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» 2012年05月09日 10時40分 UPDATE

マイクロモノづくり 町工場の最終製品開発(20):設備やアイデアがなくても、ワクワクするモノづくり (1/2)

「私でなくてもできる仕事は、無理に私が手掛けなくても良い」――さまざまな経験で築いた人脈をうまく生かした、ワクワクするモノづくりとは?

[宇都宮茂/enmono,@IT MONOist]

 マイクロモノづくりを成立させるためには、設備を持って製造する会社と、製品アイデアを持つ方とのコラボレーションが必須です。今回はいままでとは違い、「設備を持っていない」「製品アイデアを持っていない」というフリーランサー 栗栖良依さんのマイクロモノづくり事例になります。

さまざまなことを経験して人脈作り

 栗栖さんは大学時代、アートマネジメントを学びながら、劇団の演出やアートプロジェクトのプロデュースを手掛け、大手イベント会社でアルバイトをしてイベント運営のノウハウを身に付けました。

yk_enmono20_01.jpg 栗栖良依さん

 大学卒業後はイタリア大学院留学を志し、その費用を稼ぐためにコスメ通販のベンチャー企業にアルバイトとして入社。そこでは、大学時代の経験を買われ、企画から生産管理、マーケティング、販売までの全ての業務を任されました。

 栗栖さんが入学したのは、難関といわれるデザイン専門大学院 ドムスアカデミー(伊)でした。結局は、コスメ通販会社は辞めて学業に専念し、ビジネスデザイン修士を取得します。

 イタリアから帰国後は、フリーランスとして、海外デザイナーのマネジメント、ブランドコンサルティング、イベントプロデュースなどを手掛けてきて、現在に至ります。

 ――と、一気に書きましたが、栗栖さんがこれまでにさまざまな経験を積んできたことがお分かりいただけたでしょうか。

 このような経験の中で、栗栖さんはさまざまな業界の人脈を築いていったのです。さらにその人脈が、いろいろな企画の種や、その企画を実現するためのリソースとなって、現在の仕事に非常に役に立っているということです。

町工場のブランディング

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 栗栖さんは、職人集団「夢職人」の「MISOKA(ミソカ)」という製品のブランディングに携わりました。MISOKAは、ブラシの毛に微細加工を施した、歯磨き粉が不要な歯ブラシです。

 よくあるパターンなのですが、このような技術者(職人)発案の商品は、「モノはいいけれど、売れない……」(マーケティングがネックとなる)状況に陥りやすいのです。そこで手腕を発揮したのが、栗栖さんです。MISOKAが見事な製品デビューを飾るための一役を担いました。

 このケースでは、栗栖さんが、MISOKAのCI戦略や製品のパッケージ、プライシングなどのマーケティング戦略全般をディレクションしました。

 日本中には優れた技術や商品は多々あるものの、お客さまにうまく伝わっていないケースが多くあるものです。中小企業の方々が、栗栖さんのような方と巡り会う機会をどんどん持っていけば、業界はより活性化していくことでしょう。

CI(コーポレート・アイデンティティー):その企業における個性・独自性を確立し、それを統一的なビジュアルデザインや具体的な企業行動などを通じて、社内外の人々に認識してもらうことで、企業イメージを明確化して他社との識別・差別化を図る組織的活動。(@IT情報マネジメント用語事典より)



社会とアート

 徳島県神山町では、住民参加型エンターテイメント作品「神山農響楽団」というプロジェクトを実施しています。これまで実際、多くの神山町民が参加をし、スクリーンデビューを果たしてきました。

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 栗栖さんは、このプロジェクトにも携わってきました。彼女は、「パフォーマンス集団 STOMPの元ダンサー(リック・ウィレット氏)が来日したがっている」という情報を得て、「ダンサー ウィレット氏の能力と神山町(阿波踊り)をコラボさせる」という企画を考え、実行したのです。

 最初は不安そうだった町の方々も、ワークショップを繰り返すうちに、どんどん参加するように。多人数が参加する“町民による町民のための”アート作品となっていきました。

 普通は想像できない、ユニークな組み合わせも、実際にやってみると案外うまくはまった例だと言えます。このようなことを直感的に発想できるのが、栗栖さんの能力です。その原泉となっているのは、後で述べる“ワクワク感”です。

SLOW LABEL

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 もう1つ栗栖さんが手掛ける仕事としては、まさに現在進行形である「SLOW LABEL(スローレーベル)」があります。2009年より「象の鼻テラス」を拠点としてスタートした「横浜ランデヴー プロジェクト」から生まれたブランドです。全て“一点モノ”の手づくり雑貨を扱っています。

 栗栖さんはその2011年度ディレクターとして、横浜市内の障害者施設や企業、国内外で活躍するアーティストらをつなげ、彼らの特色を生かしたモノづくりや、その新しい仕組み作りをしています。

 こちらの仕事も、ワクワク感がドライブしているのです。

象の鼻テラス:横浜市中区の公園「象の鼻パーク」内に立地するカフェ・多目的スペース。



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