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» 2013年06月26日 11時00分 UPDATE

マイクロモノづくり 町工場の最終製品開発(25):100年後も事業継続するには笑顔! バネ屋さんのアート (1/2)

100年後も日本でバネを作り続けたい! バネを楽しくつなげる新感覚アートで、皆で笑顔になろう。横浜のバネ屋さんのワクワク・モノづくりビジネス。

[宇都宮茂/enmono,MONOist]

 マイクロモノづくりを成立させるためには、設備を持って製造する会社と、製品アイデアを持つ方とのコラボレーションが必須です。

 今回は、バネ製造会社の3代目として長年大手メーカーの下請けとして精密なバネを供給し続けてきた五光発條の代表取締役 村井秀敏さんにお話をうかがいました。村井さんはバネ技術の新たな可能性を模索する中、「金属バネアート」というかつてなかったアートに挑戦しています。

 下の写真で村井さんが身に付けている帽子と眼鏡は、小さなバネをつなげて作られたものです。こちらが今回紹介するマイクロモノづくり製品です。

yk_enmono25_01.jpg バネアートと五光発條の代表取締役 村井秀敏さん

日本でバネづくりを続けたい

 村井さんはLEGOなどのブロックパズルのファンで、「プロ級の腕前!」を自負する43歳。村井さんが代表取締役社長を務める五光発條も、ちょうど同い年です。村井さんの趣味と、自社の事業がうまくリンクし、自社製品が誕生することになります。

 五光発條は、神奈川県で精密超微細バネを開発製造する企業です。山梨工場(同社グループ企業 ジー・エス・ケー)と、タイ工場、ベトナム工場があります。バネ業界ではリーマンショック以前より、国内の取引が厳しい状態にありました。村井さんの「100年後も国内でバネを作る」という強い思いを抱えており、5年前から経営革新活動や自社製品開発プロジェクトに取り組んできました。

経営革新講座で生まれたアイデア

 2012年秋、村井さんはenmonoが実施する「マイクロモノづくり経営革新講座」で、新たな自社製品について考えていました。この講座では、「自分が好きなもの」と「自社技術」が重なり合う“何か”を見つけ出さなくてはならないという課題が課せられていました。ですが、当初の村井さんは「好きなものを作って世に出す」なんて、「許されないこと」だというイメージが強かったと言います。

 そのイメージを変え、アイデア出しをし続けたところ、「バネをブロックのようにつなげる」という発想が浮かんできたのです。

 村井さんは夢中でバネとバネをブロックのようにつなげていきました。やがて、尾びれが動くタイのオブジェが完成していました。

yk_enmono25_02.jpg バネで作ったタイのオブジェ

 村井さんが何よりうれしかったのは、この“バネブロック”が、どうやら、見た人や手にする人を笑顔にし、楽しいコミュニケーションをもたらしてくれることに気が付いたこと。それこそ、村井さんが思い描いた製品でした。

バネを通じて人と人をつなげたい「SpLink」

 金属バネのブロックは、プラスチック製のブロックとは違う魅力があります。精密バネを使うことで、作品が柔軟に動くのが、今までにない感覚でしょう。ステンレスはさびにくく、水にも熱にも強いです。試作を重ね、バネのすき間をなくしてみたら、まるで鉄のかたまりを削り出したような仕上がりになってきました。イス、カエル、飛行機……、村井さんが次々と新しいオブジェを作り上げるたび、表現の幅は広がっていきました。

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yk_enmono25_04.jpg 次々と作ったバネのオブジェ

 こうして誕生した金属バネのブロックは、「SpLink(スプリンク)」と名付けられました。「Spring(バネ)」を通じて、世界中の人が「Link(つながる)」してほしいという願いがこめられているそうです。

 村井さんは、アート系展示会「デザイン・フェスタ」への出展やクラウドファンディングによる資金調達などにチャレンジしながら、「SpLinkは過去の企画とは違う!」という実感を得ました。村井さんは過去5年間、自社商品開発にチャレンジし続けてきたのですが、いつも販売まで熱意を持続できなかったそうです。ただし、今回のSpLinkは違いました。

yk_enmono25_06.jpg デザイン・フェスタへの出展

 「自分が好きなことのため」と思えば、「苦手なことでも挑戦しよう」という意欲がこんこんとわいてくる。「何とかして販売にこぎつけて、お客さまの手元に届けよう!」という熱意が持続できます。

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