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» 2013年02月22日 11時00分 UPDATE

ヒット商品を生むコンセプトマイニング&QFD(2):モノを買わせるには、「自己実現の欲求」を満たせ (1/3)

人はどんどんレベルの高い要求を満たしたくなる。その最上位は、「自己実現の欲求」。魅力ある商品の企画は、その欲求を満たすことへつなげることだ。そこでコンセプトマイニングが活躍する。

[桑原正浩/アイデア,MONOist]

 前回は、ヒット商品を生み出すためのマーケティングの考え方や影響因子などについて、少し大きな視点から書いてみました。いかがでしたでしょうか? 今回は、もう少し具体的な方法について解説します。

顧客は今、何を求めているのか?

 ものが売れなくなって久しいといわれます。それは、「欲しいものがなくなった」とか、「魅力ある商品がないから」、あるいは「景気が悪いから」だともいわれていますね。

 確かに「欲しいものがなくなった」という意見には一理あるように思います。人間が文明的な生活をしていく上で最低限必要なものは、既に皆さんお持ちのはずですね。だから、買い替え需要が主になります。買い替えるときには、当然、商品の品質や魅力を天びんに掛けて購入判断をするわけですが、ここの「魅力」というのがくせものです。

 前回記事の最後で、品質に対する「狩野モデル」を取り上げました。通常は「商品性能が向上すれば、顧客満足もそれにつれて向上する」のですが、取り上げる性能や特性によってはそうならないものがありました。逆に、諦めていたものなどは、顧客に大きな満足度(=感動!)を提供することになるというものでした。この「魅力品質」と呼ばれるものをどのように見つけるかが、これからのヒット商品企画のカギとなりそうです。

 今までにない新しい機能に対するニーズは、多くの場合、作り手が商品として提案することで、初めてユーザーに気付いてもらえます。そういう潜在ニーズは従来の「QFD(品質機能展開)」などからは浮彫りにすることが難しいです。

 そのようなニーズを先に発見して提供すれば、新たな市場カテゴリーを独占できます。確実かつ連続的なヒットを可能にするためには、単なる思い付きや偶然に頼らずに実現するための手段が必要です。そのために着目したのが「顧客経験価値」なのです。

顧客経験価値を探るために

 バーンド・H・シュミット著「経験価値マーケティング」では「経験価値」を以下のように定義しています。

  1. 過去に起こった経験を指すのではない。
  2. 経験価値は(例えば、購買の前や後のマーケティング活動によってもたらされる)ある刺激に反応して発生する個人的な出来事である。

 具体的には、図1の5つに分類することができます。

yk_shohin2_1.jpg 図1 戦略的経験価値モジュール

 つまり、「商品の差別化が必要であることは誰もが認識しているけれど、それを本当にできていますか?」ということなのです。顧客がその商品を買うか買わないかを決めるてんびんをイメージしてみてください。

yk_shohin2_2.jpg 図2 お客さまが買う買わないを決める天秤

 そうすると、ヒットに必要な要件は、いわゆる品質や性能として表される「物理的機能」と、持ち主の感覚的な要素であらわされる「情緒的機能」の両方を兼ね備えていることが必要になるといえそうです。

マズローの5段階要求

 話は変わりますが、マズローの5段階欲求」の理論をご存じでしょうか。

  • 第1段階が「生理的欲求」
  • 第2段階が「安全の欲求」
  • 第3段階が「社会的欲求」
  • 第4段階が「自我の欲求」
  • 第5段階が「自己実現の欲求」

 人間は、上記のそれぞれの段階の欲求が満たされると、さらに上位の欲求を求めるようになり、最後は自己実現の欲求にたどり着くというものです。

 ここでの最上位の欲求である「自己実現の欲求」こそ、これからのマーケティングでの魅力ある商品企画で重要なキーワードであり、その延長に顧客経験価値の創造、すなわち情緒的機能の実現があるのです。すなわち、ヒット商品とは自己実現への最良の手段といえます。

yk_shohin2_3.jpg 図3 マズローの5段階欲求
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