントに関する連載の中で、経営戦略に結びついた知財戦略が重要であるという言及がありました。

 モノづくりに限らず、技術をもって製品価値とする分野において、ライバルは誰であるか、ライバルの弱点は何であり、自社はどの技術で優位に立てばよいのか、既存技術で新規に展開できる分野はどこか、といった研究開発の作戦を立てる能力は非常に重要です。

 もちろん分析しなくても自明のことも多いでしょうが、よくよく知財情報を分析していくと、各社のポジション整理や自社の立ち位置がより明確になります。自社事業の転換やビジネスモデル考案において、この技術的なポジションの把握は非常に重要です。

 連載では、例えばEV関連事業の分析においてはテスラモーターズが、実は各企業との共存共栄のための技術戦略をとっていることも紹介しました。つまり、EVそのものを事業として扱っていこうという企業にとってテスラモーターズは「ライバルではない」ということです。詳しい分析は「世界が注目するEVベンチャー“テスラ”の実力は?」で解説しています。

 直近の動向分析では有償の知財ソフトウェア/サービスの方が有利ですが、高価な分析ソフトウェアなしでも、ある程度の情報を得られます。調査方法についても過去の連載『自社事業を強化する! 知財マネジメントの基礎知識」で紹介していますので、参考にしてみてください。



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