デジタルが進化させる、かわいい手芸の世界これもFabの形「ぬいぐるみCAD」(1/4 ページ)

今回は、意外な3次元データ活用事例の紹介。一見、デジタルとは無縁そうな手芸の分野でもCADが使われているってご存じでしたか?

» 2013年02月25日 12時00分 公開
[加藤まどみ,MONOist]

 近年コンピュータの性能向上や周辺機器の進化に従って、今までとは一味違った個人によるモノづくりが注目されつつある。代表的なのが、自分でデザインした形状をコンピュータに取り込み、3次元プリンタやレーザーカッターなどを使って制作するといった方法である。完全にオリジナルの製品を作れるとあって、既存のデザインに満足しない人に好評だ。

 一方、同じモノづくりでも、デジタルとの相性があまりよくないように見えるのが手芸分野かもしれない。例えばぬいぐるみにしてみても、布の伸び縮みや縫い方の加減によって形状が変わる「アバウトな」ものだからだ。

 そのぬいぐるみの型紙を簡単に作るソフトウェア、いわゆる「ぬいぐるみCAD」を開発したのが、筑波大学システム情報系情報工学域/日本学術振興会 特別研究員の五十嵐悠紀氏である。五十嵐氏の開発したソフトウェア「Plushie」を使うと、マウスで絵を描くだけで、立体的なぬいぐるみの型紙を作ることが可能だ。同氏はさらにビーズ作品やあみぐるみなどのプログラムも作成しているという。

完成図を確認しながら作図

 五十嵐氏が開発したプログラム(図1)のポイントは、まず操作が基本的にマウスで線を引いていくだけであること。また立体を書くのがそれほど得意でなくても立体のぬいぐるみを作図できること。そして線を引いたり修正したりしている最中に、リアルタイムでぬいぐるみの完成図を確認できることだ。

図1 ぬいぐるみCADの操作画面。図中央のウィンドウにマウスで線を描くと、立体の完成図が出来上がる。同時に右のウィンドウにパーツ図が生成される。左は、実際に作ったぬいぐるみ

 作業は図2、3のようになる。

図2 最近ちょっと気になる「クマムシさん」を書いてみた。(C)TARUDI
図3 まず楕円形を書く。次に足の位置、そして足自身を書けば出来上がりだ。足が小さいのでちょっと難易度が高いかもしれない。

 まずPCの左のウィンドウに線で基本形状を描くと、綿を詰めた形状がむくむくと出来上がっていく。右のウィンドウには展開された型紙が表示される。動物の足など突き出た形状を付け加えたい場合は、立体上に突起の生成位置を指示し、そこに突起形状を描く。さらに完成図をいろんな方向に向けたり、カットしたり、微調整したりすることも可能だ(図4)。カットや微調整は図の赤線にあるような単純な操作だけで実行できる。

図4 突起の生成やカット、変形といった機能が用意されている。

 立体上に線を引くと立体がカットされ、布の断面が生成される。また左と右どちらのウィンドウでも、線をクリックして引っ張ることで変形でき、微調整をしたり左右非対称の形状を作ったりすることができる。

 また縫い目を自由に入れたり消したりする機能も付いている(図5)。

図5 上はクマの鼻の上に縫い目を入れず、下では縫い目を入れた。出来上がりは下の方が立体的になる。制作時間や好みを考えながら自由にシミュレーションできる。

 縫い目を増やすと立体的になったり、出来上がりを自分の好みに変えたりといったことが可能だ。だがパーツが増えると制作が大変になってしまう。そこで時間とデザインの兼ね合いで検討できるよう、ぬいぐるみの制作目安時間が右ウィンドウ下に表示される。なお五十嵐氏は、元からある3次元のデータを取り込んで、同じように型紙を作るプログラムも作成している。

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