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» 2012年05月31日 11時55分 UPDATE

知財コンサルタントが教える業界事情(13):CFRPの知財マップ/炭素繊維で世界シェア7割を占める日本企業の知財勢力図は? (3/3)

[菅田正夫,@IT MONOist]
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帝人系企業の乗物用CFRPの日本公開系特許出願状況

 図3の帝人系企業の乗物用CFRPの日本公開系特許出願件数推移をご覧ください。

図3 帝人系企業(帝人/東邦レーヨン/東邦テナックス)の乗物用CFRP日本公開系特許出願件数推移 図3 帝人系企業(帝人/東邦レーヨン/東邦テナックス)の乗物用CFRP日本公開系特許出願件数推移

 帝人は、1999年にCF事業を開始したと公表しています*。ですから、1998年までは、東邦レーヨンと東邦テクニカが主体となって技術開発が行われていたことになります。そして、帝人系企業は2004年以降の特許出願件数を増加させており、その技術開発成果が2010年のEADS(エアバスやユーロコプターの親会社)との航空機用CFRP供給契約**につながったと推察されます。なお、2007年の乗物用CFRP特許件数の一時的な件数減少は、2010年に締結されたEADSへの供給に対応させるべく、CFRPの完成を急いだために生じた現象と推察されます***。

* 帝人事業構造改革による成長軌道への回帰(PDF)
** 帝人炭素事業説明会資料
*** 「大企業の小規模事業部門の特許出願件数推移」をご参照ください。


 また、2004年から2006年の特許出願件数増加には、熱可塑性樹脂に関わる特許が多く含まれています。その後、2007年から2009年までは、熱可塑性樹脂に関わる特許件数は減少傾向にありますが、2010年に再び増加しており*、帝人系企業がマトリクスとして熱可塑性樹脂に注目していると推察されます。

*2010年の特許出願件数 特許の公開までは通常1.5年ですから、約2カ月分相当が未公開なことにご注意ください。


 帝人は2011年3月9日に、「CFRTPの自動車用車体骨格を実現」を公表*しています。

 この公表の背景にある技術開発経緯は特許出願件数推移から、

  • まず、2004年から2006年ごろにマトリクス候補の熱可塑性樹脂が絞り込まれ、
  • 2007年から2009年ごろに熱可塑性CFRP加工技術の開発がなされ、
  • 2010年から2011年にかけ、最終仕様に対応する技術の特許出願がなされた

と推察されます**。

*帝人ニュース・リリース
** 大企業の小規模事業部門の特許出願件数推移 大企業の小規模事業部門では、技術開発に専念している時期には件数が増加し、製品化に専念している時期には件数が減少し、製品発表時期に件数が再び増加するという傾向があります。大企業といえども、開発人員が限られた小規模事業部門では、総動員体制で製品発表に取り組むため、このような特許件数推移が示されます。


三菱レイヨンの乗物用CFRPの日本公開系特許出願状況

 図4の三菱レイヨンの乗物用CFRPの日本公開系特許出願件数推移をご覧ください。

図4 三菱レイヨンのCFRP日本公開系特許出願件数推移 図4 三菱レイヨンのCFRP日本公開系特許出願件数推移

 三菱レイヨンは1990年代後半までの、CFRPの航空機一次構造材への応用時期には、東レほどではないまでも、それなりの発注を受けており*、それに対応する特許出願が行われていました。

 しかしながら、各社が自動車分野を目指した2000年以降の時期から、帝人系企業並みの特許出願件数は維持しているものの、マトリクスとして熱可塑性樹脂を用いたCFRP技術に関わる成果の公表はいまのところなく、CF供給を中心とする事業展開になっていると推察されます。

*航空機製造産業の機体用素材(CFRPなど)メーカー 東レ、三菱レイヨン、Hexcelなど(参考資料、PDF)。

 次回は、CFRPの課題であるリサイクルに注目してみましょう。



筆者紹介

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菅田正夫(すがた まさお) 知財コンサルタント&アナリスト (元)キヤノン株式会社

sugata.masao[at]tbz.t-com.ne.jp

1949年、神奈川県生まれ。1976年東京工業大学大学院 理工学研究科 化学工学専攻修了(工学修士)。

1976年キヤノン株式会社中央研究所入社。上流系技術開発(a-Si系薄膜、a-Si-TFT-LCD、薄膜材料〔例:インクジェット用〕など)に従事後、技術企画部門(海外の技術開発動向調査など)をへて、知的財産法務本部 特許・技術動向分析室室長(部長職)など、技術開発戦略部門を歴任。技術開発成果については、国際学会/論文/特許出願〔日本、米国、欧州各国〕で公表。企業研究会セミナー、東京工業大学/大学院/社会人教育セミナー、東京理科大学大学院などにて講師を担当。2009年キヤノン株式会社を定年退職。

知的財産権のリサーチ・コンサルティングやセミナー業務に従事する傍ら、「特許情報までも活用した企業活動の調査・分析」に取り組む。

本連載に関連する寄稿:

2005年『BRI会報 正月号 視点』

2010年「企業活動における知財マネージメントの重要性−クローズドとオープンの観点から−」『赤門マネジメント・レビュー』9(6) 405-435


おことわり

本稿の著作権は筆者に帰属いたします。引用・転載を希望される場合は編集部までお問い合わせください。



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