おばかモノづくりグッズを販売してしまった件エイプリルフール企画のその後(2/3 ページ)

» 2012年05月28日 16時20分 公開
[小林由美,@IT MONOist]

ワクワク・enmonoズ

 一言で言い表せない!? ユニークなモノづくり支援企業のenmonoは、かつて製造業向けWebコミュニティーを運営するNCネットワークのITを担当した代表取締役の三木康司氏と、元大手メーカーの生産技術者である技術担当取締役 宇都宮茂氏の2人組だ。

enmono 技術担当取締役 宇都宮茂氏
enmono 代表取締役 三木康司氏は「ミキティー」に扮し、接客した。この猫耳は、おばかモノづくり祭とは無関係な製品だが、「人の脳波を感知し自動で耳が動く」というコンセプトはそれと通ずるものがある。

 両氏はSNSを積極的に活用し、自らがこれまで築いてきた人脈や技術的な知識を駆使して、下請けの業務が主であった加工業の自社製品企画や、個人を含む異分野コラボレーションを、コンサルティングや実務研修、あるいは交流の場のセッティングなどによって支援してきた。

 日々の活動で、「ワクワクすることには力がある」ということを両氏は実感しているという。実際、enmonoが何らかしらの形で関わってきた、あるいは見てきた製品開発プロジェクトも、具体的に前に進む場合には、そういう要素が大いにあったようだ。

 今回の、おばかモノづくり祭の展示も、同社のそういう考えと、その具体的成果の紹介の場でもあった。MONOistのエイプリルフール企画記事の参加呼びかけにも協力していただいている。

 ワクワクする気持ちは人間の元気の源であるが、厳しい経済状況下で、忘れられがち、あるいはプライオリティを下げてしまうものなのかもしれない。しかし魅力ある製品を生み出すために、苦痛や苦渋に満ちた気持ちがプラスになるとは言い難い。

 このおばかモノづくり祭に作品を寄せること自体も、「忙しいし面倒くさいけど、今後のお付き合いがあるからしぶしぶ」という思いでは成せることではなかっただろう。

正式にリリースされた「iPhone Trick Cover」

 エイプリルフール企画の記事に参加するためにニットー(横浜市金沢区)が製作した「iPhone Trick Cover」は、記事公開以来、Web上の多くの人たちの注目を集め、製品化の可能性について問い合わせも多く届いたことから、2012年8月からの販売が正式決定。今回、その試作品を販売した。iPhone Trick Coverは、iPhoneをヌンチャクさながらに振り回すことができるケースだ。


 同社がリリースを出した途端、そのユニークな製品の誕生について、多数のメディアが記事にした。

 ニットーは、治具製作を得意としてきたメーカーだ。以前から同社の代表取締役 藤沢秀行氏自身の頭の中でその案はあった(同氏いわく、「妄想」)。しかし、もともとの同社には、ジョークグッズのような製品の開発経験や、ジョークグッズを「作りたい」と気軽に言えるような空気もなかった。このため、「妄想」を実現するチャンスを見いだせずにいたという。

ブースでデモをするニットー 代表取締役 藤沢秀行氏

 そんな中、製造業仲間経由で、MONOistのエイプリルフールの企画のことを耳にしたことで、「やるならここだ!」と思い、参加してくださった。主に営業時間外に藤沢氏自らがiPhone Trick Coverの試作に取り組んだ。

 社内の人たちもこの思いがけない面白製品の誕生を喜んでいるようだ。

 なお同社では、休日に自社設備を社員たちに開放し、この製品のような自発的で楽しいモノづくりを推進しているということだ。


信州の眠らない暴走列車、再び

 エイプリルフール企画の際、「一体、いつ寝ているのか」と思うほどの勢いで、おばかグッズの数々を次々と生み出した長野県伊那市の設計会社 スワニ―。

 デザフェスでも渾身の「おばかグッズ」を展示した。その中には新作も幾つかあった。新作の開発では、今年新卒で採用した社員が既に活躍していた。4月に入社して1カ月強で、同社が保有する3次元プリンタがどういう性質のものであるか、大体理解していた。これも、「どんどんモノづくりを体験させ、一刻でも早く即戦力にする」と考えるスワニーにおける新人教育の成果の1つだろう。

「寝ててもばれないマスク」でパフォーマンスするスワニー 代表取締役 橋爪良博氏
今回、KC戦士となったスワニーの設計者 白川徹氏。カンチョーマシーン「KC-01」を装備
グッズ化されてしまった女子社員:本人たちは、ちょっと怒っている。
新入社員 藤崎さんがかかわったTシャツ:学生時代から趣味で続けてきたイラスト。今後はキャラクター開発などでもその特技を生かしていく。

 スワニーでは、このような社員たちの自発的で楽しいモノづくりの成果を活用し、伊那市との協業も具体的に進めているということだ。

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