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» 2013年06月05日 12時30分 UPDATE

和田憲一郎の電動化新時代!(2):ベタープレイス破綻で電気自動車の発展は遠のくのか (1/2)

バッテリー交換方式の電気自動車(EV)を提唱していたBetter Place(ベタープレイス)が、裁判所に会社の解散と清算を申し出た。日本国内で華々しい実証試験を行うなど一時話題となった同社だが、何が原因でこのような事態に陥ったのだろうか。さらに、バッテリー交換方式EVの持つ課題は何なのか、ベタープレイスに代表されるEVベンチャーの破綻によってEVの発展は遠のくのか、考察してみたい。

[和田憲一郎(エレクトリフィケーション コンサルティング),MONOist]
和田憲一郎の電動化新時代!

 筆者にとって、Better Place(ベタープレイス)の日本法人であるベタープレイス・ジャパンが、2010年4月に東京・虎の門で開催した「世界初バッテリー交換式電気自動車EVタクシー実証運用開始」というイベントに参加したことは思い出深い。電気自動車(EV)のバッテリーを自動で交換するシステムもしっかり作ってあり、予想以上に完成度が高いことに驚きを感じたものである。

 それ以降あまり話題に出なくなったバッテリー交換方式EVだが、2013年5月26日に発表されたベタープレイスの解散と清算によって幕を閉じようとしている(関連記事:電池パック交換式EVは顧客満足を得られず、ベタープレイスが会社清算へ)。同社設立の背景を振り返りながら、その利点や課題、EVの発展に与える影響について考察してみたい。

バッテリー交換方式が生まれた背景

 ベタープレイスは2007年10月に創業している。創業者のShai Agassi(シャイ・アガシ)氏は、ドイツの大手ソフトウェア企業SAPでの経験を基に、EVのバッテリー交換をメインとする新ビジネスモデルを構築しようとした。当時(現在もそうであるが)、EVは1回の充電によって走行できる距離が短く、これを伸ばそうとすればより多くの電池搭載を必要とするため、レイアウト/コストの両面で課題を抱えていた。

 これに対しアガシ氏は、バッテリー交換ステーションでバッテリーパックごと交換する方法を用いれば、EVの充電を数分で完了でき、ユーザーの利便性が高まると考えた。2010年4月には、東京・虎の門にバッテリー交換ステーションを設置し、EVタクシーによる実証試験も開始している。

バッテリー交換方式のEVタクシーを使って東京都内で行われた実証試験 バッテリー交換式のEVタクシーを使って東京都内で行われた実証試験 出典:ベタープレイス

バッテリー交換方式の利点と課題

 バッテリー交換といえば、携帯電話機やデジタルカメラといったモバイル機器を思い浮かべる人も多いだろう。しかし、EVに適用する場合は少し事情が異なる。以下に利点と課題を挙げよう。

利点

  1. 近くにバッテリー交換ステーションがあれば、バッテリーパックの交換は2〜3分と極めて短時間に実施できる。CHAdeMO(チャデモ)方式の急速充電が15〜30分要するのに比べ、圧倒的に短い(ただし、その時までに交換するバッテリーパックが満充電になっている必要がある)

  2. ベタープレイスは、ユーザーが同社から電池を借り受け、走行距離に応じて使った分のみ電気代を支払うというビジネスモデルを構築しようした。これは携帯電話の通話/通信サービスの料金を徴収する際などにとられる手法でもある

課題

  1. 最大の課題となるのが、自動車メーカーがバッテリー交換方式EVの開発に積極的になりにくい事情である。自動車メーカーは、バッテリーの中身およびレイアウトが基幹部品であることから、競争領域と定めている。しかし、バッテリー交換方式EVは、フルモデルチェンジするまでの期間(平均で5〜6年)、同じバッテリーパックを使用することを要求する。今後どれほど進化するか分からないバッテリーのような競争領域で、他社と差異化するための選択肢を狭めるようなことを自動車メーカーは嫌う

  2. バッテリー技術の進化への対応力が低い。EVの黎明期ではバッテリーが著しく進化し、同じ車種でも1〜2年後にはバッテリーパックのサイズが3分の2に小型化していることも考えられる。自動車メーカーであれば、マイナーチェンジのタイミングをとらえバッテリーパックの設計を変更できるが、バッテリー交換方式のように形状や設置位置を固定されてしまうと、バッテリーの進化に合わせて改良するといった自由度を失うことにつながる

  3. EVの車種拡大への対応が難しい。1つの自動車メーカーで複数のEVを展開している場合、バッテリーパックはマイナーチェンジも含めて多数存在することになる。ましてや多くの自動車メーカーがEVを市場投入する場合、バッテリーの種類はさらに多くなる。バッテリー交換ステーションで、これらさまざまな種類のバッテリーパックを保有することが可能かという問題に直面する。一般の車両ではなく、タクシーであれば同じ車種で長い期間レイアウト変更しないことも想定できる。実際に、中国ではEVバス向けにバッテリー交換方式が採用されている。しかし、これとてバッテリーが進化しコストダウンの可能性が高まれば、同じバッテリーパックを使用するとは限らないのではなかろうか

  4. 品質保証への懸念が存在する。自動車メーカーは、バッテリーパックも含めてトータルで車両の品質を保証している。もしバッテリー交換したEVが、衝突時にトラブルを発生した場合(例えばエアバックが展開しない、高電圧系が遮断しないなど)、最終責任は誰が負うのかという懸念が生じる。自動車メーカーにとって、バッテリーパックが自社の管轄外で交換されているので車両全体の責任を負いにくくなる。一方、バッテリー交換ステーションは、単にバッテリーパックを交換しただけだから車両全体についての責任は負えないとなるのではないか

  5. 事業性も大きな課題だ。バッテリー充電ステーションを設置するには、虎の門の場合でも設備に約5000万円掛かると聞いている。これに加えて、数十のバッテリーパックを保管するとなると相当の資金が必要となる。しかし行っていることはバッテリーの交換でしかなく、1回で多額の料金は徴収できない。電気自動車の急速充電(一般的に1回当たり約500円程度)を考えると限界があり、事業を成り立たせにくかったのではなかろうか
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