PS2にも使われていた! アルマイトと接地(GND)を理解しよう甚さんの「バンバン板金設計でキャリアアップ」(11)(2/4 ページ)

» 2013年04月30日 11時40分 公開
[國井良昌/國井技術士設計事務所(Active Design Office),MONOist]

「電気と工学は無理!」(某CAE技術者Rの発言)

エリカ

それでは甚さん! 表1の下方に、アルマイトの特徴が記述されていますけど、「電気的特性(絶縁皮膜の形成)」とあります。これは、どういう意味でしょうか?


良

げっ、電気! 僕は主席の院卒だけど、電気関係はメッチャ苦手です。ちなみに僕のCAE仲間も皆苦手です。実は、電気系、光学系、騒音・音響系のCAEは逃げまくっています……。


甚

チッ! しょうがねぇ連中だぁ。しかし、そんでいい。良君が、それらのCAE技術者を「反面教師」として捉えているならな! どんな職業でも、ワガママな奴がいるってもんよ! そんなヤツは、業務指名から外せ〜!


 筆者のクライアントには、大中小の規模に関わらずさまざまな企業があります。とある中小企業の設計現場ではCAEが盛んです。そのCAEを担当する全員が、工学系の学校を出ていない女性技術者です。しかも彼女たちの前身は、消費者金融の社員。キーボードのタッチタイピングもお手のものです。

 そして、「CAE専任者」という職種は、その企業にはありませんでした。常々、甚さんが言ってきたように、CAEの仕事だけでは給与は支払えないからです。

 中小企業の技術者は、QCDPaのアウトプットがあり、その対価として給与が支払われます。隣国の大企業も全く同じです。しかも、QCDPaは掛け算です。ゼロが1つあれば、合計はゼロなのです。

QCDPa:「Q( Quality:品質)」「C(Cost)コスト」「D(Delivery:期日)」「Pa(Patent:特許)」

 次に、筆者がある日本の大企業の会議に呼ばれたときの本当の話です。会議のテーマは、「CAEのさらなる推進」でした。そこにいたCAE専任者は、機械系の応力解析、振動解析、熱解析がテーマのときは、大口をたたきつつ「推進を支援する」旨を発言していました。ところが、会議が、電気・電子系や光学系の話題に移行すると、とたんに無口に。それどころか攻撃に変わってしまったのです。出席者一同、「あ然!」です。

甚

いくら電気・電子系や光学系が苦手だからっていったってよう、そりゃねぇよ。トウがたった男はこれだからなぁ……。オイラも日頃言っているじゃねぇかい! 今や、CAE担当者は、女性が適任だと。男女のことはともかく、「『(自分が)やってやる』という態度のCAE担当者は外せ!」とな。


エリカ

甚さん! それはちょっと極端な発言だと思いますよ! でも、誰かさんも以前は、ひどかったわ〜。「オレがやってやる」という態度で。いつ見ても席にいましたし、偉そうにふんぞり返っていましたね。


良

げっ、エリカちゃんに見られてたのか……。でも、甚さんに初めて会ったときすごく怒られたんだ。(親父にもぶたれたことないのに)殴られたし。でも今は、仕事を待っているのではなく、ちゃんと仕事を取りにいっています!


エリカ

それは、もう皆が認めてますよ! CAE技術者の国木田さんを尊敬しはじめてますよ。


良

でへへぇ〜。


アルマイトの比電気抵抗値と接地

甚

と、良君を持ち上げたところでだな、次は、表2を見ろ。比電気抵抗とは、どんなもんか分からなくても、銅やアルミなどの金属の比電気抵抗値が記載してあり、その値とアルマイトの比電気抵抗値を比較すれば……。


表2 各種表面処理に関する比電気抵抗(「ついてきなぁ!加工部品設計の「儲かる見積り力」大作戦」日刊工業新聞社刊)
良

なるほど! アルマイトは、絶縁状態ですね。


甚

電気回路の収納ケース(箱)で、板金(鋼材)製のケースに接地する場合は、もちろんOKだがよぉ、放熱を求めてアルミ製のケースに接地しても無駄だ。そのアルミにはアルマイトが施してあるかもな?


良

甚さん、……「接地」ってなんですか?


エリカ

ええっ!? 大学を6年も通っていて、接地も知らないとか……!(サイテー!)


甚

エリカちゃん、それは禁句だと前回も言っただろう。自分が専門学校卒業だからといって、自慢しちゃいけねぇってもんよ。


エリカ

はっ! 私としたことが……。すみません、国木田さん。院卒だと自分を卑下しないで、これからも頑張ってください! CAE業務のように、皆があなたの努力を認めてくれる日がきっときます!


良

……。


 かつて、筆者が若手技術者だったころ、機械系の技術者は「EMC」や「EMI」と呼ばれる電磁ノイズ(または、電波ノイズ)まで、あまり考える必要がありませんでした。その後、コンピュータのCPUのクロック周波数は上がっていき、日常生活の中に電子機器がどんどん増えました。昨今の機械設計では、妨害電波を出したり受けたりして機器が誤動作をする恐れまで考慮しなければなりません。

 その一対策手段として、電気・電子回路を収納するケース(箱)、つまり「シールドケース」があります。妨害電波を「シールド」します。そのためには、このシールドケース自体を「接地」します。接地することで、誤動作を生じる余分な電波を地面に流す役を成しています。

 「接地」とは、「地面に接する」ことです。家電品の電子レンジや洗濯機、食洗機、冷蔵庫などには、AC100V用の2本の電線だけでなく、もう1本、緑色の線があります。この線が、漏電による人体への感電防止のために接地しています。接地することで、漏電という余分な電流を地面に流す役を成しているのです。

良

なぁ〜んだ、その接地か? いつも英語で言っていたから困惑してしまいましたよ。僕らは「グランド(Ground)」と呼んでいます。また、「GND」と記述していましたよ。


甚

べらんめぇ! オメェ、日本人だろがっ! まずは、日本語から覚えろってんだっ!


エリカ

接地のことなら私も説明できますよ。


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