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» 2013年04月30日 10時15分 UPDATE

知っておきたいASEAN事情(13):チャイナプラスワン戦略におけるインドネシアとマレーシアの「チャンスとリスク」 (1/2)

同じ民族ルーツを持つ国、インドネシアとマレーシア。両国間には宗教や言語など多くの共通事項があるが、人口規模や時価総額上位企業など異なる点も見られる。チャイナプラスワン戦略における両国の「チャンスとリスク」とは?

[栗田 巧/DATA COLLECTION SYSTEMS,MONOist]

知っておきたいASEAN事情

連載全体の目次

第12回:チャイナプラスワン戦略におけるタイ、変化の兆しが

第11回:ベトナムは「チャイナプラスワン戦略」の選択肢なのか

第10回:繊維産業の進出が進む親日国ミャンマー、国内消費の動向は?



 ASEAN加盟国の中に、同じ民族ルーツを持つ国があります。インドネシアとマレーシアです。意外に知られていないのですが、インドネシア人のルーツはマレー人です。紀元前に大陸部から南下したマレー人が、現在のインドネシア人の祖先です。つまり、インドネシア人というのはあくまでもインドネシア国籍を意味し、民族としてはマレー人ということになります。

インドネシア マレーシア
人種構成 マレー系 75%
中国系 5%
その他 20%
マレー系 65%
中国系 25%
インド系 7%
その他 3%
宗教 イスラム教 イスラム教
言語 インドネシア語
(Bahasa Indonesia)
マレーシア語
(Bahasa Malaysia)
人口 約2億4200万人 約2900万人
1人当たりの実質GDP(2012) 3,660USドル 10,578USドル
実質GDP成長率(2012) 6.04% 4.4%

 民族ルーツ以外でも、両国間には多くの共通事項があります。最も需要な項目は宗教でしょうか。共にイスラム教を国教と定めています。両国共に穏健派が主流であり、アルカイダに代表されるようなイスラム原理主義とは異なります。一日数回、モスクから流れてくるコーラン、年に1回のラマダン(断食月)以外には、日常生活の中でイスラム教国であることを強く意識することはありません。特に、ジャカルタ、クアラルンプールと言った都市部には、中国系住民が多いのも、イスラム色を薄めているのかもしれません。

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 インドネシア語・マレーシア語と言っていますが、実はほぼ同じ言語です。若干言い回しが違う部分もありますが、コミュニケーションには全く支障がないレベルです。マレーシアには多くのインドネシア人が出稼ぎに来ています。女性であれば、メイドさんやベビーシッター、男性であれば、工場、建築現場などで多くのインドネシア人が働いています。面白いところでは、公共バスの運転手も大半がインドネシア人です。当人同士は分かるのかもしれませんが、言葉が同じという事もあり、日本人から見ると、インドネシア人とマレーシア人の区別は全くつきません。

 では、次に両国の相違点を見ていきましょう。最も顕著なのは人口です。同じ民族ルーツであるにもかかわらず、人口は大きく異なります。東南アジアで第1位、世界でも第4位のインドネシアに対し、マレーシアは東南アジア10カ国の中で6番目です。マレーシアより人口の少ない国は、カンボジア、ラオス、シンガポール、ブルネイの4カ国です。工業化を進め先進国入りを目指すマレーシアにとって一番の弱点は人口かもしれません。

 海外生産拠点の主な役割が、加工貿易用生産拠点から、地域市場向けの生産拠点へ移行した現在、外国企業が投資国点を検討する際は、必ず国内市場規模が重要視されます。インドネシアの1人当たりの実質GDPではマレーシアの1/3ほどですが、実質GDPでは逆に3倍近い規模があります。現時点での市場成熟度、購買力では、まだマレーシアが優位ですが、見方を変えれば、インドネシア市場の成長ポテンシャルは素晴らしいものがあると言えます。この成長ポテンシャルが、この数年のインドネシア投資が急増している背景にあるのは間違いありません。

 では、次に時価総額上位企業※1から両国の違いを見ていきましょう。

 両国で上位ランクされている共通の業種は銀行、通信です。ここら辺は、この2カ国に限らず、アジアにおいて一般的な傾向といえます。

 では、次に相違点を見ていきましょう。まずはインドネシアです。自動車と二輪車の製造・販売を手掛けるアストラ・インターナショナルが第1位であるのは、ここ数年の自動車・二輪車市場の急成長を背景にしています。しかし、最もインドネシアらしいと感じるのは、第2位のHMサンプルナ、第9位のグダンガラムと、タバコ会社が2社もランクインしていることです。前者は米フィリップモリスの関連会社、後者は「インドネシアタバコ」と言われる丁子(グローブ)をブレンドしたタバコのメーカーです。グダンガラムは、ちょっと甘い吸い口とグローブが燃える際のパチパチで有名なタバコです。しかし、この禁煙の時代に、タバコメーカー時価総額が高い国も珍しいといえます。ちなみに、WHO(世界保健機構)によれば、インドネシアの喫煙率は堂々の世界第1位(2012年度)です。この数年で、ロシアを抜いて世界第1位になったようです。

 マレーシアで面白いのは、携帯電話通信会社が第5位(アクシアタ・グループ)、第7位(マキシス)、第8位(ディジ・ドットコム)と3社もランクインしている点です。人口2900万人弱の国で携帯電話会社が3社というのは、ちょっと不思議な感じがします。何といっても3社という数は、日本市場とほぼ同じです。この背景には、マレーシアの携帯電話の普及率が100%を超えていること(1人1台以上保有)、また、この3社は携帯電話事業だけでなく、インタネットサービスプロバイダー事業、衛星放送事業(マキシス)など、複数の成長分野で事業展開を行っていることも時価総額に貢献していると言えます。

※1 出典:日本経済新聞

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