インタビュー
» 2012年08月02日 07時30分 UPDATE

パイオニア HUDカーナビ インタビュー(後編):未来に追いついた? 映画や漫画に出てきそうなカーナビ (1/2)

パイオニアがカーナビ向けに開発したHUD(ヘッドアップディスプレイ)が大きな反響を呼んでいる。「『ドラゴンボール』に出てくるスカウターのようだ」「『宇宙兄弟』に出てくる宇宙ナビのようだ」……。漫画やSFに出てきそうなこのカーナビ、開発にはどのような苦労があったのか。同社の開発担当者に話を聞いた。

[土肥義則,Business Media 誠]

⇒インタビュー前編はこちら

 パイオニアが2012年7月下旬に発売した、HUD(ヘッドアップディスプレイ)搭載のカーナビが話題を集めている。

 「『ドラゴンボール』に出てくるスカウターのようだ」、「『宇宙兄弟』に出てくる宇宙ナビのようだ」――あたかも漫画やSFに出てきそうな、近未来的なカーナビだが、その開発にはどのような苦労があったのだろうか。前編で紹介した、HUDを使った自動車運転における安全性確保の取り組みに続いて、同社でHUDの開発に携わった古賀哲郎氏に話を聞いた。聞き手は、Business Media 誠編集部の土肥義則。

近未来のモノがやって来た

yd_hud1.jpg サイバーナビのヘッドアップディスプレイ

土肥義則(以下、土肥):こうしてHUDを見ると、メガネのような感じもしますね。コンバイナーを支える部分は、メガネのテンプル(つる)のようにも見えます。

 ただ、第一印象はこのように感じる人が多いのではないでしょうか。漫画「ドラゴンボール」に登場してくる「スカウター」だと。スカウターとは半透明の小型スクリーンに、相手の戦闘能力などが表示される。また通信機能なども備えていましが、HUDもこのスカウターを意識されたのでしょうか?

古賀哲郎氏(以下、古賀):いえ。それはないですね。

土肥:人間のように歩くロボット「ASIMO」の生みの親である本田技術研究所の方は、会社からこのように言われたそうです。「鉄腕アトムをつくれ」と。もちろん「鉄腕アトム」と同じモノをつくれという話ではなく、生活をしていくうえで役立つロボットの開発を目指していました。

 「ASIMO」は手塚治虫さんの漫画に登場してくるキャラクターの影響を受けたそうです。

古賀:「社内の人間にドラゴンボールのファンがいたから、HUDが完成した」というわけではありません。私たちが目指していたモノが、結果的にスカウターの形に近かった、といった感じですね。

 ただ2011年に発売した「サイバーナビ」には「ARスカウターモード」という名前をつけました。もちろん相手の攻撃能力が表示されるわけではなく、フロントガラス越しの映像にナビ情報や車間距離などを重ねて表示する、といったものですね。

土肥:昨年発売されたサイバーナビもかなり注目を集めましたよね(関連記事1)。ネット上でも「未来のカーナビが登場した」といったコメントが多かったのですが、今回のは「さらに未来のモノがやって来た」といった印象を受けました。

HUDを使えばドライバー席からはルート情報などが、実際の走行風景に重なって見える HUDを使えばドライバー席からはルート情報などが、実際の走行風景に重なって見える(クリックで拡大)

 HUDを開発するにあたって、どのようなことに苦労されたのでしょうか?

古賀:苦労はたくさんありましたが、その中のひとつ「暑さ」対策には悩まされました。夏、クルマの中はとても暑くなりますよね。例えば外が40℃のとき、クルマの中の温℃を計測したところ75℃もありました。

 HUDはレーザーをつかって映像を描いているのですが、暑さの中でそれを表現することは難しい。なぜなら、暑ければ部品が壊れてしまうから。

 暑さをどのように克服したのか――。具体的には企業秘密の部分もあって言えないのですが、「温度に合わせて光らせる」といった技術をつかいました。例えばこの温度のときには、このように光らせるといった感じですね。

土肥:車内の温度が75℃で運転する人はいません。クーラーをつけたり、窓を開けて運転したりするので、それほど暑さを心配しなくてもいいのではないでしょうか?

HUDの開発に携わったパイオニアの古賀哲郎氏 HUDの開発に携わったパイオニアの古賀哲郎氏

古賀:車内の温度とHUDを設置するところの温度は違います。また温度の下がり方にも違いがあります。車内の温度はすぐ下がるのですが、HUDを設置するサンバイザー部分はなかなか下がりません。

 クルマの中はいったい何度になるのか。日本全国の年間の最高気温と最低気温を調べました。そうして暑さにも耐えられるモノを完成させました。

 また「明るさ」にも気をつけました。昼と夜とでは明るさが当然違うので、こまかくデータを収集しました。まぶしいときにはどのくらいの色にすればいいのか。明るいときにはどのくらいの色にすればいいのか。逆に、暗いときにはどのくらいの色にすればいいのか。何度も何度も、繰り返し検証しました。

 ところで、ドイさん。HUDをつかうときに、どういった気象条件が一番厳しいと思いますか?

土肥:うーん。なんだろう? ひょっとしたら晴天かな。雲がないときの空というのは真っ青だし。

古賀:残念ですが、違います。正解は、HUDの先に真っ白な雲があるとき。この気象条件は厳しいですね。白色が見えなくなったりしますので。

 でも、ご安心ください。そうした気象条件でも、白色がきちんと見えるようにしました。

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