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» 2012年09月19日 19時31分 UPDATE

ブワッと冷えます:冷却能力はヒートパイプの2.3倍、パナソニックの高速ジェット流冷却システム

パナソニック エコシステムズは、一般的なヒートパイプの2.3倍の冷却性能を持つ冷却システムを開発した。冷却対象に滴下した冷媒が気化する際に発生する高速ジェット流を利用している。

[朴尚洙,MONOist]
パナソニックの「JEST型ループヒートパイプ冷却システム」

 パナソニック エコシステムズは、材料技術の展示会「N+(エヌプラス)」(2012年9月19〜21日、東京ビッグサイト)において、新たに開発した「JEST(Jet Explosion Stream Technology)型ループヒートパイプ冷却システム」を公開した。冷却対象に滴下した冷媒が気化する際に発生する高速ジェット流を利用して、一般的なヒートパイプの2.3倍に相当する390W/cm2という冷却性能を実現した。冷媒の循環にポンプなどの電力を使用する機器が不要なことも特徴である。SiC(シリコンカーバイド)デバイスなどの次世代パワー半導体を用いた高密度パワーエレクトロニクス機器や、スーパーコンピュータの演算処理装置といった、発熱密度の高いものを冷却する用途に向ける。

「JEST型ループヒートパイプ冷却システム」の模式図「JEST型ループヒートパイプ冷却システム」のデモ 左の図は「JEST型ループヒートパイプ冷却システム」の模式図。右の写真は「N+」における同システムのデモンストレーションである。冷媒には純水を使用している。(クリックで拡大) 出典:パナソニック エコシステムズ

 JEST型ループヒートパイプ冷却システムは、大まかに分けて4つの部品から構成される。1つ目は、発熱体と接しており、冷媒の滴下によって高速ジェット流を発生させる構造を持つ受熱部である。2つ目の部品は、受熱部で気化した冷媒を還流させる気化冷媒用の配管だ。3つ目は、配管を経て送られてきた気化した冷媒を冷やして液体に戻す放熱部である。最後の4つ目は、放熱部で液化した冷媒を受熱部に供給する、冷媒供給用の配管だ。この冷媒供給用の配管には、受熱部で気化した冷媒が入り込むのを防ぐと同時に、一定量の液化した冷媒が滞留すると自動的に冷媒を受熱部に滴下するように調整された逆止弁が組み込まれている。

受熱部に冷媒を滴下する際のイメージ 冷媒供給用の配管から受熱部に冷媒を滴下する際のプロセス。一定量の冷媒がたまった状態で、受熱部での冷媒の気化が終わって逆止弁にかかる圧力が弱まると、逆止弁が開いて冷媒が受熱部に滴下される。受熱部で冷媒が気化すると、逆止弁にかかる圧力が高まって閉じるので、冷媒の滴下が止まる。(クリックで拡大) 出典:パナソニック エコシステムズ

 同システムの中核部品になるのが、高速ジェット流を発生させる受熱部である。受熱部が冷却対象となる発熱体と接している受熱面は、放射状のスリット構造を採用した。冷媒供給用の配管から受熱面の中心部に滴下された冷媒は、その一部が受熱面から熱を奪って気化する。気化して体積が急激に膨張した冷媒は、冷媒供給用の配管と受熱面の間のわずかな隙間を通過する際に高速ジェット流となって周囲に拡散する。この高速ジェット流が、まだ気化していない冷媒を巻き込む形で受熱面のスリット構造の表面に沿って高速で流れて冷媒の気化を促進する。高速ジェット流による冷媒の気化により、発熱体から効率よく熱を奪えるようになるという。

受熱部における高速ジェット流生成の仕組み 受熱面における高速ジェット流生成の仕組み(クリックで拡大) 出典:パナソニック エコシステムズ

 システム内では、受熱部を下方、放熱部を上方に配置することになる。これは、放熱部で液化した冷媒を受熱部に滴下するのに重力を利用しているためだ。このため、冷媒を使用しているものの、冷媒を循環させるためのポンプは不要である。さらに、受熱部と放熱部の距離が3m以内であれば、冷却が可能なことを確認している。ただし、重力を利用して冷媒を循環しているため、放熱部が受熱部よりも上方に位置していなければならないという制約も存在する。

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