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» 2013年02月28日 07時00分 UPDATE

モノづくり最前線レポート(34):製造ITは品質改善に役立つのか (1/4)

グローバル展開が必然のものとなった日本のモノづくり企業。海外拠点との生産性の違いが課題として立ちはだかる。品質改善や不良品対応を「匠の技」として祭り上げていないだろうか。これではグローバル展開は難しい。ITによる適切な道具立てとそれを支えるマインドセット、さらにマネジメントの変革が解決には必要だと専門家は説く。

[水野操 ニコラデザイン・アンド・テクノロジー/3D-GAN,MONOist]

 「生産革新70年の知恵を世界へ〜ものづくり日本の新たなるチャレンジ〜」をテーマとした「2013生産新総合大会」が2013年2月20〜22日に開催された。本レポートでは、ワイ・ディ・シー 製造ソリューション本部の善入正志氏が講演した「ITを駆使した、グローバル競争に打ち勝つものづくり」の内容を基に、生産性向上のための効果的なIT化のヒントを探る。

急激なビジネスの展開に追い付かない生産現場の改革

 海外に生産拠点を展開することが、現代の日本のモノづくりにとって普通のことになってきた。それに伴い、現地の生産性向上や技術者の育成、現地ニーズの把握や各種規制への対応が課題となっている。しかし、ビジネス展開のスピードが速く、これらの課題へ十分に対処できていないというのが現実だ。

 なぜ対応できないのか。原因として考えられるのは、従来の日本国内での製造スキームから脱却できていないこと、なのではないだろうか。日本国内では従業員のバックグラウンドが比較的そろっているため、あうんの呼吸、いわば非言語型のコミュニケーションが通じてしまう。当然、そのまま海外に持っていっても通用しない。常識や考え方が日本人とは違うため、指示や情報を相手にとって明確な形にしないと伝わらないのだ。

 ここで振り返りたいのが、自社の生産現場が今も一部のベテランの「技」に頼っていないか、ということだ。別の言い方をすれば「ナレッジが共有できているか?」「業務が定型化されているか?」ということになる。これらの技が「形式知化」していないと海外展開は難しい。

 形式知化を進めようとして現場の実態を調べてみると、確かにデータ化はされている、しかし分析することが難しい。そのため、何か生産上の問題があってもなかなか改善することが難しく、結果的に現場が次第に疲弊していくという状態になっていないだろうか。

“整理された情報”の可視化を進める

 「情報が見えない・伝わらない」、だから「適切な判断ができない」、結果的に「迅速なアクションができない」というよくない連鎖が起こっている。これらの課題解決の第一歩として、善入氏は現在の状況を「可視化」することを勧める。一口に可視化ができていないと言っても「悪い情報が見えていない」「組織として見えていない」「タイムリーに見えていない」「正確に見えていない」などさまざまな状況がある。

 可視化できていないために8つのムダが発生するという。8つのムダとは「加工」「在庫」「作り過ぎ」「手待ち」「動作」「運搬」「不良を造る」という7つのムダに加えて「何もしない」というムダだ。

yh20130228YDC_XY_1000px.png 図1 現場のあるべき姿 出典:ワイ・ディ・シー

 善入氏は現場のあるべき姿を図1のように「より高度に」という情報レベルの向上の横軸と「より早い段階で」というアクションレベルの向上の縦軸で整理して見せた。

 「現状レベル」を「ありたいレベル」に変えるには2つの方法がある。1つは道具立てである。ITツールを使うことによって状況を可視化することだ。ただし、可視化だけでは中央の点線の枠内までしか改善できない。そこで必要なのがマインドセットとマネジメントの変革だ。現場と経営がセットになって初めて「ありたいレベル」に達するという主張だ。

 道具立てができていない場合はもちろん、マインドセットやマネジメントが整っていないと、大量の書類作成を続けなければならず、現場が多忙になってしまう。そして、必要な監視ができないために異常に気付くことができず問題が発生する。問題に当たる現場が疲弊するだけでなく、最終的には管理項目がさらに増えてペーパーワークが増え続けるという悪循環に陥る。

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