アイドルストップシステムの燃費向上率が2倍に、車載ニッケル水素電池でエコカー技術

パナソニック エナジー社は、アイドルストップシステムの燃費向上率を2倍に拡大できる「12V エネルギー回生システム」を開発した。既に、自動車メーカーなどへの提案を始めており、早ければ2014年にも車両搭載される見込みだ。

» 2013年02月08日 13時40分 公開
[朴尚洙,MONOist]
「12V エネルギー回生システム」に用いられている車載ニッケル水素電池

 パナソニック エナジー社は2013年2月8日、アイドルストップシステムの燃費向上率を2倍に拡大できる「12V エネルギー回生システム」を開発したと発表した。同社がハイブリッド車(HEV)などに供給している車載ニッケル水素電池を用いている。一般的なアイドルストップシステムに採用されている鉛バッテリーと並列に接続することで、鉛バッテリーの寿命を6倍に延ばすこともできるという。既に、自動車メーカーなどへの提案を始めており、早ければ2014年にも車両搭載される見込みだ。

 12V エネルギー回生システムは、高温になるエンジンルームに設置される鉛バッテリーと並列接続することを想定している。そこで、車載ニッケル水素電池の極板、電解液、電池部品などの電池設計を改良し、高温環境での充電効率と耐久性を向上させた。これによって、電池セルの充放電上限温度が、従来品の60℃から75℃に向上したので、エンジンルームに設置できるようになった。

「12V エネルギー回生システム」に用いられている車載ニッケル水素電池 「12V エネルギー回生システム」に用いられている車載ニッケル水素電池(クリックで拡大) 出典:パナソニック

 システムには、単一形(直径32.2〜34.2×高さ59.5〜61.5mm)の電池セルが10本組み込まれている。電池セル1本当たりの出力電圧が1.2Vなので、10本直列に接続することで鉛バッテリーと同じ12V出力を実現できる。このため、鉛バッテリーの電圧と整合させるための変圧器を追加する必要がない。総容量は6Ahとなっている。

 システムの外形寸法は公表されていないが、電池セルを縦2本×横5本で並べた場合には、縦67×横166×高さ60mm程度の範囲内に収まる。これに、ハウジングや制御基板を追加したとしても、鉛バッテリーと比べてかなり小さくなるとみられる。例えば、トヨタ自動車の「ヴィッツ」に搭載されている、GSユアサ製のアイドルストップ車用鉛バッテリーの外形寸法は、幅173×長さ260×高さ(端子を含む)225mmとなっている。

走行用モーターにも電力を供給

 現在、一般的なアイドルストップシステムは、減速時のブレーキエネルギーをオルタネータで電力として変換する回生機能を備えている。12V エネルギー回生システムは、回生した電力を蓄電する容量を増やせるだけでなく、走行を補助するモーターへの電力供給も可能な設計となっている。パナソニックは、12V エネルギー回生システムと走行を補助するモーターの搭載によって、アイドルストップシステムの燃費向上率を約2倍まで高められるとしている。

「12V エネルギー回生システム」の利用イメージ 「12V エネルギー回生システム」の利用イメージ 出典:パナソニック

 アイドルストップシステム搭載車の場合、停車時にエンジンが停止している間は、車載システムの電力を鉛バッテリーから供給することになる。このため、鉛バッテリーにかかる負荷が大きくなり、その寿命も短くなると言われている。

 一方、12V エネルギー回生システムのニッケル水素電池は、鉛バッテリーより電気抵抗が小さい。鉛バッテリーと並列接続すると、12V エネルギー回生システム側に電流が優先的に流れるので、鉛バッテリーへの負荷を大幅に軽減できるようになる。パナソニックは、鉛バッテリー単独で使用する場合と比べて、12V エネルギー回生システムを併用した場合には、鉛バッテリーの寿命が6倍まで延びることを確認したとしている。

鉛バッテリー単独使用時(左)と「12V エネルギー回生システム」を併用時の寿命比較 鉛バッテリー単独使用時(左)と「12V エネルギー回生システム」を併用時の寿命比較 出典:パナソニック

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