3Dプリンタでコスト削減して設計品質も高める――「爆獣合神ジグルハゼル」の開発3Dプリンタと玩具開発(2/2 ページ)

» 2013年06月18日 12時00分 公開
[小林由美MONOist]
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3Dプリンタ、バリバリ活用中!

 メガハウスの製品設計では、3Dプリンタは今や欠かせないパートナーだ。3Dプリンタ「Eden260」は8年前の2005年に導入。国内で11番目のユーザーだったという。現在は「Eden350V」を使っている。

 同社の3Dプリンタ導入の目的の1つは、外注試作(光造形)のコストを大幅削減するためだった。かさむ製作費用のほかに、外注先の手配関係や、コミュニケーションも、「見えないコスト」となり積み重なった。とはいえ、単純に試作回数を大幅に減らしてコストを落とすというのは現実的ではなかった。コストを削減しながらも、設計品質向上も実現したかった。同社は、この2つの目的をかなえるため、3Dプリンタによるフロントローディング開発の実現を目指した。

 例えば、ジグルハゼルのような合体変形ロボットのギミックやプロポーションは、画面に表示された3次元データの検討だけではピンとこないもの。3次元CADでも部品干渉のチェック程度はできるが、動作までは検証し切れない。やはり実物での試作の方が断然分かりやすい。外注では気が引けるが、自社で造形できるなら、設計者が実物でトライ&エラーに気軽に取り組みやすくなる。造形を繰り返すことで設計スキルが向上すれば、無駄に作ることも減っていくだろう。

 約2000万円もする3次元プリンタは、決して安い買い物ではない。3Dプリンタの本体価格やランニングコストを試算し、従来の外注試作で掛かっていたコストと比較したところ、3Dプリンタを導入した場合の方がコストは大幅に落ちる計算になった。それで導入に踏み切ったという。

 現在、3Dプリンタは1カ月250時間ぐらい稼働しているという。ランニングコスト、つまり「材料の使用量」は年々減少傾向。導入当初の狙い通り、設計品質が高まったことから、試作回数そのものは大幅に減っているそう。ただし設計案件自体も年々増えているため、トータルで「やや減少傾向」ということだ。また設計品質の向上は、大人にも愛される製品の実現へもつながった。

 この経験から、3Dプリンタは、新人教育にも役立てられると同社では考えているという。どんどん出力しながら、設計を体得していけるからだ。最初は失敗してたくさん出力するが、その数はだんだん減っていくだろう。それを経ながら、少しでも早く即戦力にできる。

 3Dプリンタの試作品で、設計初期での強度検証がある程度可能になったことも、開発コスト削減に効いている。設計段階で構造や形状の弱い部位の洗い出しができるようになったことで、金型修正も減り、かつ品質改善にもつながって、市場に出てからのクレームも減ったと言う。従来の外注だとコストが掛かることからも、気楽に試作品が壊せなかった。なので、試作品を使った強度検証ができず、金型製作した後の成形品で検証するしかなかった。しかし、その時点で分かれば、当然、金型修正費用が掛かってしまう。3Dプリンタを導入したことで、そうした心配も無用になった。

 また設計が完了した3次元プリンタの造形モデルを塗装すれば、商品パッケージの写真用のモデルに使える。従来のように金型製作を待つことなく、最終製品に近い物を用意してパッケージ画像を作ることができ、開発期間削減につながった。

 このように、同社では3Dプリンタ導入により、もくろんだ通りのフロントローディングが実現し、大幅なコスト削減と設計品質の向上をかなえた。

 1つ悩ましいのは、開発案件が一時期に集中すると、1台のEdenに仕事が集中すること。そういう時期は、スタッフ同士、「譲り合って」「節度を持って」乗り切っているとのことだ。――「それなら、もう1台増やしてみてもよいのでは?」と尋ねたところ、今のところ、まだその予定はないそうだ。

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