絞り加工と溶接加工の変形技で目指せ! 100%プロ領域甚さんの「バンバン板金設計でキャリアアップ」(8)(3/3 ページ)

» 2013年01月18日 11時00分 公開
[國井良昌/國井技術士設計事務所(Active Design Office),MONOist]
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溶接の知識に自信ありますか?

 筆者は、ある技術系国家試験の問題を作成しています。「落とすため」の試験問題として、溶接は最適です。「溶接」――実は、これが機械設計者の“泣きどころ”なのです。溶接の加工法、その違い、得手不得手、製図法まで、全てに関して苦手なんです。

 クライアント企業の技術者に対して溶接について指導するとき、筆者は図5を提示します。

図5 電気電子産業における各溶接の部品点数分析(使用頻度分析):「ついてきなぁ! 加工知識と設計見積り力で『即戦力』」(日刊工業新聞社刊)より

 つまり溶接は、「スポット溶接」と「アーク溶接」だけを学習すればいいのです。これだけで、溶接の60%がまかなえるからです。部品の5点中3点が、図面の5枚中3枚が「スポット溶接」と「アーク溶接」なんです。……少しは気が楽になりましたか?

良

なぁんだ、そうだったんですか〜? TIG/MIGを学習する前に、「スポット溶接」と「アーク溶接」をしっかりと勉強すればいいんですね。


甚

いんやぁー、違う! 分析上は、第3位だがよう、近年、「レーザー溶接」が迫ってきているぜぃ。そういう情報はつかんでおけよ。ここは、学校じゃねぇんだ!


良

合点承知!


甚

「合点承知」は、埼玉の回転寿司(すし)屋のせりふだろがぁ、あん? ホンじゃ次はよぉ、図6を見ろ。一見、頑丈そうに見える溶接はよぉ、実は欠点だらけだ。オメェとおんなシだぜぃ!


良

……。


図6 溶接の得手不得手:「ついてきなぁ! 加工知識と設計見積り力で『即戦力』」(日刊工業新聞社刊)より

 「ここは試験に出るポイントかも」、ということは、実務においても最大のポイントです。

良

えっ、この科学が発達した21世紀でも「溶接部からのさび発生」や「溶着強度の検査ができない」、ですか。……意外でした!


甚

溶接の話は、また今度してやるぜぃ。


 今後の甚さんの“溶接の話”にも期待しましょう。

「良い会社・悪い会社」の見分け方(國井流)

 今回の最後は、設計コンサルタントの立場から考えた「良い会社、悪い会社」の見分け方をお伝えしておきましょう。

 さて筆者は、幾つかの大学で非常勤講師を務めています。今は、学生たちの就職活動が本格的になってくる時期。相変わらず就職難が続いていて、昨今の学生の就職活動は激戦です。

 そんな学生たちからよく、このように質問されます。

 「先生、『良い企業』は、どのように見極めたらよいでしょう?」

 そのようなときは、あくまでも“偏見を持つ設計コンサルタント”の立場ということで、注意を促してアドバイスします。

 以下のように、その指標を言葉で説明するのはとても簡単です。学生たち自身で調査することはちょっと難しいかもしれませんが……。

  1. 特許出願率
  2. 女性技術者在籍率
  3. 技術者役員率

 まず、1の「特許出願率」ですが、「率」故に、分母はその企業における特許提出対象の技術者総数です。多くは、研究者、設計者、生産技術者であり、その在籍人数です。分子は、年間の特許出願件数です。特許成立件数ではありません。単なる出願件数です。従って、就職面談のときに、人事担当に質問すれば後で教えてくれるはずです。もし人事担当にはぐらかされたら……要注意の企業です。

 さらに業界でくくります。例えば、自動車業界、家電業界、OA機器業界、ソーラー業界、食品業界という具合にです。

 その一業界の中で、前述の特許出願率が、第1位、第2位までの企業への就職がお勧めです。逆に、最下位、最下位から2番目などの企業への就職は慎重な調査が必要です……。

 次は、2の「女性技術者の在籍率」です。分母は総技術者在籍数。分子は女性技術者座席数です。最後は、3の「技術者役員率」。分母は総役員数。分子は技術系の役員数です。これらも、特許出願率同様の選択法で企業を選別できる情報です。

 ただし上記はあくまで、当事務所独自の統計的な選択法であることをご理解くださった上、注意して利用していただければと思います。

 次回またお会いしましょう。


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設計 | 「甚さん」シリーズ | 3次元CAD



Profile

國井 良昌(くにい よしまさ)

技術士(機械部門:機械設計/設計工学)。日本技術士会 機械部会、埼玉県技術士。横浜国立大学 大学院工学研究院 非常勤講師。首都大学東京 大学院理工学研究科 非常勤講師。

1978年、横浜国立大学 工学部 機械工学科卒業。日立および、富士ゼロックスの高速レーザプリンタの設計に従事。富士ゼロックスでは、設計プロセス改革や設計審査長も務めた。1999年より、國井技術士設計事務所として、設計コンサルタント、セミナー講師、大学非常勤講師としても活躍中。「ついてきなぁ!加工知識と設計見積り力で『即戦力』」(日刊工業新聞社)と「ついてきなぁ! 『設計書ワザ』で勝負する技術者となれ!」(日刊工業新聞社)をはじめとする多数の書籍を執筆。



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