データから正しく情報を取り出す方法を知っていますか?タグチメソッドのデータを解析しよう(2)(2/5 ページ)

» 2013年05月31日 09時00分 公開

変動という塊で考える

 さて、数式2-1をもっと単純に表現してみましょう。データの2乗をデータ数で割ったものを「変動」という言葉で表現してみます。

 例えば、数式2-1第1項(a +b )2/2 は、「aとbの和の変動」というように表現します。

 変動という言葉は少々分かりにくいですが、情報を持っている塊(ユニット)だと考えてください。ですから1個のデータの2乗であるa2 でも、分母にデータ数の1があると考えると「aの変動」と言うことができます。b2も同様に「bの変動」ですね。

 従って数式2-1は、以下のように言い換えできます。

データaの変動 + データbの変動 = 平均値の変動 + ばらつきの変動

(変動 = データの2乗 / 含まれるデータの数 )

 要するに、変動の形にすると分解が容易にできるのです。

記号で表現するとスッキリ

 ここで変動を記号「S」 で表現してみましょう。すると、もっとすっきりした式になります。全変動「各データの変動の総和(全体の変動)」をST、「平均の変動」をSm、「ばらつきの変動」をSeとします。すると数式2-1は、以下のように簡潔になります。この式は覚えておいてください。今後もよく出てきます。

数式2-2 数式2-2

 a、b という2個のデータに含まれる2個の情報は、変動という形で表現することにより、平均値とばらつきの2個の情報に分解できるということです。変動という言葉は、少々分かりにくいですが、実は非常に便利な概念です。ぜひ、理解して活用ください。

ばらつきの計算も簡単になる

 変動という考え方を、今度はデータが3つ(a ,b ,c )の場合で考えます。すると変動に分解する式は、以下のようになります。

データaの変動+データbの変動+データcの変動=平均値の変動+ばらつきの変動

a2+b2+c2=ST(全変動)ですから、つまり、ST=Sm+Se です。

 この式の中で最後の項の「ばらつきの変動」だけは、計算式が分かりませんね。でも安心してください。以下のようにすれば、簡単に計算できます。ばらつきの変動を、計算式が分かっている項目の組み合せで表現するのです。

数式2-2(ばらつきの変動=全変動−平均値の変動)と変形します。

数式2-3 数式2-3

つまりSe = ST − Smです。

 この式を見ると、データがどんな数字であっても、全データの変動の和(全変動)から平均値の変動を引けば、ばらつきの変動が求められることが分かります。つまり、ばらつきの変動は、直接計算しなくても簡単に求められるのです。2乗和を使う目的は、ばらつきの大きさを求めるためなのです。

 この式の意味はよく覚えてください。これを応用する場面は、これからも出てきますから。

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