QCサークルを超えた小集団活動の効果的な進め方(1)実践! IE:現場視点の品質管理(16)(1/3 ページ)

品質を作り上げるのは、直接仕事に携わっている1人1人です。つまり品質向上のためにはボトムアップからの作り込みが重要です。ボトムアップからの盛り上げに役立つのが「小集団活動」。さて、小集団活動を成功させる4つの基本要素とは何でしょうか。

» 2013年01月28日 10時00分 公開

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 どの企業も、優れた製品を世界に送り出すために多大な努力を払っています。その成果をさらに高めていくためには、直接仕事に携わっている1人1人が良い品質のものを安く、早く作り出すという品質意識に基づいて、ボトムアップの盛り上がりによる自主的な活動を進めていくことが最も効果的です。その1つの方法として、小集団活動(QCサークル活動)の展開があります。成果を挙げていくためには、現場の管理監督者を中心とした第一線の従業員が、積極的なグループ活動を進めていくことがポイントとなります。

 さまざまな経営環境の変化に対応し、全従業員が協力し合いながら、創意を生かして職場の業務改善や課題解決を図るために役立つばかりではありません。風通しの良い職場づくりにも、小集団活動は大変有意義な活動です。そして、小集団活動では、グループ員が自主的な計画立案はもちろん、実行、成果の確認に至る一連の業務プロセスを体験することで、自主性やリーダーシップの醸成が図れるなど、人材育成の面でもとても有効であるということがいえます。従って、小集団活動を1人1人が良く理解し、さらに充実した意義のある活動となるよう、その進め方について複数回に分けて解説をしていきます。

 日本の小集団活動は、どの企業もこぞって活溌に取り組んでいましたが、1980年代に入るとその活力にかげりが見え始めてきました。いろいろな人たちが、その原因について考察を重ねていますが、造れば売れるという状況が薄れつつあったことと無縁ではなさそうです。つまり、それまでの小集団活動のスタイルが、徐々にモノづくりの環境の変化にマッチしなくなっていったという歴史があります。

 しかしながら、最近では小集団活動をそれぞれの企業に合ったスタイルに再編し、再開した企業が多くなってきました。確かに、昨今の職場問題はいろいろな要因が複雑にからみ合っているために、従来型の小集団活動では解決できないことも多々あります。しかし、ここで活動を諦めてしまうのではなく、他のグループやスタッフ部門の人たちと一丸となって協力しながら、共通の問題に立ち向かい、難問でも解決できる高い水準のグループ活動を目指していくことが大切なのではないでしょうか。


小集団活動は米国で始まり、日本で花開く

 日本における「小集団活動」の起源は古く、QCサークル活動からスタートしたといわれています。QC(Quality Control:品質管理)の概念は、1924年に米Western Electricにおいて、電話機の品質管理に数理統計学の理論を適用して品質管理図を考案したことが始まりといわれています。その後、第二次世界大戦中に米国、欧州などで大いに活用され、QCの考え方も理論的に体系付けられてきました。

 日本にQCの概念や手法が導入され始めたのは、1949年以降で、当初は製造業の現場監督者を中心とした活動でした。1955年代に入って、「品質は工程で造り込む」という考え方から、企業の職場で生産に携わっている全従業員を対象として、QCに関する教育が積極的に行われるようになってきました。これが1962年ごろより、生産現場の職場で小グループを編成して、自主的に品質管理活動を行うQCサークル活動へと発展していきました。

 QCサークル活動の特徴は、表1に挙げた概要の通り、品質向上などを狙いとした経営改善の1つの方法であること、これを達成するために人の動機付けの側面に着目していることなどです。日本におけるQCサークル活動は、次第に経営問題のほとんどを改善テーマとして扱う、日本的な小集団活動として大きく発展していったといわれています。

 要約すれば、QCサークル活動は、不良を低減するためのQC手法を重視するものであり、グループの全員で考えながら品質に対する認識を深めていくという活動であるといえます。

表1 QCサークル活動の概要

 QCサークル活動を広く生産活動と連携させるために、自主的なグループ活動を進めることがいかに有効かについては前述の通りです。さらに、第一線の従業員のグループ活動によって、現場にかかわる全員に品質意識の浸透を図り、製品の信頼度の向上とコストダウンの効果を狙っている点が特徴であるといえます。

小集団活動の発展

 以下で取り上げる小集団活動の進め方では、いわゆるQCサークル活動の形式にとらわれない、効果的な手法を紹介します。

 まずは、小集団活動の発展の歴史から説明します。1965年から1970年にかけて、各企業が独自のQCサークル活動を展開するようになってきました。当初、製造業における品質管理の手段として考えられてきたQCサークル活動は、1965年代の後半あたりから建設や金融、流通、外食産業など、広い分野に導入されながら拡大していきました。

 さらに、1973年のオイルショックを契機に、各企業は体質改善を余儀なくされることになりました。“変化に対応できる盤石な経営体質の確立”と、より一層の“人と組織の活性化”をめざす動きです。間接部門を含む全員参加の幅広い改善活動、これを小集団活動という形で推進していくことが有効であるとの機運が高まり、以後、急速にあらゆる産業へと波及していきました。

 その後、小集団活動は、日本国内で発展を遂げながら、徐々に国外へ逆輸出されるようになっていきました。1974年には、米国の航空機メーカーLockheedが小集団活動を導入したのをはじめ、引き続いて英国やフランス、ブラジル、シンガポール、香港などの国々も次々と導入しています。

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