トヨタがEV開発に注力しない理由とは? 全固体電池が走行距離の限界を打ち破るエコプロダクツ2012(2/2 ページ)

» 2012年12月17日 14時46分 公開
[朴尚洙,MONOist]
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固体電解質のイオン伝導度を電解液と同等に

 全固体電池の実用化に向けて課題となっているのが、固体電解質のイオン伝導度の低さである。イオン伝導度が低いと、電池内部において、正極から負極、もしくは負極から正極に電力が移動しにくくなるため、電池の充放電のしやすさの目安となる入力/出力密度が低下してしまう。従来の固体電解質のイオン伝導度は、一般的なリチウムイオン電池の電解液と比べて3分の1以下にとどまっていた。

 トヨタ自動車は、東京工業大学、高エネルギー加速器研究機構との共同研究により、リチウムイオン電池の電解液と同等のイオン伝導度を持つ固体電解質「Li10GeP2S12」を開発した。

新たに開発した固体電解質のイオン伝導度 新たに開発した固体電解質のイオン伝導度(グラフの右端)。一般的なリチウムイオン電池の電解液であるLiPF6(グラフの左端)よりも高い。(クリックで拡大) 出典:トヨタ自動車

 この固体電解質と、一般的なリチウムイオン電池に用いられている正極材料と負極材料を使って試作した全固体電池は、従来の全固体電池と比べて出力密度が5倍となる2000Wh/l(リットル)以上を実現したという。電池内部で、負極−電解質−正極という組み合わせを7個直列で接続しており、出力電圧は約28Vである。

左の写真は、試作した全固体電池に用いた固体電解質。右の写真は、試作した全固体電池で、出力電圧が約28Vであることが確認できる。(クリックで拡大)

 ただし、Li10GeP2S12は、負極材料の黒鉛と接触すると反応しやすい。このため、負極材料と接する固体電解質には、従来の材料である「75Li2S・25P2S5」を用いている。このため、入力密度は、従来の全固体電池とほぼ変わらない。

 この他の課題としては、高価なGe(ゲルマニウム)の安価な材料への代替が挙げられるという。

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