ニュース
» 2013年03月12日 16時20分 UPDATE

車載半導体:アクティブセルバランスで電池パックの実効容量を増やす、リニアが専用ICを発売

リニアテクノロジーは、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)などに搭載されている大容量リチウムイオン電池パックの実効容量や寿命を改善するアクティブ方式のセルバランス機能を集積したIC「LTC3300-1」を発表した。

[朴尚洙,MONOist]
アクティブ方式のセルバランス機能を集積した「LTC3300-1」

 リニアテクノロジーは2013年3月、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)などに搭載されている大容量リチウムイオン電池パックの実効容量や寿命を改善するアクティブ方式のセルバランス機能を集積したIC「LTC3300-1」を発表した。1000個購入時の参考単価は5.95米ドル。


リニアテクノロジーの「LTC3300-1」 リニアテクノロジーの「LTC3300-1」

 LTC3300-1は、EVやHEVの電池パックを構成する電池セルの間で容量にばらつきが存在する場合、電池セルの充電状態を均衡(セルバランス)させるために、隣接する電池セルと電池セルの間で電流をやりとりするアクティブ方式のセルバランス機能を備えている。これによって、各電池セルの充電状態を常に均衡した状態に保てるようになる。

 一方、これまで利用されていたのがパッシブ方式のセルバランスである。パッシブ方式では、容量が小さい電池セルが満充電になった後も、容量の大きい残りの電池セルが満充電になるまで充電を続けられるように、容量の小さい電池セルへの充電電流を抵抗器を介して熱として捨てる。また、電池パックから負荷回路に電力を供給する放電時には、先に放電を終える容量の小さい電池セルが過放電にならないように、容量の大きい電池セルに電力がまだ残っている状態で放電を停止するように制御している。つまり、パッシブ方式では、電池パックの充電効率や実効的な容量は、容量の小さい電池セルが基準になって決まってしまう。

 アクティブ方式のセルバランスは、パッシブ方式で熱として捨てていた容量の小さい電池セルへの充電電流を、満充電に達していない残りの電池セルの充電に使うことができる。放電時も、容量が小さい電池セルに他の電池セルから電力を移せるので、電池パック全体で見たときにある程度の電力が電池セルに残ったままになってしまうパッシブ方式とは異なり、電力を最後まで使い切ることが可能だ。つまり、パッシブ方式の替わりにアクティブ方式を採用すれば、電池パックの実効的な容量を高められるというわけだ。

 ただし、パッシブ方式のセルバランスは、リニアテクノロジーをはじめ各社が販売している大容量二次電池の電圧を監視するバッテリーモニターICの1機能として内蔵されているため、実装が容易である。アクティブ方式のセルバランスは、LTC3300-1のような専用IC以外にも、外付け部品としてコンデンサやトランスが必要になるなど実装が難しいこともあり、量産採用は進んでいなかった。

二巻線トランスなどを使ったフライバックを使用

 リニアテクノロジーは、バッテリーモニターICの第3世代品「LTC6804」を2012年10月に発表した際、アクティブ方式のセルバランスを実現するICを2013年中に市場投入するとしていた(関連記事)。今回発表したLTC3300-1は、その第1弾製品となる。

 LTC3300-1は、1個のICで直列接続した最大6個のリチウムイオン電池(出力電圧が低い、正極にリン酸鉄リチウムを用いたものも含む)のセルバランスに対応する。セルバランスのために行う電流のやりとりは、LTC3300-1に接続しているリチウムイオン電池の間でだけでなく、他のLTC3300-1に接続しているリチウムイオン電池とも行える。電流をやりとりする際の電荷転送効率は、最大で92%となっている。

「LTC3300-1」の周辺回路 「LTC3300-1」の周辺回路。二巻線トランスやFETなどの外付け部品を使用する。(クリックで拡大) 出典:リニアテクノロジー

 セルバランスに用いる電流の入出力回路は、二巻線トランスやFETなどの外付け部品を使った双方向同期方式のフライバックトポロジーで実現している。LTC3300-1は、この回路の誤動作保護機能付きの制御ICとして動作する。セルバランスに用いる電流の入出力値は、外付け部品を使えば最大で10Aまで設定可能だ。

 独自のレベルシフトSPI(Serial Peripheral Interface)互換のインタフェースを使えば、絶縁素子を用いずに複数のLTC3300-1を接続した上で、各LTC3300-1につなげた電池セルにアクティブ方式のセルバランスを適用できる。例えば、多数の電池セルを直列接続して出力電圧が1000V以上に達するような場合でも、アクティブ方式のセルバランスによる充電状態の最適化が可能になるという。

 LTC3300-1のパッケージは48端子のQFNもしくはLQFPで、外形寸法はいずれも7×7×0.75mm。動作温度範囲は−40〜125℃となっている。

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.