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» 2013年06月19日 10時00分 UPDATE

MONOistミーティングレポート(1):メイカーズと町工場を熱意と3Dでつなげ (1/2)

個人や小規模な組織から、面白い製品を生み出してビジネスをするには? カッコイイ電気バイク「zecOO」を開発した根津氏、ロボティクスベンチャーのユカイ工学小島氏、プロバイクレーサーの町工場社長 シンクフォー山下氏、小ロット専門のオンライン加工屋 プロトラブズのパン氏が「3Dデータと町工場」をテーマにディスカッションした。

[加藤まどみ,MONOist]

 「起業してみたい、でも製造や販売の手配、お金の話など分からないことがたくさん」――そう考えている人は少なくないのではないだろうか。そんな“潜在メイカーズ(Makers)”や、彼らとともに仕事をする人たちのためのイベント「MAKERSたちのビジネスをつなぐ、3Dツールと町工場」が、2013年6月1日に秋葉原で開催された。このイベントには個人もしくは少人数の組織でモノづくりビジネスに取り組むメイカーズたちや、彼らと協業する中小企業経営者などが集結。普段の仕事内容や苦労、3Dプリンタや3次元(3D)データなどのあれこれを語った。

yk_mono_makeres_00.jpg 会場の様子
yk_makenigao.jpg 今回の登壇メンバーの似顔絵

デザイナーと加工業がディスカッション

 まず1本目のディスカッションでは「3Dデータと町工場」をテーマに、シンクフォー 代表取締役の山下裕氏がモデレータを務め、ユカイ工学 デザインディレクターの小島拓也氏、znug design 代表/クリエイティブコミュニケーターの根津孝太氏、プロトラブズ 社長のトーマス・パン氏がディスカッションした。彼らはいわゆる「メイカーズ」と、「メイカーズが依頼する量産や試作を行う加工業」だ。

yk_mono_makeres_0000.jpg 1本目のディスカッション「3Dデータと町工場」登壇メンバー:左から、山下氏、小島氏、根津氏、パン氏

 根津氏は工業デザイナーであり、トヨタ自動車に勤めた後、2005年に独立して会社を立ち上げた。独立後初めて手掛けたのが、家具展示会ミラノサローネに出展してデザイン賞を受賞したスツール「jellyfish」だった。

yk_mono_makeres_01.jpg jellyfish

 「水の上に座れたら」という発想で作られたスツールは、イスの下の透明ケースに水が入っており、水の波紋を床にLEDで投影する。子どもから大人まで笑顔で楽しんでもらえる人気の作品だったそうだ。その後、魔法瓶やトライクの「Ouroboros」、自主企画の電気バイク「zecOO」(ゼクウ)などをはじめ、数々の乗り物や工業製品を生み出している。

yk_mono_makeres_01_2.jpg zecOOはドバイの人が買ってくれた!

 小島氏が所属するユカイ工学は、ロボットやハードウェアの開発から販売までを手掛ける、2007年に設立したメンバー7人のベンチャー企業だ。同社が開発したロボット「ココナッチ」は、「ロボットはロボットでも、“役に立たない”ロボット」(小島氏)。手のひらサイズのマシュマロのように柔らかい物体が、メールやツイッターなどと連動して光ったりメッセージを伝えたりしてくれる。ただし、しゃべれるのは知っている言葉だけという機能とデザインの緩さが特徴だ。

yk_mono_makeres_02.jpg かわいい「ココナッチ」

 「コンピュータを通したコミュニケーションをあったかくするようなロボット」(小島氏)を目指したという。また小島氏がデザインしたのが、学研「大人の科学」の「パタパタ電波時計」だ。デジタルの電波を受信しながらアナログの数字パネルをめくっていき時間を表示するという、デジタルとアナログが融合した製品である。ほかにもシステムインテグレート企業のチームラボと協力した、ハンガーを手に取ると着こなしがディスプレーに表示されたり、手に取られた回数を集計したりという販促ツールがある。こちらはチームラボのアイデアを基に、デザイン(意匠)から設計までを手掛けている。

 モデレータを務めた山下氏が代表取締役を務めるシンクフォーは精密切削加工業を営んでおり、加工材料はグラファイトやガラスカーボンなどカーボン製品、シリコンカーバイドやアルミナなど難切削材、また樹脂など幅広く扱う。

yk_mono_makeres_03.jpg シンクフォーの概要

 試作部品をはじめ、装置部品、治工具、さらにシーケンサーを使った装置の設計から組み立て、設置なども行っている。

 その一方、同社では「SYNCEDGE(シンクエッジ)」というオートバイパーツを扱う自社ブランドも立ち上げている。これは山下氏自身がプロのバイクレーサーで、大学時代からオートバイを続けており、全日本ロードレース選手権 国際A級「GP-mono」クラスで優勝したという経歴と大いに関係している。「ずっとオートバイと関わりたい」(山下氏)と考えた結果、今年(2013年)にはレーシングチームまで立ち上げ、全日本に参戦している。するとこれが宣伝となり、個人販売を想定して立ち上げたSYNCEDGEの製品に企業の顧客が付いたという。

 パン氏が社長を務めるプロトラブズは、メイカーズの試作や小ロット製造にうってつけの短納期の加工サービスを提供している。同社では射出成型(樹脂)と切削加工(金属と樹脂)の2つについて、オンライン上で明快な依頼フォーマットを用意する。

yk_mono_makeres_04.jpg プロトラブズのサービス概要

 「加工機械を持つことができない個人でも1個から注文できる、面談不要な加工成形屋」(パン氏)だ。実は同社もかつて、たった一人のアメリカ人が射出成型機とマシニングセンタ1台を用意して始めたガレージベンチャーだった。今は世界各地に展開し、日本法人では約800のさまざまな産業分野の利用実績を持つ。同社のサービスを利用するにはデータとインターネットさえあればいい。この手軽さが受けてか、実際に個人での依頼から建築物の修理パーツ、重機の部品など、あらゆる産業分野にまたがり、日本各地から利用があるそうだ。

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