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» 2012年08月31日 10時30分 UPDATE

工学院大学わくわくサイエンス祭レポート:“未来のモノづくり技術者”を育む「理科教室」

約1万人の小中学生を集める日本最大級の理科実験イベント「工学院大学わくわくサイエンス祭『理科教室』」。夏休みの自由研究に悩む小中学生の駆け込み寺が、未来のモノづくり技術者を育んでいる!

[西坂真人,MONOist]

 今日は8月31日。小中学生の頃はこの日が近づくにつれて憂鬱(ゆううつ)な気分になり、山積みされた夏休みの宿題に途方に暮れていた……という苦い思い出を持つ人も少なくないのではないだろうか。特に夏休み宿題の主役「自由研究」は一朝一夕にできるものではない。昭和の昔からの定番「晩夏の図書館の混雑」とともに、ネット時代の現代ではこの時期になると子ども向けポータルサイトの検索キーワードに「自由研究」「理科」が多くなるというのもうなずける。

 そんな小中学生の福音となるのが、全国各地の理工系大学で実施される「理科教室」だ。その中でも約1万人の小中学生を集めるという日本最大級の理科実験イベント 「工学院大学わくわくサイエンス祭『理科教室』」が8月25、26日に工学院大学 八王子キャンパスで催された。

photo 日本最大級の理科実験イベント 「工学院大学わくわくサイエンス祭『理科教室』」

 2012年で19回目を数える工学院大学の理科教室は、さまざまな実験や工作を通して子どもたちに理科をより好きになってもらうことを目的として開催されている。1994年の初開催から年々規模も拡大、昨年は83テーマで9300人以上の来場者を集めて過去最高記録を更新した。今回は、工学院大学が2012年10月31日に学園創立125周年を迎えるアニバーサリーイヤーということもあり、125周年記念イベントの1つとして規模をさらに拡充。昨年を上回る85ものテーマを用意して臨み、9500人以上の来場者を集めた。

photophoto 人気テーマの1つ「医療用材料でオリジナルスーパーボールを作ろう!!」は、人口耳/鼻の形成材料として使われている医療用材料を用いて、オリジナルスーパーボールを作るというもの。普段お目にかかることはない医療用材料を使うことで、何度でも姿を変えることができる特殊なスーパーボールが自作できるとあって、白衣を着た“ちびっ子科学者”の参加希望が後を絶たず、教室は常に満員状態だった。「実はこの医療用材料は高価で、材料費が大変なんですよ」と主催者側は苦笑い。
photophoto 「工学院大学ソーラーカーの原理を学ぼう」では、2012年7月28〜31日に秋田県大潟村で開催された「World Green Challenge 2012」のソーラーカー部門チャレンジクラスで第1位入賞およびソーラーカー部門チャンピオンに輝いたソーラーカーの実物が登場。キャンパス内敷地でのデモ走行や、ソーラーカー内部機構の披露などでソーラーカーの仕組みや走る原理を学習した子どもたちは、“太陽の力だけで走る夢のエコカー”の実物を前に目を輝かせていた。
photophoto 「風に向かって走るウインド・カー」は、工学院大学の学長を務める水野明哲教授が指導する「流体工学研究室」が企画した工作教室。「なぜ風に向かって進むことができるのか」が自分で工作することで理解がより深まり、風の向きによって動力源の風車が回る速さも変わってくることから、流体工学の基礎が効果的に学べる教材になっている。出来上がったウインド・カーはタイムトライアルに挑戦でき、子どもたちは自作したウインド・カーの走行タイムを競っていた。

 この理科教室には、主催する工学院大学の学生だけでなく、同大学の付属中学・高等学校の生徒も含めて700〜800人が参加し、この日だけの「臨時の理科教師」として小中学生に理科の面白さを教えている。「予算のやりくりや材料の手配、スケジュール調整など普段の授業では学べないことが理科教室にはたくさんある。学生は自分で考え、自分たちで工夫して、どうしたら子どもたちが楽しんでくれるかを考えてくれている」と大学側も語るように、こうした学生・生徒を主体とした取り組みは教える側にとっても高い教育効果があるようだ。そのことから、全国の大学で行われる理科・科学実験教室のモデルケースにもなっているという。

 また、全国各地の自治体や教育委員会からの「自分の地域でも理科教室を開催したい」との要望を受けて、2009年からはキャンパスの枠を超えて地方都市で開催する「出張理科教室」を開始。2012年は5月27日に宮城県東松山市で開催したほか、2012年11月には長野県諏訪市でも開催が予定されている。

 理科教室に参加した小学生からは「いろいろな実験や工作が実体験でき、理科が好きになった」「理工系の職業に興味を持った。モノを作る仕事がしたい」といった意見が非常に多く、中には「将来は工学院大学に入りたい」という女子小学生も。

 理科離れが叫ばれる中、小中学生が理科に興味を持ったり理工系大学を志望するきっかけに理科教室が貢献しているようだ。

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