第21回 装置の電源前田真一の最新実装技術あれこれ塾(1/3 ページ)

実装分野の最新技術を分かりやすく紹介する前田真一氏の連載「最新実装技術あれこれ塾」。第21回は、消費電力へのさまざまな要求が高まる中で注目されてきた「装置の電源」について解説する。

» 2013年04月03日 08時00分 公開
[前田真一MONOist]
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本連載は「エレクトロニクス実装技術」2012年12月号の記事を転載しています。



1. 電源への注目

 電子機器にとって一番大事なものは電源です。よくいわれるように「コンピュータ(電子機器なら何でも)、電気なければただの箱」。電子機器は、電源を供給してくれなければ、何の仕事もしません。特に最近は携帯電子機器の普及により、バッテリーの持続時間が機器の大きな性能指針になっています。

 携帯電子機器はできるだけ、(小さく、)薄く、軽くすることを望まれています。最近は液晶画面の大きさにより、液晶画面をもった携帯機器の小型化の要求は減ってきましたが、その分、『薄く・軽く』の要求は増えています。

 それに対し、機器の高機能化、メモリの容量増加への要求は大きく、LSIの高速化、メモリの大容量化による消費電力の増加要求があります。これに対し、回路設計やLSIの電源電圧の低下による省力設計が進んでいます。

 このように、電源問題は大きく注目されるようになってきました。

2. 電源装置の位置

 信号が遅く、ICの消費電力がそれほど大きくない装置では、多くの場合、電源装置は筐体内で基板から少し離れた位置に配置されます(図1)。これは、電源装置はその効率により、無駄な電力を熱として排出するからです。また、電源装置は大パワーを扱い、周波数は低いものの、電界や磁界を周囲に及ぼします。加えて、1次側は通常100Vの交流商用電源に接続されるため、安全性での規格や制約があったり、2次側の低圧直流電源回路への影響が大きかったりするからです。このため、電磁界的ノイズや熱の影響を基板から隔離するために基板から離して配置する方が良いとされています。

 装置が小型化してきたり、信号の速度が速くなってきたりすると電源は基板となります。基板電源は、装置内に他の基板と同様に収納されます。

図1 図1 ワークステーションの電源装置

 さらに装置が小型化されると、電源はモジュールとして、小型基板を大型基板の上に実装したり、大型基板の一部の回路として実装されたりします(図2)。装置に100Vの高電圧をコンセントから引き込んだ場合、安全規格やノイズ対策などの対応が要求されます。

図2 図2 電源基板

 このため、ノートPCや周辺装置など、消費電力が比較的小さい装置では、電源回路を機外に出し外付け電源装置を使い、機内にはそれほど電圧の高くない直流電源を使用します(図3)。

 このような外部電源をもつ装置や、携帯電子機器のような電池駆動装置では低電圧の直流が100ボルトの交流に代わって電源として使われています。

 直流電圧は基板上でのLSIごとに小さな直流電圧変換回路で必要な電圧に変換されて供給されています。

図3 図3 外部直流電源
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