「じゃがりこ」の油を使用!? カーボンニュートラルなエネルギー、バイオディーゼル燃料の現在地小寺信良のEnergy Future(24)(2/4 ページ)

» 2013年06月25日 09時30分 公開
[小寺信良,MONOist]

「じゃがりこ」の油を活用

 では実際に篠崎運輸倉庫での作業を見てみよう。同社が使用している廃油は、学校給食センターから廃油として出る植物油である。給食センターでは、あまり汚れていなくても、1週間に1回ぐらいの周期で必ず交換するため、材料としては上質であるという。

給食センターからの廃油。原料としてはかなり上質らしい 給食センターからの廃油。原料としてはかなり上質らしい(クリックで拡大)

 一方、茨城県下妻市にあるカルビーの下妻工場からは、「じゃがりこ」の製造で使われたパーム油の廃油を買い取っている。パーム油は長期間保存しても酸化しにくいという特性があるが、常温では固形なので、気温が高くなる7〜9月の間に利用する。

カルビーから買い取ったパーム油。上澄みの液体部分はパーム油以外の成分カルビーのトラックにはステッカーでアピール カルビーから買い取ったパーム油。上澄みの液体部分はパーム油以外の成分(左)、篠崎運輸倉庫のトラックにステッカーでアピール(右)(クリックで拡大)

 廃油は使用状況によってコンディションが変わるので、毎回油脂劣化度判定試験紙を使って、酸化度合いを調べる必要がある。この設備では触媒に苛性カリを使用しているが、酸化の進行具合に応じて触媒の量を調整しなければならず、良好なBDFを得るにはある程度の経験が必要だという。

酸化具合を試験紙でチェック 酸化具合を試験紙でチェック

 なお苛性カリは、毒物及び劇物取締法(毒劇法)や薬事法で劇物に指定されているため、取り扱いには注意が必要である。バイオマス・ジャパンではより安全な触媒として「BioMAX」という商品も開発しているが、コスト的には若干高くなるという。

グリセリンを分離して排出

 200リットルの廃油を65度に加熱して約1時間撹拌(かくはん)し、40リットルのメタノールに必要量の触媒を混ぜたものを加えてさらに撹拌。これを1時間程度静置すると、グリセリンが分離し、底部にたまっていく。これを装置下のコックから抜き取る。

分離したグリセリンを排出 分離したグリセリンを排出する(クリックで拡大)

 得られたグリセリンは買い取り業者に販売し、ボイラーやアスファルト製造の助燃剤として利用される他、肥料などにも使われる。グリセリンは、産業廃棄物として捨てるなら引き取り業者に対する費用が発生する。そのため自社で精製を行う際には、自社で使い道がある場合を除けば、このような買い取り業者を見つける必要があるだろう。

 グリセリンを抜いた後の液体を、温度を110度まで上げながら撹拌すると、メタノールが蒸発する。これを上部に設置された水冷装置で冷却し、回収する。

 こうして残った液体が脂肪酸メチルエステルとなるわけだが、まだ不純物が含まれているため、活性白土を使ってろ過し、さらに複数段のフィルターを通す。これに酸化防止剤200グラムを入れて撹拌し、最終的にBDFとなる。さらに品質を上げるために蒸留する方法もあるが、同社では蒸留せずにそのまま使用している。

中央の薄緑の装置が活性白土のろ過装置 中央の薄緑の装置が活性白土のろ過装置(クリックで拡大)

 BDFの品質は、JIS規格ではメチルエステル化率で96.5%以上と規定されている。これを測定するには、検査機関などに検査依頼する必要があったが、高額な費用が掛かるため、目視による品質判断をしている事業者が多かった。BDFの利用において、エンジントラブルなどの事例が多数報告されているが、それらは十分な品質に届かないBDFを使用したものと考えられる。

 そこでバイオマス・ジャパンでは、10分程度で簡易的に品質をチェックできる安価な試薬を開発した。これに規定量のBDFを入れると不純物が沈殿するため、その量でメチルエステル化率を判断できる。

バイオマス・ジャパンが開発した簡易チェッカー バイオマス・ジャパンが開発した簡易チェッカー(クリックで拡大)

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