「安定した工程」を作るには? ゼロから学ぶ「管理図」の使い方実践! IE:現場視点の品質管理(13)(2/4 ページ)

» 2012年08月02日 17時00分 公開

管理図の概要を知ろう

 管理図は、工程が安定状態にあるかどうかを把握するために欠かすことのできない「QC七つ道具」の1つで、製造工程の品質管理を進めていく上での有用なツールです。ひとことで表現すれば、製品の品質が各製造ロットでどのようなバラツキ状況にあるのかを図で表したものです。

 具体的には、時間別など、あらかじめ決めたルールに従ってデータをサンプリングしてそれを集計します。その結果を1つの群として折れ線グラフを作成します。また、管理図は、品質管理以外にもあらゆる管理に活用できるものですから、ひとくくりに「品質管理図」という名称で用いることは適切ではありません。

 管理図には、工程を安定した状態に保つために、上方と下方に管理限界(Control Limit Lines)を設定して、管理状態が管理限界内にあり安定しているか、あるいは、その外側に出ていて異常な状態にあるかを見分けるために使います。具体的には、中心線(CL:Center Line)を実線で記入し、上方管理限界線(UCL:Upper Control Limit)、および下方管理限界線(LCL:Lower Control Limit)を点線で記入します。中心線(CL)は、その製品の平均水準を示すものであり、2つの管理限界線(UCL、LCL)は、アクションの限界を示すものです。「図1 管理状態」を参照してください。

 すなわち、管理図では、中心線(CL)と管理限界線(UCL、LCL)によって、打点した点の配置と分布から、その管理工程の異常が判断できます。打点が管理限界内にあれば、工程は管理状態にあるものと判断して生産をそのまま続行し、打点が管理限界外に出たときは、工程に異常があるとみて、適切な処置を行わなければなりません。

図1 管理状態 図1 管理状態

 管理図の目的としては、次の2つが挙げられます。

  1. 製造工程が、管理状態にあるかどうかを調べる
  2. 製造工程を正しく管理状態に保つ

 管理図は、工程に何か異常が発生した際に、それを私たちに知らせてくれます。以上が発生した場合には、すぐに何らかのアクションを起して、二度とその異常が発生しないような処置を行う必要があります。

 アクションを起すタイミングは、打点が管理限界外に飛び出したとき、点の並び方が異常を示したときに行わなければなりません。「図2 点が管理限界外に飛び出した場合」を参照してください。打点が管理限界線上にある場合は、管理限界外に出たものと見なします。

図2 点が管理限界外に飛び出した場合 図2 点が管理限界外に飛び出した場合

 管理限界は、問題のある作業の是正処置をするための経済的指針として用いられます。従って、管理限界線を設定する際は、3σ法の統計的な計算の結果をそのまま適用するだけでなく、経済的品質水準や技術的判断などによる望ましい管理限界の要求を加味しなくてはなりません。

 すなわち、管理限界は、もし打点が限界外に出たら必ずアクションを起こすということを前提として定めますから、これをどこに選ぶかは、存在しない故障や不良を探し出そうとするムダな労力(第1種の過誤)と、実在する故障や不良を見逃すこと(第2種の過誤)による損失とを比較して、経済的に定める必要があります。

 例えば、管理限界の幅を狭くすれば打点が限界線の外に飛び出す機会も多くなり、実在しない故障を探し出すムダな労力を増やすことになります。逆に、管理限界の幅を広くすれば、本来アクションを起こさなければならないような打点も限界内に入り、見逃すことになります。結果として知らないうちに不良率が増加する可能性があります。

 3σ法は、種々の実績から見て、最も基本的で多用されている管理限界の設定方法で、統計量の標準偏差(バラツキ)の3倍の位置に管理限界を決める方法をいいます。3σ管理図では、第1種の過誤を犯す確率は、通常0.3%程度です。つまり、バラツキの分布が、正規分布(Normal distribution)であれば、99.7%はこの管理限界の中に入るという意味です。

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