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» 2013年05月10日 20時16分 UPDATE

車載ソフトウェア:制御系システムのマルチコア化に対応、TOPPERSがAUTOSAR準拠の車載RTOSを公開へ

制御系車載システムへのマルチコアプロセッサ導入に向けた開発が加速している。この動きを受けて、欧州の車載ソフトウェア標準規格であるAUTOSARに準拠したリアルタイムOS(RTOS)「TOPPERS/ATK2」のマルチコアプロセッサ対応版が、2013年6月からTOPPERSプロジェクトを通じて一般公開される。

[馬本隆綱,MONOist]
NCESのセンター長を務める高田広章氏

 名古屋大学大学院情報科学研究科附属組込みシステム研究センター(NCES)は2013年5月8日、東京都内で会見を開き、制御系車載システム向けのリアルタイムOS(RTOS)「TOPPERS/ATK2(Automotive Kernel Version2)」(以下、ATK2)のマルチコアプロセッサ対応版を、同年6月からTOPPERSプロジェクトを通じて一般公開すると発表した。

 ATK2の開発は、NCESを中心に、トヨタ自動車やデンソー、豊田自動織機、ルネサス エレクトロニクスなど11の企業が参加する「次世代車載システム向けRTOSの仕様検討および開発」を目的としたコンソーシアム型共同研究(ATK2コンソーシアム)の下で、2011〜2013年度の3カ年計画で進められている。

 既に、欧州の制御系車載ソフトウェアの標準規格であるAUTOSARリリース4.0.3の仕様を基に、同仕様の中で整合性のとれていない点の修正やあいまいな点の明確化を行ったシングルコアプロセッサ対応版のATK2を、2013年1月からオープンソースソフトウェアとして配布している。このATK2は、AUTOSARのスケーラビリティクラス(SC)のうち、基本機能に当たる「SC1」をフルセットと、メモリ保護に関する拡張を規定している「SC3」のサブセットに相当する機能を備えている。

tm_130510toppers02.jpg NCESのセンター長を務める高田広章氏

 NCESのセンター長を務める高田広章氏は、「複数の自動車部品メーカーがシングルコアプロセッサ対応版ATK2の採用を検討している。数年後には、ATK2を実装した車載システムを搭載する自動車が市販されるようになるだろう」と語る。

 2013年6月から配布することになったATK2のマルチコアプロセッサ対応版は、シングルコアプロセッサ版におけるSC1およびSC3に関連する機能をマルチコアプロセッサ動作に対応できるよう拡張した「SC1-MC」および「SC3-MC」を搭載している。

 現在、ATK2マルチコアプロセッサ版に対応するプロセッサコアは、AlteraのFPGA上で動作するソフトプロセッサコア「Nios II」のみだが、他のプロセッサコアでも利用できるように対応を進めていく計画である。高田氏は、「制御系車載システムにマルチコアプロセッサが用いられる時期はもう少し先になると予想していたが、ここに来て自動車業界の対応が活発化し始めた」と語るとともに、マルチコアプロセッサ対応版ATK2への期待も高まっていることを示唆した。

 ATK2コンソーシアムでは、RTOS仕様の策定とそれに基づくATK2の開発に加えて、ATK2向け検証スイートの開発、要求タグを付与することで仕様のトレーサビリティを確保できる設計書の作成、AUTOSAR仕様をベースとした通信ミドルウェアおよびRTE(Run-Time Environment)ジェネレータの開発なども行っている。

 特に、AUTOSARの仕様に準拠したRTOSのテストスイートであるAKTSP(Automotive Kernel Test Suite Package)は、ATK2以外のOSでも利用できるように、テストパターンに仕様の要求タグをつけて、実施するテストを選択できるようにした。独自のツールを用いることでテストシナリオからテストプログラムを自動生成することもできる。

tm_130510toppers03.jpg AKTSPによるテスト件数(クリックで拡大)

 なお、ATK2向け検証スイートと設計書に関しては、ATKコンソーシアムのメンバーは自由に利用できるが、メンバー以外の利用は有償でライセンス提供することになる。また、現在開発中であるATK2の機能拡張と通信ミドルウェア、RTEジェネレータについては、2013年度中にもオープンソースソフトウェアとして配布する計画である。

エレクトロビットのAUTOSARプラットフォームとATK2を統合

 NCESは、ElektrobitのAUTOSARに準拠する基盤ソフトウェア(BSW:Basic Software)の開発プラットフォーム「EB tresos AutoCore」とATK2を統合運用できることも併せて発表した。RTOSにATK2を用いてAUTOSARに準拠した車載ソフトウェアを開発する際には、OS以外のBSWモジュールについて、EB tresos AutoCoreでサポートしているものを活用できる。

 EB tresos AutoCoreのBSWモジュールは、AUTOSARのリリース4.0および3.2の両方に対応している。なお、EB tresos AutoCoreとの統合運用に向けた開発と動作確認には、ルネサスエレクトロニクスのプロセッサ「V850E2」を用いた。

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