新型「レクサスES」の画像センサーをデンソーが開発、小型化と多機能化を実現安全システム

デンソーは、従来品と比べてユニットの容積を半減した画像センサーを新たに開発した。車線逸脱警報システムと自動ハイビーム制御システムに対応する機能を併せ持つ画像センサーとしては世界最小だという。新型「レクサスES」に採用された。

» 2012年07月25日 16時10分 公開
[朴尚洙,@IT MONOist]

 デンソーは2012年7月25日、自動車の安全システムに用いる画像センサーを新たに開発したと発表した。従来品と比べてユニットの容積を半減するとともに、道路上の白線を認識して車線を維持する「車線逸脱警報システム(LDW)」と、前方車両のテールライトを検知してヘッドライトのロービームとハイビームを自動的に切り替える「自動ハイビーム制御システム(AHB)」の両方に必要な画像認識機能を備えることを特徴とする。同等の機能を持つ画像センサーとしては「世界最小」(デンソー)だという。2012年7月から出荷が始まっている、トヨタ自動車の海外向けセダン「レクサスES」のオプション装備として採用された。

デンソーが新たに開発した画像センサー「レクサスES」に設置した状態 左の写真は、デンソーが新たに開発した画像センサー。右の写真は、「レクサスES」のバックミラーの裏側のフロントガラス上端付近に画像センサーを装着した状態である。(クリックで拡大) 出典:デンソー、トヨタ自動車

 新開発の画像センサーは、処理負荷の軽いアルゴリズムの採用により、搭載する汎用マイコンだけでLDWとAHBに求められる画像認識処理を行える。これにより、LDWとAHBの両方に対応する際に必要になる専用の画像処理ICが不要になった。さらに、従来品では個別部品で構成していた電源回路を集積化することで、ユニットの小型化を実現している。ユニットの外形寸法は、従来品の縦88×横142×高さ34mmに対して、新開発品は縦70×横73×高さ32mmで、横幅の削減が中心となっている。単純計算した容積で比較すると約63%の削減になるが、「完全に直方体の製品ではないので半減という表現に留めた」(デンソー)という。

 LDWやAHBに用いる画像センサーは、バックミラー裏側のフロントガラス上端付近に装着するため、乗員の目に留まりやすい。視界の上方に大型のユニットが存在すると、乗員に強い圧迫感を与えてしまう。この問題を解決するために、最も寸法の大きかった横幅の削減に重点が置かれたようだ。

 新開発品に採用した汎用マイコンは、従来品で用いていたものよりも動作温度範囲が広いため、画像センサーそのものの動作温度範囲も広がった。動作温度範囲は、従来品は−30〜65℃だったが、新開発品は−40〜85℃となっている。デンソーは、「世界で最も広い温度範囲で動作する画像センサーとなり、夏場や気温が高い地域などでもLDWやAHBを安定して利用できるようになった」としている。

 この他、画像センサーの撮像素子を、従来品で使用していた白黒のものからフルカラーのものに変更している。これにより、LDWを世界各国の道路標示に対応させられるようになり、AHBでも前方車両のテールライトと他の光源を容易に識別できるようになった。撮像素子の解像度はWVGA(800×480画素)である。

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