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» 2012年09月26日 18時54分 UPDATE

電気自動車:トヨタのEV「eQ」をベース車「iQ」と比較、主要電動部品は既存品を流用

トヨタ自動車の電気自動車(EV)「eQ」は、4人乗りのコンパクトカー「iQ」をベースに開発された。eQとiQの比較から、ベースのガソリンエンジン車をEVとして仕上げるために必要なことが見えてくる。さらにeQは、「レクサスGS450h」、「プリウス」、「プリウスPHV」、先代の「RAV4 EV」といった既存車両の電動部品の流用によって、開発期間の短縮を実現している。

[朴尚洙,MONOist]
トヨタのEV「eQ」

 トヨタ自動車が、4人乗りのコンパクトカー「iQ」をベースに開発した電気自動車(EV)「eQ」。ホンダの「フィットEV」を抑えて世界最高“電費”を達成するなど、トヨタ自動車が単独で開発したEVとしての面目を保つ性能を有している(米国のEVベンチャーTesla Motorsと共同開発したEV「RAV4 EV」は既に米国で販売されている)。

 日本市場向けのeQの外形寸法は全長3115×全幅1680×全高1535mm、ホイールベースは2000mm、最小回転半径は4.1m、車両重量は1080kgである。

sp_120926toyota_01.jpgsp_120926toyota_02.jpg 左の写真は「eQ」の外観。右の写真は、eQの車室内である。(クリックで拡大) 出典:トヨタ自動車

 モーターの最高出力は47kW、最大トルクは163Nmで、最高速度は毎時125km。総容量12kWhのリチウムイオン電池パックを搭載し、満充電状態からJC08モードで100km走行できる。国土交通省がEVの電費の基準として定める、1km走行するのに必要な電池の容量(Wh)を示す交流電力量消費率(JC08モード)は、フィットEVの106Wh/kmよりも良好な104Wh/kmを達成した(交流電力量消費率は、通常の燃費とは異なり低いほど良い値である)。

 充電時間は100V電源で約8時間、200V電源で約3時間、CHAdeMO規格に準拠する急速充電で約15分(80%充電)となっている。

iQより115mm長い全長

 このeQについて、ベース車であるiQと比較してみよう。

 表1は、eQとiQ(排気量1.3リットルのエンジンを搭載する「130G」)について、外形寸法(全長×全幅×全高)、ホイールベース、最小回転半径、室内寸法(長さ×幅×高さ)、最低地上高、車両重量、パワートレイン(eQはモーター、iQはエンジン)の最高出力/最大トルク、価格を比較した結果である。


車両名称 eQ iQ
外形寸法 3115×1680×1535mm 3000×1680×1500mm
ホイールベース 2000mm 2000mm
最小回転半径 4.1m 3.9m
室内寸法 1560×1515×1110mm 1560×1515×1145mm
最低地上高 130mm 135mm
車両重量 1080kg 950kg
最高出力/最大トルク 47kW/163Nm 69kW/118Nm
価格 360万円 168万円
表1 EV「eQ」とベース車「iQ」の比較

 まず外形寸法を見ると、eQは、iQよりも全長が115mm長い。全幅は1680mmで同じである。ホイールベースも2000mmで同じなので、増加した115mmの全長は、車両のフロントとリアのオーバーハング(前輪/後輪よりも車両が外側に突き出ている長さ)が合計で115mm長くなっていることを意味している。このため、iQの最大の特徴だった、軽自動車よりも小さい3.9mという最小回転半径は、4.1mに増えてしまっている。

 eQの全長が大きくなったのは、エンジンやトランスミッション、ガソリンタンクに替えて、モーター、インバータ、車載充電器、急速充電コネクタ、大容量のリチウムイオン電池パックを搭載したためである。特に車両前部には、モーターやインバータなどの電動システムに加えて、普通充電コネクタと急速充電コネクタ、普通充電コネクタで充電する際に100V/200Vの交流を直流に変換する車載充電器など、リチウムイオン電池パックを除く主要部品が全て搭載されている。

sp_120926toyota_03.jpgsp_120926toyota_04.jpg 左の写真は、「eQ」の車両前部に設置されている充電コネクタ。普通充電コネクタと急速充電コネクタを両方とも車両前部に持ってきている。右の写真は、eQのリチウムイオン電池パックである。(クリックで拡大) 出典:トヨタ自動車

 eQのリチウムイオン電池パックは、車室の床下に組み込まれている。このリチウムイオン電池パックのスペースを稼ぐために、全高と室内高さ、最低地上高がiQと異なっている。全高が35mm増加する一方で、室内高さは35mm、最低地上高は5mm減少した。これらを合計した高さ75mmの空間にリチウムイオン電池パックを組み込んでいることになる。

 eQの車両重量はiQより150kg重い。この重量増加の主な要因は、総容量12kWhのリチウムイオン電池パックである。eQのリチウムイオン電池セルは、プラグインハイブリッド車(PHEV)「プリウスPHV」と同じパナソニック製のものを採用している。この電池セルは出力電圧が3.7Vで、電流容量が21.5Ahである。eQのリチウムイオン電池パックは出力電圧が277.5V、容量が12kWhなので、直列75個×並列2個(合計150個)の構成で電池セルを接続していることが分かる。

 eQのモーターは、iQの排気量1.3リットルのガソリンエンジンと比べると、最高出力が排気量1.0リットルクラスのエンジンと同等の47kWまで低下している。その一方で、走り出しや登坂時などの走行性能に影響する最大トルクは163Nmまで向上している。

 eQとiQの価格差は192万円である。EVを購入する際には、「クリーンエネルギー自動車等導入費補助事業」による補助金を得られるが、その金額はEVとベース車の差額の半額が基準となっている(上限は100万円)。実際に補助金を算定する際のベース車の価格は若干異なる可能性はあるが、今回の価格差から考えれば96万円の補助金が得られることになる。

先代「RAV4 EV」のギヤボックスも流用

 なおトヨタ自動車は、eQを開発する上で、モーターやインバータ、ギヤボックス、リチウムイオン電池セルといったEVの主要部品を新たに開発していない。これまでに開発したハイブリッド車(HEV)やPHEV、EVの部品を流用することで、開発期間の短縮を実現している。

 モーターは「レクサスGS450h」、インバータは3代目「プリウス」のものを採用している。リチウムイオン電池セルは、先述した通りプリウスPHVと同じである。ギヤボックスについては、トヨタ自動車が1996年に開発したEVである初代のRAV4 EVから流用している(関連記事)。

 EVの電費性能に大きく影響するブレーキ回生システムについては、ブレーキエネルギーを電力に変換する電動ブレーキから油圧ブレーキに切り替えるタイミングを、既存のトヨタ車よりも遅くすることで効率を高めた。eQでは、時速4kmまで電動ブレーキを使用しているという。

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