連載
» 2012年08月20日 12時55分 UPDATE

「ビジネスS&OP」とは何か(1):日本のモノづくりのアキレス腱「利益率」を改善する近年型/発展型S&OPとは? (1/2)

需給はやみくもな在庫削減や稼働率に引きずられるべきでなく、事業全体の利益を基に考えなくてはならない。本稿では近年欧米や新興国系の企業で採用されている管理手法を見ていく。

[酒井ひろみ/インフォアジャパン,@IT MONOist]

 1980年代に提唱されたS&OP(Sales and Operations Planning:販売および操業計画)は、かつては「製販調整」や「需給調整」と呼ばれ、単一のオペレーショナル需給計画を立てるプロセスとほぼ同義でした。近年はその概念が発展し、財務・予算計画との統合や収益を勘案した「利益ベース」の需給バランス計画が求められています。本連載では、近年欧米や新興国系の企業で採用されている発展的な管理手法を見ていきます。

 2011年、震災や洪水といった災害による被害は、人々の生活はもちろんのこと、企業のサプライチェーンにも打撃を与えました。直接被害を受けた企業だけでなく、取引先が被災したために部品を調達できず、共倒れになってしまう企業も少なくはありませんでした。

 製造、在庫、販売のバランスを調整するサプライチェーン最適化というテーマそのものは、震災が起こる前から各社で取り組まれてきたものです。

 製販(生販)調整会議、需給調整といった会議が開催され、コスト削減、納期厳守、在庫削減といった目標のためにまい進してきました。それにもかかわらず、想定外の事態に現場での対応が遅れ、最終的に財務や経営に影響を及ぼしてしまうのはなぜでしょうか。

 この連載では、これまでのサプライチェーンマネジメントの枠組みの中でも、とりわけ計画系のプロセスを今後どのように発展させていけばよいのか、そして、実際に運用していくための情報管理ツールをどうしたらよいのか、グローバル先進事例はどのようかを紹介していきます。

 第1回目は、これまでの需給バランス計画プロセスが、今後どのように発展していくか、グローバルの動向を交えながら説明していきます。

「単一のオペレーショナルな需給計画」と「打ち手」を決定する合意形成プロセス

 S&OPは、製造業および流通業において事業収益を左右する、重要なビジネスマネジメントプロセスの1つです。需要と供給とを収益性よくバランスさせ、同時に事業目標にも沿う「単一のオペレーショナル需給計画と打ち手」を決定する、複数の関係部門とマネジメントおよびエグゼクティブによる合意形成プロセスを指しています。

 この概念は1980年代後半に提唱されたもので、決して新しい言葉ではありません。しかし日本では、「S&OP」という呼称はあまり使われてきませんでした。日本の製造業にはかなり昔から、製販調整や製販会議、生販在(PSI)計画、あるいは需給調整という呼称の、計画および調整業務や会議体が存在しています。単一のオペレーショナル需給計画を決定するという点で、こういった会議体や意思決定プロセスはS&OPと同義といえるでしょう。

欧米・韓国で主流となりつつある「ビジネスS&OP」

 しかしこういったプロセスは、「従来型のS&OP」といえ、近年、欧米および韓国の製造業および流通業が注力しているのは、そこから一歩進んだ「近年型/発展型のS&OP」です。しばしば、従来型を「オペレーショナルS&OP」、近年型/発展型を「ビジネスS&OP」あるいは「エグゼクティブS&OP」と、使い分けて表現することがあります。その違いが何なのか、グローバル企業におけるサプライチェーンマネジメントに関する意識変化や動向をみながら考えてみます。

高まるサプライチェーンマネジメントへの関心

 この数年、世界全般的にサプライチェーンマネジメントの重要度がますます増しているといえます。北米や欧州で例年開催されるSCMカンファレンスや、CSCOサミット(CSCO=Chief Supply Chain Officer、サプライチェーン最高責任者)、あるいはCSCOが集まるソーシャルネットワークの存在に、関心の高さや学習意欲がうかがわれます。

 図1は、ガートナーによる2010年の調査結果です。SCMの正式な部門を設置し、定着している企業が、5年前と比較して増加しています。組織体制の在り方からも、企業においてサプライチェーンマネジメントの重要度が増していることがうかがえます。

 さらに興味深いのは、サプライチェーン情報の最終報告先が、オペレーションのマネジメントレベルから、CEOや社長などの経営者レベルに変化している企業が大幅に増えていることです。

 こういった企業が、具体的にどのような課題に注力し、どのようなアクションをとっているのか、もう少しトレンドを探ってみることにしましょう。

mhfpro_sop01fig01.gif 図1 ガートナーによる企業のSCMに関する調査結果(2011年)
       1|2 次のページへ

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.