ホンダのF1復帰はハイブリッド化する新型「NSX」投入の布石か時期はどちらも2015年(1/2 ページ)

2015年からF1に復帰するホンダ。同社がかつての「マクラーレン・ホンダ」時代に発売したスポーツカー「NSX」も、ハイブリッドシステムを搭載した新モデルとして復活し、2015年から量産される予定だ。

» 2013年05月21日 07時00分 公開
[朴尚洙,MONOist]
ホンダのF1復帰はハイブリッド化する新型「NSX」投入の布石か

 ホンダは2013年5月16日、FIA(国際自動車連盟)が主催するフォーミュラ・ワン世界選手権レース(以下、F1)に2015年から復帰すると発表した。英国チームのMcLaren(マクラーレン)向けに、エンジンとエネルギー回生システムを開発、製造、供給するパワーユニットサプライヤとして参戦する。1988〜1991年にかけて、ドライバーとコンストラクターのダブルタイトルを4年連続で獲得した「マクラーレン・ホンダ」の復活である。

ダウンサイジング過給とERS

会見にのぞむホンダ社長の伊東孝紳氏(右)とMcLaren Group でCEOを務めるマーティン・ウィットマーシュ氏 会見にのぞむホンダ社長の伊東孝紳氏(右)とMcLaren GroupでCEOを務めるマーティン・ウィットマーシュ氏 出典:ホンダ

 ホンダによれば、今回のF1復帰は、2014年からのルール変更が背景にあるという。現在行われている2013年シーズンのエンジンが、排気量2.4l(リットル)の自然吸気型V型8気筒であるのに対して、2014年からは排気量1.6lのターボチャージャ付きV型6気筒に変更される。さらに、2009年から導入されている運動エネルギー回生システム(KERS)は、減速エネルギーの他に熱エネルギーも回生することから、エネルギー回生システム(ERS)という名称になる。KERSの場合、出力容量は60kWhで使用可能時間は6.6秒だったが、ERSになると出力容量が120kWhに倍増し、使用可能時間も8.4秒に増える。

 ターボチャージャの搭載によってエンジン排気量を低減し、燃費を向上する手法は、ダウンサイジング過給と呼ばれている。欧米の自動車メーカーは、このダウンサイジング過給の技術開発では、日本の自動車メーカーよりも先行していると言われている。

 ホンダは、軽自動車「N-ONE」のスポーツモデル「N-ONE Tourer」にターボチャージャを用いたダウンサイジング過給を適用。エンジン排気量が0.66lの軽自動車で、排気量1.3lクラスの小型車以上の走りを実現することに成功している(関連記事:ダウンサイジング過給の「N-ONE Tourer」、競合の軽ターボを上回るトルク性能)。F1活動によってダウンサイジング過給の技術開発が進めば、軽自動車以外にも適用範囲を広げられるようになる可能性が高い。

 一方、ERSは、減速エネルギーや熱エネルギーを電力に変換して蓄積し、先行車両を追い抜く際にはその電力で動かすモーターによってエンジン以外のプラスアルファの出力を得るシステムである。減速エネルギーを電力に変換したり、モーターで走行のための動力を得たりするハイブリッドシステムとの関係性は極めて深く、トヨタ自動車とともにハイブリッド車市場をけん引するホンダが得意とする技術分野だ。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.