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» 2012年07月05日 08時00分 UPDATE

小寺信良のEnergy Future(18):一般家庭・小規模事業主が安心して蓄電池を使うために――あるメーカーの震災後の製品展開から (1/3)

止められない設備がある。個人事業主や家庭レベルで、電力供給の安心を担保するにはどうしたらよいのか。市場の問いの中から、皆の選択が見えてきた。

[小寺信良,@IT MONOist]

個人向け蓄電システムの課題

 この夏に向けての電力問題を、いよいよ真剣に考えなければならないタイミングになってきた。福井県大飯原発原発が再稼働しても、関西圏の電力需要に対して十分マージンがあるとはいえず、6〜10%の節電目標が課せられることになりそうだ。

 東京電力管内の電力事情は、原発の再稼働がなかったとしても、関西電力よりは余裕があるといわれているが、これは節電効果により例年より10%減らせるという見込みに基づいている。昨年は企業の取り組みが大きかったが、計画停電によりやむなく操業を停止したところも相当あったはずだ。もう昨年並みの節電ができるとは限らない。

 一般家庭では、エアコンを我慢するといった方法ぐらいでしか対応できないだろう。しかし、客観的に見て中小規模の事業者が、一番やりようがないのではないかという気がする。客商売や医療関係では、エアコンを切ることができないだろう。それに替わるなんらかの対策をとる必要がある。

 太陽光発電も1つの解ではあるが、設置工事や総額費用、そもそも設置する場所があるか、日照条件はどうか、といったさまざまな要素があり、実行できるかどうかが問われる。そもそも賃貸物件では、勝手に工事もできない。

 そんなところから、筆者が注目しているのは小規模事業者から一般家庭ぐらいまでをターゲットにした、蓄電システムである。

 過去、中小規模の蓄電システムを幾つか取材したことがある。中規模では三洋電機の蓄電システム、小規模ではソニーのオフィス向け蓄電システム、さらに小型の家庭向け蓄電装置を取り上げた。

 これらのシステムの中で、瞬時に電力を切り替える、いわゆるUPS機能が付いているのは、ソニーの「ESSP-2000」のようなオフィス向け蓄電システムだけだった。中規模以上になるとUPS付きの製品を見つけるのはなかなか難しい。さらに家庭用の「CP-S300」ともなれば、そもそもAC電源をスルーで使うことができず、単に電気をためておいて困ったときにはそっちに差し替えるという使い方しかできない。

 計画停電のように、停電する時間があらかじめ予告されていればそれでも対応できるかもしれないが、いつ停電するか分からない状態で、精密機器を使った仕事は難しい。その点に不満がある。

 UPS機能がついた中小規模の蓄電システムはないかといろいろ探したところ、フロンティアオーズという企業の「ENEBOX(エネボックス)」という製品にたどり着いた。最下位グレードの製品はUPS機能がないようだが、それ以外は全てUPSが付いている。

 見た目はゴツイが、ユニークな製品だ。早速同社にお邪魔して取材させていただいた。

ポイントは“軍用バッテリー”

 フロンティアオーズは、2010年創業のまだ新しい会社である。現在社員は10人。同社は秋田に製造工場を持つが、その工場の従業員を含む全従業員数が、10人である。

 その前身となったのは、某大手の企業向け節電ソリューションを手掛けていた部門だ。同社はそこからスピンアウトして創業したのだという。

 現在は、製品が各所から引く手あまたとなっているが、当然それは2011年の震災がきっかけであった。だが震災を狙っての創業ではない。創業当初から手掛ける「E-1300」は、もともとキャンピングカー用のバッテリーとして販売を始めたものだという。

 キャンピングカーというのは、まあ、ありていにいえばゼイタクな遊びだ。電気がないところまでわざわざ車を転がしていって、そこでいつも通りの電気のある生活をする。何も我慢しない。そういう製品であった。

 ところが震災以降、さまざまなところからさまざまなニーズが寄せられるようになった。同社にとっては想定外の要望だったようだが、こうした要望に答えていった結果、現在の製品ラインアップが出来上がったのだそうだ。同社の主要製品は下記の通りだ。

ENEBOXのラインアップ
モデル E-9800 E-6600 E-5000 E-2700 E-1300 E-mini
バッテリー容量 9945Wh 6630Wh 5460Wh 2730Wh 1350Wh 1200Wh
インバーター出力 3000W 2000W 1500W 1000W 700W 350W
充電時間 8時間 8時間 8時間 8時間 4時間 10時間
重量 260kg 170kg 148kg 98kg 58kg 28kg
価格はいずれもオープン

8時間の充電でエアコンを13時間動作させられる

 注目すべきは、その出力の大きさである。最大の「E-9800」では出力3000Wというから、一般家庭であれば、エアコンから冷蔵庫、テレビまで、平気で同時に使えるぐらいのパワーがあるということになる。

E-9800 最大の容量を持つE-9800は、これだけで一般家庭の家電を難なく長時間動作させられるほどの能力を持つ

 また容量でいえば、E-9800は600Wのエアコンを13時間、150Wの冷蔵庫なら53時間駆動できる容量を持つ。これが8時間で充電できるのだから、かなり早い。もちろん内部的には複数のバッテリーをパラレルで充電していることもあるが、ENEBOXは特注の急速充電器を内蔵しており、高出力で充電を行える。8時間にこだわった理由は、深夜電力の時間内に充電を完了させるためである。

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