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» 2013年07月04日 12時00分 UPDATE

DMS/M-Tech2013取材レポート:3Dプリンタと3つの誤解 (1/3)

DMS/M-Tech2013取材で探った3Dプリンタ事情や“よくある誤解”をまとめてみた。3Dプリンタっぽい加工機器も併せて紹介する。

[小林由美,MONOist]

 2013年6月19〜21日、東京ビッグサイトで「日本ものづくりワールド2013」が開催された。この記事では、その中の「第24回 設計・製造ソリューション展」(DMS2013)および「第17回 機械要素技術展」(M-Tech2013)の取材で得た情報と併せ、「3Dプリンタの定義」や「よくある誤解」について考えてみる。その上で、さまざまなレベルの機種の使い分けに関しても述べる。

 「一見3Dプリンタっぽく見える」が全く違う機器や、「3Dプリンタっぽく使える」切削加工機も併せて紹介する。

>>「3Dプリンタ狂騒曲奏でるDMS2013――というか「3Dプリンタ」の定義は」 (2013年6月19日、DMS2013取材雑感)

>>3Dプリンタ特集

「3Dプリンタ」の定義

 「3Dプリンタ」の定義について、日本製で「3Dプリンタ」をうたう「アジリスタ」を開発・販売するキーエンスにずばり、尋ねてみた。

 「オフィスで使える機器であること」――キーエンスはそう説明した。「3Dプリンタ」は、紙を印刷するプリンタと同様、オフィス内に設置して使えるということが「3次元造形機」との違いだ。「3次元造形機」とされるものは「造形室」のような専用の部屋を設けて使用することが想定されているそうだ。

yk_dms2013_3d2_01.jpgyk_dms2013_3d2_az.jpg あまりの混雑で、本体に近寄れなかったので、製品画像を紹介

 アジリスタの外形寸法は944×700×1360mm、重量は188kg。「日本製ではこのクラスの機器が、他には、なぜか見当たらないですね」(担当者)。

 アジリスタ登場以前、キーエンス自身が3Dプリンタのユーザーであり、同社機器の設計現場で「オフィス使い」をしてきた。アジリスタは、まさに「俺らがほしい3Dプリンタを作ってみた」のだそうだ。特に着目したのは、「サポート材除去」の手間の問題だった。その手間故に、サポート除去の担当を別途配置し、常に忙しい設計者自身の手ですることはあまりなかったそうだ。アジリスタでは、サポート材を水溶性にし、サポート材除去の手間を削減したことが特徴だ。「バケツにためた水にどぼっと造形物を入れれば、サポート材が落ちる」ので、設計者でも作業が負担にならないことをウリにしている。

 3Dプリンタについて調べていると、本体価格、造形精度、造形サイズについ目が行きがちだが、ランニングコストや使い勝手の部分も機器選定では非常に大切なポイントだ。導入を検討している方は、メーカーや代理店にしっかり確認しておきたい。

「光造形」の定義

 精密砂型鋳造や、3Dプリント出力サービス、デザイン・設計のコンサルティングなどを請け負うジェイ・エム・シーは、自社Webサイトで「光造形」について以下のように説明している。「3Dプリンタ」は光造形の1分野として考えているようだ。

「光造形とは?」

樹脂層に入った紫外線硬化型樹脂の液面に紫外線レーザーをあてて一層ずつ硬化させ、重ね合わせていく方法が光造形になります。 レーザーパワーを変動させ、50μmから250μmまで積層ピッチを変動する事ができます。現在では、「3Dプリンター」や「ナイロン粉末造形」「金属粉末造形」なども光造形と呼ぶことがあり、広い意味を持つ言葉になりました。

ジェイ・エム・シーのWebサイトより(原文ママ)

 ジェイ・エム・シーは、3次元測定サービスを提供する光佐、日本ユニシス・エクセリューションズとともに出展。3Dスキャンから3Dプリンティングとつなぎ展開する事例を紹介した。

yk_dms2013_3d2_03.jpg ジェイ・エム・シー広報 岩澤理沙さんを3Dスキャンして造形した事例

 造形・成形機のさまざまな定義を見てきたが、細かい定義よりも、ユーザーが「どう使いたいか」「どういう効果がほしいか」を明確にした上で、3Dプリンタなり3次元造形機なりの選定に当たること、あくまで「その企業(人)にとって、何であるか」の方が重要なのかもしれない。

【誤解1】3Dプリンタが普及すると、金型や熟練の加工技術が要らなくなる

 3Dプリンタが普及すると、金型や熟練の加工技術が要らなくなるのか。それは考えづらい。生産力、寸法精度、コスト、いずれにおいても、3Dプリンタは金型の射出成形には到底かなわない。将来、3Dプリンタの技術が高度に進化するのだとしても、金型や射出成形の技術もまた高度に進化するだろう。適材適所で両立していくのが現実的な考え方だ。

 金型メーカーも3Dプリンタの存在を迷惑に思っているわけではない。実際、金型メーカーで、金型試作のコスト削減や製作時間の短縮のために導入検討している例もある。年々厳しくなっているコストや納期に対応するためだ。

 とにかく早く実物を用意したい場合には3Dプリンタが有効だ。機楽によるロボット組み立てキット「RAPIRO(ラピロ)」の事例では、試作を3Dプリンタと真空注型で行った。3Dプリントを請け負ったのは、ジェイ・エム・シーだ。クラウドファンディングの「Kickstarter」にエントリーし資金が順調に集まれば、試作や小ロット生産が得意な金型メーカー ミヨシが金型を起こして射出成型で部品を生産する計画だ。

yk_dms2013_3d2_04.jpg RAPIROを企画・設計した機楽 代表取締役 石渡昌太氏:アイアット国際特許業務法人ブースにて出展。アイアットは石渡氏が本件の知的財産関係で相談した事務所
yk_dms2013_3d2_05.jpg 葛飾区ブースでRAPIROについて説明するミヨシ 代表取締役社長の杉山耕治氏

 このように3Dプリンタと金型技術、双方のメリットを生かすことで柔軟かつ素早いモノづくりビジネスが可能となる。

 3Dプリンティングのサービスだと勘違いされることもよくあるというプロトラブズは今回、M-TechではなくDMSに出展した。同社は、切削加工と射出成形のオンデマンドサービスをオンライン(Web)上で提供する“試作・小ロット生産専門”の企業だ。

yk_dms2013_3d2_pp.jpg プロトラブズのブース

 同社も“金型屋さん”の一種だが、3Dプリンタの普及は、脅威どころか歓迎しているそうだ。3Dプリンタユーザーは、同社の顧客になる可能性があるからだ。

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