エコカーとともに進化する鉛バッテリーいまさら聞けない 電装部品入門(2)(1/3 ページ)

代表的な電装部品の1つとして知られている鉛バッテリー。今回は、前回に引き続き、鉛バッテリーをさらに深く掘り下げる。充電制御機能やアイドルストップ機能など、最近のエコカーに搭載されているシステムへの対応についても紹介しよう。

» 2012年10月29日 15時00分 公開
いまさら聞けない 電装部品入門

 前回は、代表的な電装部品の1つとして知られている鉛蓄電池を使ったバッテリー(鉛バッテリー)について、その構造や充放電の仕組みといった基礎知識を紹介しました。

 今回は、鉛バッテリーの型式や容量、自己放電や暗電流への対応などについて説明します。さらに、充電制御機能やアイドルストップ機能など最近のエコカーに搭載されているシステムへの対応や、自動車用バッテリーとしてのリチウムイオン電池の可能性についても取り上げます。

形式と容量

 鉛バッテリーは、JIS規格(JIS D5301)で規定された形式によって、外径寸法や容量などが細かく分けられています。これらの形式は購入時の指標となっており、本体上部にも明示されています。筆者のWebサイトに鉛バッテリーの形式一覧があります。

鉛バッテリーの型式の一例 鉛バッテリーの型式の一例(クリックで拡大)

 形式として表示されている数値やアルファベットには、それぞれ意味があります。簡単にそれぞれの意味を紹介します。

(例)55 B 24 L

 「55」は鉛バッテリーの性能ランクを表しており、数値が大きいほど性能は高くなります。「B」は幅×高さ、「24」は長さによる区分を表しています。「L」は+端子の位置を表しており、今後はR(右側)を廃止してLに統一しようという動きがあります。

 鉛バッテリーの容量は、時間率容量(Ah:アンペアアワー)によって表されます。基本的に鉛バッテリーは電源として使用できることが大前提です。なので、満充電状態から電源として使用できなくなる状態(放電終止電圧)まで電力を出力した際に、流した電流の値と時間から鉛バッテリーの容量を求めることができます。

 JISで規定されている項目にもあるように、鉛バッテリーの容量は5時間率で考えるのが最も一般的です。

 5時間率容量がどういうものなのかを、先述の55B24Lの鉛バッテリーで見てみましょう。この鉛バッテリーの5時間率容量は36Ahです。これは、5時間で36Ahの容量を出力できることを意味しています。すなわち、36Aを5で割った7.2Aの電流値で、5時間出力した後に放電終止電圧(10.2V)に至るということを表しています。もちろん、バッテリー性能は温度によって左右されますので、5時間率容量の測定時の電解液温度は25℃と定められています。

鉛バッテリーを扱う上での注意点

 鉛バッテリーを取り扱う上では、自己放電という特性や、現代の自動車に必ず存在する暗電流などに対応する必要があります。以下に、簡単に説明しましょう。

自己放電

 鉛バッテリーは、両端子に電気負荷を接続せずに単体で放置していても、蓄えた電力を徐々に失っていきます。これは、セル内部の両極板間でゆるやかな化学反応が発生して少しずつ放電しているためです。

 この自己放電にはさまざまな原因が考えられます。例えば、電解液中に混入した不純物や脱落した作用物質が電解液中を浮遊して、局部的な電池が作られてしまうという事象があります。他にも、セパレータの部分的な破損による両極板の短絡などもあり得ます。

 これらの原因によって、鉛バッテリーは未使用状態からでも、半年程度で完全放電状態になってしまうことがあります。つまり、入荷から時間が経過している鉛バッテリーは、使用前に外部電源によって充電する必要があるのです。

暗電流

 自動車は、エンジンを停止して使用していない状態でも、極めてわずかながら電力を消費しています。これを「暗電流」といいます。

 暗電流は、車載システムを制御するECU(電子制御ユニット)のバックアップ電流や、セキュリティシステムの動作電流によって発生します。暗電流が大きいと、停車中に鉛バッテリーの容量が減少していきます。特に、最近の自動車にはさまざまな電装部品が取り付けられているので、暗電流の値は増加していると考えられます。基本的に週末しか自動車を運転しないといった利用スタイルでは、平日の間にバッテリーの容量が減少します。もし、週末の運転が近場での買い物という短距離走行だったりすれば、平日に減少した容量を週末の走行中の充電によって取り戻せないことになります。こういったことが続くと、鉛バッテリーを早期に交換する必要も出てきます。

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