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» 2012年05月31日 11時55分 UPDATE

知財コンサルタントが教える業界事情(13):CFRPの知財マップ/炭素繊維で世界シェア7割を占める日本企業の知財勢力図は? (2/3)

[菅田正夫,@IT MONOist]

大手3社におけるCFRPの日本公開系特許出願状況は?

 図1の大手3社のCFRP特許出願件数推移をご覧いただきたいと思います*。

*炭素繊維強化樹脂(CFRP)特許の調査方法 Fタームを用い、CFRP特許群を作成しました。テーマコードの「4F072:強化プラスチック材料」に注目すると、今回の調査対象に関連するFタームとして、「4F072AB10:繊維状物質の材質が有機繊維である炭素繊維」と「4F072AL02:予備成形品、成形品の用途が一般成形品の、乗物またはその本体部品」とがあります。

 ですから、乗物用CFRP特許群の検索式は、4F072AB10*4F072AL02となります。

図1 東レ・三菱レイヨン・帝人系企業(帝人/東邦レーヨン/東邦テナックス)のCFRP日本公開系特許出願件数推移 図1 東レ・三菱レイヨン・帝人系企業(帝人/東邦レーヨン/東邦テナックス)のCFRP日本公開系特許出願件数推移

 図1から、日本公開系特許出願累積件数は、CF分野の先行企業である東レが最も多く、三菱レイヨン、帝人系企業の順になっていることが分かります。

 それでは、3社の企業活動と特許出願件数推移の関係に注目して見ましょう。

 まず、1990年代の特許出願件数に注目すると、東レは特許件数増加後に、横ばい傾向を保ったのに対し、三菱レイヨンと帝人系企業は特許件数が低迷しています。この件数推移には、東レがこの時期に航空機分野で大型発注を受けていたのに対し、三菱レイヨンと帝人系企業はまだ受注案件の規模が小さかったことが反映されていると推察されます。

 つぎに、1999年からは3社ともに、特許出願件数の増加と横ばい傾向が再び始まっています。このことは3社とも、航空機の次に、自動車分野への参入を目指し始めたことを示唆しています。

 それでは、日本企業大手3社における乗物用CFRPの日本公開系特許出願状況を順に見ることにしましょう*。

* 乗物用CFRP特許の調査方法 Fタームを用い、乗物用CFRP特許群を作成しました。テーマコードの「4F072:強化プラスチック材料」に注目すると、今回の調査対象に関連するFタームとして、「4F072AB10:繊維状物質の材質が有機繊維である炭素繊維」と「4F072AL02:予備成形品、成形品の用途が一般成形品の、乗物またはその本体部品」があります。ですから、乗物用CFRP特許群の検索式は、4F072AB10*4F072AL02となります。そして、テーマコード「4F072:強化プラスチック材料」では、材料の全体的特徴が示されているFタームとして、「マトリックスが硬化性樹脂であるもの」には4F072AA07が、「マトリックスが熱可塑性樹脂であるもの」には4F072AA08が、「予備成形品の形状の種類がプリプレグ、シート(←SMC)のもの」には4F072AG03が、それぞれあります。
 そこで、乗物用CFRP特許群において、マトリクス樹脂や予備成形品に注目した特許検索式は以下のようになります。
・乗物用CFRPのマトリクスが硬化樹脂の特許群の検索式:4F072AB10*4F072AL02*4F072AA07
・乗物用CFRPのマトリクスが熱可塑性樹脂の特許群の検索式:4F072AB10*4F072AL02*4F072AA08
・乗物用CFRPの予備成形品の形状の種類がプリプレグ、シート(←SMC)である特許群の検索式:4F072AB10*4F072AL02*4F072AG03


東レの乗物用CFRPの日本公開系特許出願状況

 図2の東レの乗物用CFRPの日本公開系特許出願件数推移をご覧ください。

図2 東レの乗物用CFRP日本公開系特許出願件数推移* 図2 東レの乗物用CFRP日本公開系特許出願件数推移*

* 乗物用CFRP、硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、プリプレグ、シート(←SMC) 「乗物用CFRP」には、Fターム「4F072AB10*4F072AL02」からなる特許群が示されています。そして、乗物用CFRP特許群(「4F072AB10*4F072AL02」)を付与されたFタームを用い、次の3つに分類しています。
・4F072AA07(硬化樹脂)が付与された特許群は「硬化性樹脂」と、
・4F072AA08(熱可塑性樹脂)が付与された特許群は「熱可塑性樹脂」と、
・4F072AG03(プリプレグ、シート(←SMC))が付与された特許群は「プリプレグ、シート(←SMC)」と、それぞれ表記されています。
なお、ここで「シート(←SMC)」はSheet Moulding Compoundで作製されるシートをさしています。


 東レは1990年代後半に、ボーイングから航空機一次構造材の発注を受けており、2006年には社内に自動車戦略室が設置されています。

 ですから、2000年の急激な特許件数増加はCFRPの次なる用途開発を試行した時期に対応する特許出願であり、2006年の急激な特許件数増加は自動車分野への展開に対応する特許出願と推察されます。東レは2006年に、ボーイングと16年間の長期供給契約を締結しており*、これ以降は社内の自動車戦略室を軸に、自動車分野への展開が加速されたと推察されます。


 特許の出願内容に注目すると、2000年までは、プリレグやシート(←SMC)に関する特許出願が多く、2001年以降は硬化樹脂に関する出願が多くなっていることから、2000年まではCFを主体に、2001年以降はマトリクスである硬化樹脂や熱可塑性樹脂、プリプレグ、シート(←SMC)を主体に、それぞれ技術開発が進められていると推察されます。


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