特集
» 2012年06月14日 17時45分 UPDATE

“エッジの効いた?”イマドキな自動車設計開発:SNSのコミュニティーでわいわい自動車開発する

本稿では、SNSを使ったオープンな自動車開発で実績を上げる企業 ローカル・モーターズを紹介する。「Solid Edge University 2012」より。

[小林由美,@IT MONOist]

 米シーメンスPLMソフトウェアは2012年6月11〜13日(現地時間:初日はブース展示とレセプションのみ)、米国テネシー州で同社のユーザー向けイベント「Solid Edge University 2012」を開催した。同社のミッドレンジ3次元CAD「Solid Edge」のユーザーに絞ったイベントだ。しばらく「Siemens PLM Connection」という同社のユーザーイベントでSolid Edgeも扱ってきた時期もあったが、2011年より単独のイベントとして復活したという。

 さて、そのキーノートや展示では、同社のユニークなユーザーによるさまざまな設計物が紹介された。

yk_seu201203_01.jpg 月面着陸船
yk_seu201203_02.jpg 米国の学生フォーミュラ(SAE)カー:日本の学生フォーミュラは、米国のSAEを参考にして始まった
yk_seu201203_04.jpg Edison2の車両:自動車開発のプロたちの少数精鋭集団による電気自動車(EV)

 そのうちの1社、米国のローカル・モーターズ(Local Motors)は、自動車業界における既成概念を打ち壊そうと、日々、まさに「エッジの効いた」開発を進めている。

yk_seu201203_05.jpg 米国 ローカル・モーターズ(Local Motors) CEO ジェイ・ロジャース(Jay Rogers)氏

ローカル・モーターズとクラウドソーシング

 ローカル・モーターズは、「数十億ドルもの税金の節約をかなえ、戦地の隊員の生命さえも救済した」とバラク・オバマ米大統領の過去の演説で絶賛されたことがある。同社は、国防高等研究計画局(DARPA:Defense Advanced Research Projects Agency)から依頼された戦闘支援車両の設計・製造を4カ月以内で完了させたからだ。

 ローカル・モーターズは、大手企業では考えられない手法で自動車を製作している。自動車開発といえば、設計情報の機密管理が厳しく、クローズドに行われるイメージが強いだろう。ところが同社では社外の人たちとコミュニティーを築き、自動車開発にまつわる情報をWeb上のオープンな環境で共有しながらコミュニケーションを取り合い、企画から設計、製作、販売まで一環して共同で行っている。いわゆる「クラウドソーシング」といわれる形態だ。

 同社が運営するコミュニティー「The Forge」は、企業・個人問わずデザイン関係や製造業に携わる人たちが中心となり構成されており、中には学生で参加しているメンバーもいる。現在、そのメンバーは総勢3万人を超えているという。

 ローカル・モーターズ自体は、基本的に、自動車製作の環境やコミュニケーションプラットフォームの提供や取りまとめに徹している。実際の企画や開発、部品調達、製作は、あくまでコミュニティーのメンバー同士が責任を持って行う。使用する部品は全て一から作る必要性はなく、既製品を組み合わせて作ってもよい。

 同社のECサイト上では、部品や車両などの“モノ”だけではなく、「アイデアそのもの」(いわゆる、“コト”)も取引される。そこで取引されるデザインは、時に、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに基づいて、柔軟性を持たせながら保護をする。

クリエイティブ・コモンズ:米国の非営利団体が提唱する著作物におけるライセンス形態。著作物について、その権利者が提示する条件を満たした者に使用許諾をする。



 同社は実際に、上記のDARPAの事例や、SUV(スポーツ用多目的車)の「Rally Fighter」などで既に成果を出している。

yk_seu201203_06.jpg Rally Fighter

 同社の手法では、従来の自動車製作と比較すると、コストや製作期間が大幅に短縮できるとしている。下図は、同社の資料からの抜粋だ。同社の車両開発をシミュレーションし、テスラモーターズ、GMといった有名メーカーと比較している。

yk_seu201203_07.jpg
yk_seu201203_08.jpg

 なぜ、コストや製作期間を大幅に短縮できるのか。それをかなえているのが、同社の主義やコミュニティーの「柔軟性」だ。彼らには、大きな組織で起こりがちな「組織の壁」や、それ故の動きづらさ、意思決定の遅延などの懸念がない。その柔軟性をかなえる要因として、CADなどの設計ツールの選定基準も含まれている。

 同社におけるオープンハードウェアイノベーションについて、CEOのジェイ・ロジャース(Jay Rogers)氏は次のように述べている。

  • ブロードバンドによるコミュニケーション(Broadband Communication)
  • オープンイノベーションの開発を法的に保護する(Development of Open Innovation Legal Protections)
  • プロフェッショナルツールのコストの低減(Decrease in the Cost of Professional Tools)

 Web上のSNSを活用したコミュニケーションにより、自由な発想や価値観の違い、利害関係などから、諸々の問題が発生する。そこで、法的な戦略が必要になる。ローカル・モーターズは法律面での壁について、先のクリエイティブ・コモンズの例のように、個人や組織の集合であることも生かしつつ、柔軟かつ戦略的に対応している。

 最後の項目「プロフェッショナルツールのコストの低減」は、一見、CADベンダーにとってはあまり“おいしくない”話のように見える。しかし、そうではないようだ。

 シーメンスPLMソフトウェアの立場は、単にソフトウェアを提供するベンダーということではなく、パートナーシップ(協業)契約を結んでいる。Solid Edgeをコミュニティー推奨の3次元CADと定め、The Forgeのサイト内でも積極的に導入を推奨する告知も実施している。「CADの販売促進・啓発」というCADベンダーサイドのニーズと、「さまざまな属性の人が扱いやすい3次元CADがほしい」というユーザー企業側のニーズがマッチしたことで、興味深いビジネスモデルを形成している。

やはり、人の力

 ローカル・モーターズが、同社のオープンハードウェアイノベーションのハウツーとして掲げていたのは、以下4つのポイントだ。

  • リーダーシップ(Leadership)
  • 組織(Organization)
  • 敬意(Respect)
  • 約束(Engagement)

 要するに組織力、結局、人の力ということだ。

 ロジャース氏は、米国のコンピュータ企業 サン・マイクロシステムズの創立者でコンピュータ科学者のビル・ジョイ(Bill Joy)氏の言葉を挙げていた。同社のコンセプトの原点ともいえる言葉だ。

「あなたが誰であろうとも、大抵の賢い人々は他の誰かのために働く」(No matter who you are, most of the smartest people work for someone else)

 人はもともと、そんな原動力を備えているはずなのである。

第23回 設計・製造ソリューション展(DMS2012)

会期 2012年06月20〜6月22日 10:00〜18:00※最終日のみ17:00終了

会場 東京ビッグサイト

シーメンスPLMソフトウェア ブース情報

東2ホール(小間番号:14-42)



第23回 設計・製造ソリューション展特集

>>↑↑↑特集ページはコチラから↑↑↑<<

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.