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» 2013年02月20日 10時00分 UPDATE

目指せT字型人材! 中小企業エンジニアのスキルアップ(3):これだけは知っておきたい! 「マーケティングって何?」(後編) (1/3)

マーケティングの基礎・後編では、「マーケティングミックス」について解説する。標的とした市場セグメントに、どのようにアプローチすればいいのだろうか。

[小山新太/MPA所属 中小企業診断士,MONOist]

 前回はセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングについて解説しましたが、今回は標的市場セグメントに対して、実際、どのようにアプローチしていくかを解説します。

 標的市場セグメントから望ましい結果を引き出すためには、事業に必要となる要素を適切に組み合わせてアプローチしていく必要があります。この考え方を「マーケティングミックス」と呼びます。マーケティングミックスの代表的な手法に「4P理論」があります。これは、マーケティングの4大要素となる「製品(product)」「価格(price)」「流通(place)」「プロモーション(promotion)」を適切に組み合わせて標的市場セグメントにアプローチすることで、これらの頭文字を取って「4P」と呼びます。

 それでは、なぜ4Pをミックスして考える必要があるのか考えていきましょう。例えば、子どもがいない、共働きで世帯収入が高い夫婦である「DINKS(Double Income No Kids)」をターゲットとして、「非日常を感じさせる高級イタリアン」という価値を提供するイタリア料理店を開業しようとします。そのときに、一流シェフの料理(製品)で価格は高めに設定し、高級感を訴求したプロモーションをしたとします。しかし、店舗(流通)が、郊外にあるショッピングモールのレストラン街にあったらどうでしょうか? 来店するのはファミリー層ばかりで、うまくいかないのが想像できるはずです。

 このように、企業が顧客に提供する価値は、4Pが結合して初めて生まれます。そのうちのどれか1つが欠けているだけで、それまでの努力が無駄となってしまうのです。そのため、個々の要素を密接に関連させて整合性を取りながら標的市場セグメントへアプローチしていく必要があるのです。

シーズとニーズのバランス

 まずは「製品」から見ていきましょう。製品開発については、「シーズ志向」と「ニーズ志向」という発想法があります。シーズ志向とは「企業が良いと思ったものを作る」というやり方で、企業が持っている技術力やアイデアなどを優先して製品開発することです。一方でニーズ志向は「顧客が欲しいものを作る」というやり方で、顧客の欲求(ニーズ)を優先して製品開発することです。

 それでは、シーズ志向とニーズ志向のどちらを選ぶべきなのでしょうか? 市場にモノがない時代は「良いモノを作れば売れる」という状況でした。そのため、多くの企業がシーズ志向の下に大量生産を行っていました。しかし、市場が成熟しモノがあふれる時代になると、「顧客のニーズにあった製品でないと売れない」ことになり、ニーズ志向を採用する企業が増えていきました。

 しかし、徹底的に顧客のニーズを取り入れた製品開発をしようとしても、なかなか、これで完璧というわけにはいきません。なぜなら、顧客自身が把握していない潜在的なニーズも存在するからです。ニーズ志向に偏り過ぎると「誰も予想していなかったヒット商品」を生み出すことはできず、シーズ志向に偏り過ぎると「独り善がりで誰も必要としない商品」と生み出してしまいます。そのため、いかにシーズとニーズのバランスを取るかが製品開発においては大切なのです。

価格設定に影響を及ぼす3要素

 続いて「価格」について見ていきましょう。価格決定には「コスト」「需要」「競争」の3つの要素が影響を及ぼします。具体的に言えば、「製品の原価はいくらか?」「顧客はいくらまでなら支払ってくれるのか?」「競合他社の価格はいくらか?」ということを頭に入れて価格を決定するということです。

 まずコスト面を考慮した価格設定ですが、これは企業の内的要因を基に価格を設定することです。代表的な方法として「マークアップ価格設定」があります。製品の原価に、企業が目標とする利益率もしくは利益額を加えて価格を決定する方法です。例えば、20%の利益率を目標としている企業が製品1個当たり500円のコストが掛かる製品を販売する場合は600円が最終価格となります。この方法のメリットは、需要を見積もるよりも簡単にコストを決定することができ、価格設定方法の業務を単純化できることです。一方、デメリットは、競合他社の価格を意識せず自社が高い利益率のマークアップ価格を設定してしまうことで、競合他社に市場シェアを奪われてしまう可能性があることです。

 次に需要面を考慮した価格設定ですが、これは企業の外的要因を基に価格を設定することで以下の2つの方法があります。

 1つ目は、需要と供給のバランスから価格を設定することです。「需要と供給のバランス」と言われると分かりづらいかもしれませんが、日常生活でもよく見られる価格設定方法です。例えば、同じ渡航先への航空チケットでも、年末年始やゴールデンウイークの値段は、普段よりも高いと思います。これは、需要が供給を上回っているため高い価格が設定されているのです。逆に映画館でのレイトショウ料金は、需要が供給を下回るため、通常料金よりも安い価格が設定されています。

 2つ目は、顧客の心理に基づいて価格を設定する方法で代表的な方法として以下の3つがあります。

  1. 端数価格:980円、2980円など、1000円や3000円といった切りのよい数字より安いと感じさせる価格のことです。スーパーマーケットや衣料品店などで良く目にする価格設定方法です。

  2. 名声価格:貴金属、ブランド品、高級車などの高級品に用いられる価格設定方法で、高い価格により高品質であることを知覚させる方法です。一般的には、製品価格が高いほどその需要は減りますが、高級品は「高い価格」により品質を保証している面があり、実際の原価よりも高い価格設定が可能です。

  3. 慣習価格:長期にわたり一定に維持されている価格のことです。典型例としては自動販売機のジュースがあります。ほとんどの自動販売機では缶ジュースは120円、ペットボトルは150円となっていますので、消費者の心理の中でもこれらの価格が根付いています。そのため慣習価格に対する抵抗感は少なく、120円よりも安い缶ジュースを販売している自動販売機を必死で探すということはあまりないと思います。

 最後に競争面を考慮した価格設定ですが、これは市場の相場価格を基準として価格を設定していくことです。市場にリーダー企業が存在する場合は、リーダー企業の価格に他の企業が従う形になり、ある程度一定の価格が保たれることになります。しかし、競争が激しい市場では、低価格路線を取る企業が現れると他社もそれに追随せざるを得なくなります。例えば外食チェーン店などでは、ある企業が値下げをすれば、追随して他の企業も値下げするということがよく見られるでしょう。

 それでは、この項の最後に新製品を市場に投入するときの価格設定方法を2つ紹介したいと思います。

  1. スキミングプライス:「上澄み吸収価格」とも呼ばれ、新製品の発売時に高い価格を設定する方法です。高めの価格を設定することで大幅な利益を確保し、いち早く新製品の開発コストを回収することを目的としています。スキミングプライスは、「価格にそれほどこだわりがない熱狂的な顧客が存在する」「競合他社が市場に参入してこない」といった条件下では有効な戦略といえます。

  2. ペネトレーションプライス:「市場浸透価格」とも呼ばれ、新製品の発売時に相対的に低い価格を設定する方法です。低価格により市場で高いシェアを獲得することを目的としています。販売数を増加させ、単位あたりの生産コストを下げることで収益化を図るのです。ペネトレーションプライスは、「大きな潜在市場が有りかつ市場が価格に敏感である」「大量生産により生産コストと流通コストを下げられる」といった条件下では有効な戦略といえます。

 スキミングプライスとペネトレーションプライスのどちらを選択するかは、自社の置かれた環境に左右されますので、自社、顧客、競合の3つの観点から検討し、早期の利益回収を目指すスキミングプライスを採用するのか、市場シェアの獲得を優先して長期的な収益化を目指すペネトレーションプライスを採用するのかを決定していくことになります。

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