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» 2013年04月30日 18時20分 UPDATE

目指せT字型人材! 中小企業エンジニアのスキルアップ(5):これだけは知っておきたい! 「財務会計の勘所」 (1/3)

「仕事は忙しいのに、年収が上がらない」と思うのは、財務会計の知識が足りないせいかも? 今回は、「貸借対照表」「損益計算書」「株主資本等変動計算書」など、決算書の見方を覚えよう。

[平阪靖規/MPA所属 中小企業診断士,MONOist]

 「今の経営状況を説明してください」と聞かれた場合、皆さまはどのように答えるでしょうか。現場の肌感覚で答えたり、「仕事量が多い・少ない」で答えたり、人それぞれ、さまざまです。1つの答え方として「数字」で答えるという方法があります。

 この「数字」とは、ここでは「財務会計」を指しています。財務会計とは、貸借対照表や損益計算書などに表される数字のこと。貸借対照表や損益精算書という言葉を聞くと、苦手意識を持たれる方がいるかもしれません。本記事では分かりやすく、“現場で使える”生きた財務会計について解説していきます。

 財務会計の基礎を知ることで、「数字で語れるエンジニア」を目指しましょう!

yk_tjin5_01.jpg 会計の基本を学ぶと?

なぜ、財務会計を学ぶ必要があるのか。

 「売り上げが上がっているのに利益が出ていない」「仕事は忙しいのに、年収が上がらない」。このような感覚を持たれた経験はないでしょうか。このような事態に陥る理由は、実はそれほど複雑なことではありません。会社の経営を「財務会計」の視点で見ることができていないためです。

 財務会計とは、冒頭で説明した通り、会社の経営成績や財務状況を「数字」で表したものです。財務会計を理解できていないということは、「今月の売り上げはどれくらいか?」「今月はどれくらいの支払いが必要なのか」「来月はどれくらいの売り上げが見込めるのか」といったことが、正確に把握できないということです。従って、先に書いたように、フタを開けてみたら「売り上げが上がっているのに、利益が出ていない」などの状況が発生するわけです。

 ですから、財務会計を理解し経営を数字で正しく把握する力は、エンジニアも必ず身に付けておかなければなりません。自身の部署や課といった範囲で数字を把握できれば、先々を見越した効率のよい仕事ができるようになります。「数字が苦手」という方も、基礎的な知識だけでもよいので知っておいてください。

 それでは早速、具体的な財務会計の勘所について解説していきます。

財務会計の流れを知る。

 ここから財務会計の処理について解説します。便宜上、この処理のことを、以降は「会計処理」と記述します。会計処理では、日々行った取引を仕訳して記帳していきます。

 例えば、1個100円の材料を1000個仕入れた場合は、以下のような仕訳を行います。簡単に言うと、PCやノートに、以下のように取引の状況を残しておくことだとイメージしてください。

yk_tjin5_02.jpg

 これは、「10万円分の仕入れを現金で支払った」という意味です。

 続いて、1個300円の製品を100個売った場合は、以下のような仕訳を行います。

yk_tjin5_03.jpg

 これは、「3万円分の売り上げを現金で受け取った」という意味です。このように、企業では日々さまざまな取引が発生しています。その1つ1つの取引について、上記のような仕訳を残していくことが会計処理の基本となります。

 ここでは仕訳について説明しましたが、エンジニアの皆さまがこの仕訳を1個1個やるということはないので、深く理解する必要はありません。こうした仕訳は、経理担当の方がやってくれます(場合によっては、小さな企業でエンジニアの方自身が経理も兼務されているところがあるかもしれません)。

 ここでご理解いただきたいことは、このような日々の仕訳を集計した結果が、決算書としてまとまって出てくるのだという部分です。

 決算書ができるまでの流れは以下のようになります。

yk_tjin5_04.jpg 日々の仕訳から決算書の作成まで

 決算書には、会社の期末時点の財政状態を表す「貸借対照表」と、会社の経営成績を示す「損益計算書」、純資産の変動額を表す「株主資本等変動計算書」の3つがあります。この決算書を経営に生かしていくことが、会社の動きを「数字」で見るためにはとても重要です。

 この決算書は通常年1回しか作成しませんが、毎月や四半期ごとに作成することで自社の経営状況がタイムリーに把握できるようになります。部門別に作成すれば、部門ごとの経営状況が把握できるようになります。

 多少の手間は掛かることになりますが、数字を経営に生かしている企業と、目先の経営しかやっていない企業では、最終的な企業の成績が大きく異なります。ぜひ数字を経営に生かせる企業を目指していただきたいと思います。具体的にどのようにすればよいのかというところは、後述します。

貸借対照表を知る

 ここからは、個別の決算書の見方について説明致します。決算書を見るスキルは、T型人材には欠かせないスキルです。まずは基本的なところを見ていきましょう。

 貸借対照表とは、バランスシート(B/S)とも呼ばれ、企業のある時点の財政状態を示すものです。具体的には、「会社の資金の調達状況」と、「その調達した資金を何に使ったのか」を表したものです。

yk_tjin5_05.jpg 貸借対照表

 上図のように、貸借対照表では、右側(負債の部・純資産の部)に会社の資金調達状況をまとめ、左側(資産の部)にその調達した資金の用途をまとめています。必ず、左側と右側の合計が一致(バランス)するため、「バランスシート」とも呼ばれています。

 貸借対照表を見ることで、その企業の財務状態が健全かどうかを把握できます。見るべきポイントは、資産の部と負債の部のバランスです。負債とは、銀行からの借り入れなど、「他人から借りて調達した資金」のことです。従って、負債は必ず返さなくてはなりません。また、お金を借りれば利息の支払いが発生するように、たくさん借り入れていた場合、その利息の支払いだけも大きな額となります。従って、資産に占める負債の割合が大きい場合、経営状態が危険な領域にある可能性が高いです。自社の負債がどれくらいの割合を占めているのか、ぜひチェックしてみてください。

 また、負債の金額が資産の金額を上回ってしまうことを「債務超過」といい、この状態になると対外的な信用が著しく低下してしまいます。場合によっては、倒産へとつながります。資産の部と負債の部のバランスを特に気を付けてチェックしてください。

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