シェールガス革命によって起こる化学業界の変化とは?化学業界専任キャリアコンサルタントが語る! 化学系エンジニアの転職最前線

「シェールガス革命」によって、世界でどのようなことが起きていて、中途採用にどう影響するのか。化学系エンジニアの採用動向について、お話ししたいと思います。

» 2013年08月08日 16時00分 公開
[MONOist]
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本記事はインテリジェンスが運営する転職情報サイト「DODA」の記事に加筆・修正して転載しています。



 化学業界を担当するリクルーティングアドバイザーの高村光児です。

 ここ最近、エンジニアリング企業の採用が積極的になってきています。そうした動きは「シェールガス革命」と無縁ではありません。今回は、世界でどのようなことが起きていて、中途採用にどう影響するのかをお話ししたいと思います。

シェールガス革命による勢力図の塗り替わり

 これまでポリエチレン、ポリプロピレンなどの汎用性樹脂は、石油を精製したナフサから作られていました。しかし、石油の枯渇問題への配慮から新たな原料を探し求めた結果、シェールガスという1つの原料に行きつきました。

 シェールガスは、地中の頁岩(シェール)から採掘される天然ガスのことです。今までのように石油の採掘に伴って出てくるガスではなく、水圧で岩盤に穴をあけて採取します。今までは採算に合わないと考えられていましたが、技術の進歩により大量に採掘できることとなったため価格が急速に低下することになりました。

 また、在来型の石油やガスは地中に一定の塊となって存在するため探査が難しいですが、シェールガスは頁岩を掘れば一定の割合で採掘が可能であるため比較的安定した供給ができます。今は石油や天然ガスを中東から高い値段で輸入していますが、安価なシェールガスをアメリカから輸入できるようになれば、より価格を抑えた製品作りが可能となる点から日本にとってもメリットが大きいと考えられています。日本国内の石油元売り各社もシェールガス採掘に積極的な姿勢を取っており、海外での精製工場の建設にも積極的に投資をしている状況です。

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 一方で、石油精製をメインとしてきた化学メーカーは事業転換を迫られています。原料である石油が天然ガスへ移行すると、石油精製設備はどんどん価値が低下していきます。今後はシェールガスを精製してエチレンへ転換できる設備などの建設が急務になります。また、シェールガスが安価になればなるほど、汎用樹脂の採算が取れなくなるため、汎用樹脂以外の製品、つまりは付加価値のある製品へのシフトも必要になってくるのです。

 これによって、化学系エンジニアの採用はどうなるのでしょうか。

(1)シェールガスへ積極投資をしている企業の場合

 石油元売り企業や、エンジニアリング会社が積極的に募集中の職種として、例えば地質・物理探査技術職などもありますが、主なものとしては海外プラント建設のエンジニアリング職種が挙げられます。日本国内ではシェールガスを採掘できる可能性がほとんどないため、次々に海外シフトが進んでいます。エンジニアの主戦場も海外に移っているという状況のため、英語力を有するエンジニアのニーズがあらためて高まっています。一からプラントを作り上げるので、化学分野にとどまらず、機械、電気、建築・土木領域の技術者も求められているのです。

(2)石化製品以外の原料への転換を迫られている企業の場合

 安価な原材料が入ってくると、割高な石油化学製品で売上が見込めなくなるため、各社とも、付加価値の高い製品へシフトする、もしくは人件費などのコスト抑制目的で海外展開することになります。

 「付加価値の高い製品へシフト」の例として、ここ2年ほど研究開発のポジションは募集してこなかったある総合化学メーカーから、「研究職を3名採用したい」という依頼がありました。この背景には、新たな事業分野へ進出するため、外部から研究者を採用してシーズ開拓を図っていきたいという意図があります。今後さらに採用を強化していく可能性もあるため、転職を考えている方は動向を常にウオッチしていく必要があります。

 このような業界の最新の動きを知りたい方は、DODA転職支援サービスに登録してキャリアコンサルタントにご相談ください。

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