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» 2013年07月22日 12時00分 UPDATE

製造マネジメント インタビュー:「イノベーションを生むには技術深化でなく境界線を越えろ」産総研インタビュー (1/2)

「イノベーションの必要性」が叫ばれて久しいが、イノベーションを生み出す処方箋とは一体何だろうか。公的研究機関である産業技術総合研究所(産総研)でイノベーション推進を担うイノベーション推進本部本部長の瀬戸政宏氏に、産総研の取り組みとイノベーションへのアプローチ方法について聞いた。

[三島一孝,MONOist]
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 産業技術総合研究所(以下、産総研)は、環境・エネルギー、ライフサイエンス、情報通信・エレクトロニクス、ナノテクノロジー・材料・製造、計測・計量標準、地質という6分野の研究を行う公的研究機関だ。もともとは地質調査や防災などの観点で作られた研究所だったが、現在では企業や大学と協力しながら「これまでの研究成果を世の中にどう活用するか」という観点で応用研究に取り組み、人材育成などの役割も担っている。

 その中でイノベーション(革新もしくは革新的製品)創出に向けて、産総研内の知的財産や研究成果を生かし、企業や大学と協力しながら、世の中に発信する役割を担うのがイノベーション推進本部の役割だ。同本部が求めるイノベーションとはどういうものか、またイノベーションへの正しいアプローチとはどうあるべきか。イノベーション推進本部本部長の瀬戸政宏氏に聞いた。




イノベーションのために“つなぐ”

産総研イノベーション推進本部本部長の瀬戸政宏氏 産総研イノベーション推進本部本部長の瀬戸政宏氏

MONOist イノベーション推進本部の役割はどういうものでしょうか

瀬戸氏 産総研では現在、環境・エネルギー分野、ライフサイエンス分野、情報通信・エレクトロニクス分野、ナノテクノロジー・材料・製造分野、計測・計量標準分野、地質分野の6つのテーマで研究を進めている。しかし、イノベーションとは研究だけでは生み出すことはできない。研究内容や各種シーズを世の中の問題点と結び付けて、それを解決に導くことができてこそイノベーションにつながる。

 イノベーション推進本部では「イノベーションを生み出すために産総研内のリソースをどう活用するか」ということを目的に2010年10月に発足した。オープンイノベーション(自社だけでなく他社や大学などの技術やアイデアを組み合わせて革新的な商品やビジネスモデルを組織的に生み出す手法のこと)ハブとしての役割を担い、産総研内の各研究ユニットが抱える研究テーマや知財などを結び付けたり、企業や大学との共同研究を行うことでイノベーション創出を実現できるように取り組んでいる。

 外部機関との連携を担うイノベーションコーディネータなどの人材も抱え、技術シーズの発掘や研究開発プロジェクトの推進などを行う。イノベーションを生み出す基盤を作っていくことがイノベーション本部の大きな役割となっている。

境界領域にどうアプローチするのか

MONOist 日本の多くの企業でイノベーション創出に悩みを抱えているように思います。イノベーション創出に向けたアプローチ方法についてどう考えていますか。

瀬戸氏 まずイノベーションというのは技術だけでは起こせない、ということを理解する必要がある。技術の出口をどうイメージするのかが重要だ。そのためにはマーケティングや販売まで含めて「世の中にどういう影響を与えたいのか」を考えて、そのために必要な技術開発を行う必要性がある。

 一方、技術的な観点では、単一技術の潜在能力が小さくなっているという課題がある。研究・開発は専門的で深くあるべきだが、世の中に与える影響を考えると、単一技術でイノベーションを起こせる部分はほとんどなくなってきている。そのため、今確立している研究分野の境界領域にどのようにアプローチしていくか、ということが非常に重要になっている。

 例えば、スマートグリッドなどを考えれば理解しやすいかもしれない。スマートグリッドは、省エネルギー(省エネ)技術と情報通信技術などを組み合わせて、エネルギーの有効活用を実現する。情報通信を利用することで現在創出されている電気を必要なところい必要なだけ配分し、省エネ技術の抜本的な進化がなくても、少ない発電量で都市の運営が行えるようになる。

 このように従来別の領域にある技術を結び付けることで、人々の生活に新たな価値を生み出すことができる。こういう境界領域をどう結ぶ付けることができるか、がイノベーションへのアプローチとして非常に重要になってきている。

 イノベーション推進本部が目指しているのもこういう産総研内外の技術やニーズを結ぶことだと考えている。また現在研究ユニットとしている6分野についても、境界領域へのアプローチをしやすいように見直すことも検討している。

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