2015年、お弁当箱もネットにつながる!?――Webとリアルの融合が生んだ「オベントーバコラー」クラウド×Android×Arduino=(2/3 ページ)

» 2013年06月14日 00時00分 公開
[八木沢篤,MONOist]

Arduino×Android×クラウド=オベントーバコラー

MONOist で、“Arduino×Android×クラウド”を組み合わせたオベントーバコラーが誕生したわけですが。どのようなコンセプトから生まれたのでしょうか?

北口氏 もちろん、始めからお弁当箱に行き着いたわけではありません。Arduino×Android×クラウドという組み合わせは世の中に既にあったので、まず、自分たちならどうやって他と差別化できるかを検討しました。そこで出てきたのが、「対戦モノ」というコンセプトです。これまで培ってきたリアルタイムWebの技術が生かせる題材だと考えたからです。

 もう1つこだわったのは、「ネットにつなげる」という点です。わざわざクラウドに接続しなくても、ZigBeeなどの近距離無線通信でデバイス同士を接続すればいいという意見もあるかもしれません。しかし、Web技術は当社の強みでもあるので、ネットへつなぐことの必然性・可能性・応用性をどうしても盛り込みたかったのです。

MONOist そこでお弁当箱に行き着いたわけですが……。なぜでしょうか?

北口氏 はい。IoTについて調査して分かったことがありました。それは、「食器」というものが、デバイス的にあまり注目されていないということです(笑)。一部、フォークなどでそのような事例があると聞いたことがありますが……。それと、食器、特にお皿などをイメージすると、ハードウェアの設計や工作が不得意な自分たちでも“やれそうなサイズ感”だなという気がしましたね(笑)。そこで、先ほど説明した“対戦モノ”を“食器”と掛け合わせて考えた結果、お弁当箱に行き着いたのです。

 “食育×IT”とでもいいましょうか。子どもたちが一緒にお弁当を食べながら対戦ゲームができ、その様子や結果を専用アプリやネットを介して親御さんがチェックできるだろうと考えました。「今日は○○くんと一緒にお弁当食べているんだな」「残さずに食べたかな」「全て食べるのにどれくらい時間がかかったか」などを離れたところから確認できるんです。これはネットにつながっているからこそ実現できることですよね。

補足:リアル対戦型手作りお弁当「オベントーバコラー」とは?

オベントーバコラーとは、本稿の冒頭に紹介したYouTube動画にもあるように、お弁当を食べる行為とバトルゲームを融合したものである。

オベントーバコラー(1) リアル対戦型手作りお弁当「オベントーバコラー」

Androidスマートフォン(4.0以降)、圧力センサー、Arduino(Arduino MEGA ADK R3)+オリジナルの専用シールドなどをお弁当箱の中に詰め込んだ次世代お弁当箱だ。友達のお弁当箱とBumpして(衝突させて)、フタを開いてゲームスタート。お弁当箱の重さを圧力センサーで計測し、重量が減る(お弁当を食べる)とイベントが発生。圧力センサーの情報などはオリジナルの専用シールド(Arduinoを拡張するボード)が接続されたArduinoを介して、Androidスマートフォン側に送られる。ここでの通信には、Accessory Development Kit(ADK)を利用。Androidスマートフォン上ではオベントーバコラーのアプリが起動されており、WebSocketにより、クラウド上にあるNode.jsサーバとリアルタイム通信を行うことで、対戦相手とのバトルを実現する。

システム概要図 システム概要図

なお、ゲーム内で使用されるキャラクターは、お弁当のレシピにひも付けられており、主にお弁当を詰めるお母さんが設定することになる。「ねえねえお母さん、明日は“ヤーサー(キャラクター名)”で戦いたいから、野菜中心のレシピでお弁当を作ってね!」なんていうコミュニケーションが生まれるかもしれない!?

ゲームの流れ(1)ゲームの流れ(2) バトルスタートとゲームの流れ【※画像クリックで拡大表示】



MONOist オベントーバコラーの開発期間はどれくらいかかったのでしょうか?

北口氏 イベントでのお披露目を目指し、3週間ほどで開発しました。かなりバタバタではありましたが、Arduinoや圧力センサー、Qi充電池(充電装置)、スイッチ類などの市販品と、自分たちで製作したオベントーバコラー専用シールド、スケッチ(Arduino用のプログラム)、Android上のアプリ、サーバサイドプログラムなどを組み合わせて実現することができました。ただ最初は、電子工作も不慣れなので、絶縁やらシールドのケアやら、慣れている人にとっては当たり前のことが全然できませんでしたね。サーバ側やAndroidスマートフォン上のプログラム開発は慣れたものなんですが(笑)。

 実は、一番苦労したのがお弁当箱の選定です。このコンセプトは“子どもが使う”ことを前提としているので、ガテン系のお兄さんが食べているようなアルミ弁当箱(通称:ドカベン)ではダメなのです。ドカベンの方が基板の設置や配線の取り回しなどは格段に楽だったとは思いますが(笑)。ただ、何せ工作スキルもほとんどありませんでしたから最小限の工作で済むお弁当箱を見つけるのには苦労しましたね。あぁ、あと実際に載せるAndroid搭載スマートフォンの機種選定も大変でした。サイズが小さくて、USB端子が端末の下部に付いているものが少なくて困りました……。

MONOist 多分、オベントーバコラー(このお弁当箱)を見た人は、「実用性」への疑問を抱くような気がします。その点はどのようにお考えでしょうか?

北口氏 そうですね。実際イベントなどで展示させてもらうと、「お弁当の保温はどうするのか」「汁の対策は大丈夫なのか」「USBケーブルをやめてBluetoothの方がいいのではないか」など、さまざまなご意見やアドバイスをいただきます。ただ、これはあくまでも私たちが考えたArduino×Android×クラウドによる新しいUXのカタチであり、最終製品を目指すものではありません。だから、「ごもっとも! おっしゃる通りです!」といった具合で、そこまで実用性は考えていないのです。

 あと、Androidアプリの面でいうと、「お母さんが選択したレシピと、実際に作ったお弁当の中身が伴っていない場合はどうするのか」という問題(?)もありますが、お弁当のおかずを画像解析するのもあまり現実的ではありません。そこまですると手軽さ・気軽さが損なわれ、楽しさが減ると思います。だから、運用面での厳密性・正確性は深く追求していません。

MONOist といいながらも、ワイヤレス充電の「Qi」を載せているあたりに実用性を意識した感じがとれますね(笑)。

北口氏 お弁当箱の充電に関しては、ほぼ100%、絶対にツッコまれるのでこれだけは取り入れました(笑)。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.