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» 2013年07月29日 11時20分 UPDATE

いまさら聞けない 電装部品入門(9):すごいぞスパークプラグ、2000℃に加熱してから急冷して高圧を掛けても壊れない (1/4)

スパークプラグは、イグニッションコイルからの高電圧を使って燃焼室内で火花を発生させて、混合気を点火する電装部品である。安ければ500円で買えるスパークプラグだが、燃焼室内という非常に過酷な環境で動作を続けられるように、さまざまな工夫が盛り込まれている。

[山本照久(カーライフプロデューサー),MONOist]
いまさら聞けない 電装部品入門

 スパークプラグは、イグニッションコイルで昇圧された高電圧を受け、燃焼室内に存在している圧縮空気中で火花を発生させて点火を行い、燃料を燃焼させるための電装部品です。

 自動車が走行するための動力を得るには、エンジンが連続的に回転する必要があります。このため、スパークプラグは定められた点火タイミングに合わせて、正確かつ確実に火花を発生させなければなりません。

 特に、厳しくなり続けている排気ガス規制に対応するとともに、他社との燃費競争で生き残るには、燃焼室内における燃料の完全燃焼は必須条件となっています。

 仮に点火に失敗すると、未燃焼状態の混合気が排気ガスとして外気に排出されることになりますので、環境的にもその車に対する排ガス評価も悪化することになります。言うまでもなく、エンジン性能や燃費の向上に対する悪影響もありますので、スパークプラグには先述した「正確かつ確実に」を実現するためにさまざまな性能が要求されています。

スパークプラグの外観 スパークプラグの外観

スパークプラグに要求される性能

 スパークプラグが非常に過酷な環境で動作していることは容易に想像できると思います。

 エンジン内部での燃焼はスパークプラグが起点となっています。つまり、燃焼ガスに最も直接的に触れる自動車部品はスパークプラグということになります。

 スパークプラグがさらされる環境を具体的な数値で表すと、燃焼工程では約2000℃もの高温によって急加熱され、さらにその後の吸入工程においては外気(混合気)によって急冷されます。

 4サイクルエンジンの場合はピストンが上死点に来るたびに急加熱と急冷が交互で行われます。さらに、1分間に数千回転もの頻度でこのサイクルが繰り返されるわけですから、その過酷さは想像を絶しています。

 スパークプラグは、熱変化だけでなく、圧力の変化にもさらされます。平均値ではありますが、燃焼室内で火花によって点火された混合気の圧力は、約45気圧(4.56MPa)以上に達するといわれています。

 これらをまとめると、スパークプラグには以下のような性能が求められます。

(1)高温高圧縮下においても火花を確実に飛ばせること

 当たり前のことですが、イグニッションコイルから供給された高電圧を受けた後、高温高圧縮に影響されることなく確実に火花を飛ばせることが求められます。確実に火花を飛ばせるというのは総合的な表現ではありますが、次の(2)以降の性能は、この(1)を満たすために存在していると認識していただいても間違いではありません。

(2)超高温下でも絶縁性能を損なわないこと

 イグニッションコイルから供給された高電圧が印加されるスパークプラグの電極から、圧縮空気中を経てアース(接地電極)まで通電するような絶縁性能をどのような環境でも実現できていなければ、絶縁破壊による放電=火花発生は起こりません(内部構造は後述します)。

(3)燃焼圧力に負けない機械的強度を有していること

 先述したように燃焼工程において生じる圧力は非常に大きいものがあります。その上、異常燃焼などによる超高速の衝撃波を受けることもあります。それらの外的応力によって劣化しない強度が求められます。

(4)耐熱性に優れていること

 スパークプラグは瞬間的に最大2000℃もの高温に触れます。それによって構成部品が溶損してしまうと、エンジン不調はもちろん、最悪の場合はエンジン破損に至りますので、高い耐熱性は必要不可欠です。

(5)瞬時に放熱する必要があるため熱伝導に優れていること

 どれだけ耐熱性に優れていたとしても、超高温状態のままでは不具合を起してしまいます。スパークプラグが燃焼工程で受けた熱は、次の燃焼工程までに、吸気工程による直接的な冷却、ならびに取り付けネジ部を通じたシリンダヘッドに熱を逃がす間接的な冷却によって取り去る必要があります。この冷却サイクルをしっかりと確立できなければ、エンジンを連続的に回転させることができなくなります。

(6)高温高圧の燃焼ガスを漏らさない気密性を有していること

 圧縮工程ならびに燃焼工程によって意図的に作られたシリンダ内の圧力は、エンジン性能に直接的に影響します。その大切な圧力をスパークプラグの取り付け部から逃がしてしまうことは大きなロスとなりますので、確実な気密性が必要となります。

(7)燃焼生成物に対する汚れに強いこと

 エンジンで炭化水素(燃料)を燃焼させる際、状況によっては不完全燃焼を起こすこともあります。この場合、必ず燃えカス(カーボン)が生じ、燃焼室全体に付着します。当然、スパークプラグにも付着することになります。そのままカーボンが堆積してしまうと、絶縁性能が低下して火花が小さくなり、燃焼が不安定になってしまいます。これはエンジン性能の低下や有害ガスの排出に直結してしまいますので、付着したカーボンを自らの力で焼き切る性能が求められます(「熱価選択」として後で説明します)。

 ただ火花を飛ばしているだけに見えてしまうスパークプラグですが、非常に重大な役割を担っていると同時に、最も過酷なレベルの性能を要求されている自動車部品であると言っても過言ではありません。

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