海だ!山だ! いやいや工場はいかが?――工場見学で押さえたい3つのポイント夏休み企画 工場萌え!(2/2 ページ)

» 2013年07月31日 10時00分 公開
[大澤裕司,MONOist]
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2つ、自作設備に注目せよ

 2つ目のポイントとして挙げたいのが、工場内の設備類についてです。工場には生産活動に必要な機械や道具類が数多く設置されていますが、注目したいのは工場が自分たちで作った設備です。

 生産活動に使う設備や道具の一部を自分たちで製作し、オリジナルの機械や道具類を使っているところがあります。販売されているモノと工場内製のモノの区別は、なんとなく見ただけでは分からない場合が多いですが、企業名が入っていなくて、武骨でどことなくコミカルな動きをする製造機械などがあれば、工場内で作られたモノが多いような気がします。

 「これ、工場オリジナルの機械ですか?」と担当者に聞くだけで「こやつ、デキル」と周囲の視線も変わることでしょう。

 こうした生産活動に使う設備や道具類を内製するのは、設備投資を抑えることはもちろんのこと、自社の生産技術力を高めることにもつながります。よく「日本の製造業の現場力が強い」と言われたりもしますが、まさに「必要なモノを自分たちで作り作業効率を上げる」ということは現場力そのものです。まさに日本が世界に誇る技術なのです。

 これまでの取材経験から、トヨタ自動車関連の企業は、こうした設備、道具類の内製化に非常に熱心です。トヨタ自動車は「トヨタ生産方式(TPS)」と呼ばれる生産活動の運用方式が世界的に有名で「生産現場の強さは世界一」とも言われますが、こういうところにも出ているのかもしれませんね。

 生産設備の内製機械で私が特に印象に残っているのは、アイシン・エィ・ダブリュの自動搬送装置「ドリームキャリー」です。製品を次工程まで送るのに製品の重さだけを使って運び、運び終えるとスプリングの力で元に戻ってくるという装置です。動力源を必要としないのが特徴で、江戸時代に作られた有名な「茶運び人形」の技術を参考にして開発されたそうです。

 このように、内製化された設備や道具の中には、思いもよらないモノからヒントを得て開発された驚くべきモノも存在します。工場見学時にこうしたモノに出合うことができれば、工場は創意工夫にあふれた場所だと感じられるでしょう。

3つ、玄人は工場内の表示物に注目する

 3つ目のポイントとして挙げたいのが、工場内の掲示物や表示類です。3つの中では最も“渋い”ポイントかもしれません。

 工場は要求されるコスト、品質を満たしながら生産性を上げ、なおかつ安全や環境にも配慮しながらモノづくりをしなければなりません。そのため、常に何かの課題を抱え、継続的な改善活動を行っています。掲示物に注目してほしいのは、その工場がどのような課題を抱えてどういう活動を行っているのかが分かるからです。

 掲示物は工場の生々しい現状を反映しています。何かしらの改善活動を行っていれば、活動の進捗状況や現状の成果といったものが、あちこちに掲示されています。実際に取り組まれた改善事例を紹介していることも珍しくありません。改善事例の場合は、改善前と改善後の違いを図版や写真で表していることが多いので、見学者が見ても分かりやすいはずです。

 また優れた改善を提案した作成者が、表彰された様子などが掲示物で表示されていることがあります。工場というと非常に機械的に運営されているかと思いがちですが「こういう人々の創意工夫で成り立っているんだな」と感じることができるでしょう。

 もう1つ注目すると面白いのが、表示機器です。生産ラインや設備機械には回転灯が取り付けられていることがあります。緑、黄、赤という3色のランプで構成されていることが多く、点灯している色にそれぞれ信号と同じ意味があります。緑は正常、黄は異常発生、赤は停止、という意味です。見学者にも手に取るように工場の状態が把握できるので「あの黄色ランプのところって何かあったんですか」と聞いてみると担当者のたじろぐ姿が見られるかもしれません。

動きやすい服装で

工場 「働く人がどういう努力をしているか」まで想像するだけで工場の見方は変わることでしょう

 今回は工場見学時にちょっと注意をして見てほしい3つのポイントを紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。工場見学に行く際にはぜひこれらの視点も合わせて、いろいろと話を聞いてみるといいでしょう。

 最後に工場見学時の注意点として、動きやすい服装で行くことを挙げておきます。第1のポイントの3Sではありませんが、工場は場合によっては危険な場所でもあります。万が一何か起きても自分の身を守れるよう、肌の露出を極力抑え歩きやすい靴を履いていくことをお勧めしたいと思います。親子ともに思い出に残る工場見学の一助となれれば幸いです。

Profile

大澤裕司(おおさわ ゆうじ)

フリーランスライター。1969年生まれ。月刊誌の編集などを経て、2005年に独立してフリーに。工場にまつわること全般、商品開発、技術開発、IT(主に基幹系システム、製造業向けITツール)、中小企業、などをテーマに、雑誌やウェブサイトなどで執筆活動を行っている。著書に『これがドクソー企業だ』(発明推進協会)がある。



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