BMWの電気自動車「i3」は軽量化を突き詰めたクルマだった!電気自動車(3/3 ページ)

» 2013年08月08日 12時15分 公開
[川端由美,MONOist]
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走行距離は130〜160km、レンジエクステンダーも用意

 最高出力125kW(170hp)/最大トルク250Nmを発揮するモーターや、制御系などのパワーエレクトロニクスは、後輪の車軸上にコンパクトにまとめて搭載した。BMWの身上である前50:後50の重量配分を貫くために、こうした設計を採用している。この構造は重心を低めることにもつながり、操縦性能も高められているとBMWはうたう。数値上のデータを見る限り、時速0〜60kmまでの加速時間が3.7秒、時速0〜100kmの加速が7.2秒と、日産自動車の「リーフ」や三菱自動車の「i-MiEV」と比べるとなかなかの俊足ぶりだ。

「i3」は後輪車軸上にモーターを搭載している。モーターの取り付け状態を車両前方から見たのが左の写真。右の写真は、車両後方から見た状態である(クリックで拡大) 出典:BMW

 i3のコンセプトカーが発表された時点では、Samsung SDIとRobret Boschの合弁企業であるSB LiMotive製のリチウムイオン電池セルを採用する予定だった。両社の合弁は解消されたが、市販車の電池セルも、現在はSamsung SDIの100%子会社となっているSB LiMotive(Samsung SB LiMotive)から調達している。電池パックとその制御/冷却システムはBMWの内製となっている。電池セルの調達については、リチウムイオン電池の技術発展目覚ましいこともあり、常に検討を続けているという。

急速充電にも対応。ドイツ本国向けの仕様では「コンボ」を使用する(クリックで拡大) 出典:BMW

 ワールドプレミアに持ち込まれていたi3は、ドイツ本国向けの仕様で、家庭用電源を使って約6時間でフル充電できる他、欧米で推進されている急速充電方式「Combined Charging System(コンボ)」を使えば30分で電池容量の80%まで充電できる。一方で、日本向けモデルには、CHAdeMO(チャデモ)方式に対応するなど、地域ごとに発達した充電インフラを活用する考えだ。

 満充電状態からの走行距離は130〜160km。走行モードで「ECO PRO」モードを選べば最大20km、「ECO PRO+」モードであればさらに最大20km、走行距離を延長できる。加えて、排気量650ccの2気筒の発電用エンジン(最高出力25kW)を搭載する「レンジエクステンダー」もオプションで用意されている。レンジエクステンダーを使えば、走行距離は最大で300kmまで伸ばせる。

レンジエクステンダーは、モーター横の空きスペースに搭載されている。上で紹介した、レンジエクステンダーなしモデルにおけるモーターの取り付け状態と比較して確認してほしい(クリックで拡大) 出典:BMW

 運転席正面とダッシュボード中央には、情報表示用の液晶パネルが設置されている。運転席正面の液晶パネルはデジタルメーターの役割を果たしており、速度や走行可能な距離の残りなど運転に必要な情報が表示される。一方、ダッシュボード中央の液晶パネルには、カーナビゲーション、オーディオ、BMWのテレマティクスサービス「ConnectedDrive(コネクテッド・ドライブ)」などの操作系が集約されている。

「i3」の前部座席(左)と、運転席正面とダッシュボード中央に設置されている情報表示用の液晶パネル(クリックで拡大) 出典:BMW

 また、iシリーズ専用のアプリをスマートフォンにダウンロードすれば、スマートフォン経由で充電状況を把握したり、充電ステーションの位置を表示したりすることができる。

 「i3は移動するための手段だけではなく、携帯電話機のように交流する機械とも言えます」とライトホーファー氏が言う通り、実際に運転席に座ると、手で触れて目で見る部分が未来的であることにより、既存の内燃機関車とは違う次世代のクルマという強いメッセージを打ち出している。

 i3の安全装備は、BMWの流儀にのっとる。走行速度が時速60kmまでであれば先行車両などとの衝突の可能性を知らせるとともにブレーキをアシストする機能や、追従走行を行うアクティブ・クルーズ・コントロール、駐車支援システムなど、都市部で使うのに便利な運転支援機能が充実している。



 i3は、2013年内のドイツ本国での発売を皮切りに、2014年の早い段階で米国、中国、日本などの地域に上陸する予定である。ドイツでの価格は3万4950ユーロ(約450万6000円)で、レンジエクステンダー付きモデルは3万9450ユーロ(約510万7000円)となる。補助金が交付されるであろうことを予測すれば、リーフ、i-MiEVといった国産EVと、Tesla Motorsの「Model S」といった輸入EVの間に納まる価格帯になりそうだ。

筆者紹介

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川端由美(かわばた ゆみ)

自動車ジャーナリスト/環境ジャーナリスト。大学院で工学を修めた後、エンジニアとして就職。その後、自動車雑誌の編集部員を経て、現在はフリーランスの自動車ジャーナリストに。自動車の環境問題と新技術を中心に、技術者、女性、ジャーナリストとしてハイブリッドな目線を生かしたリポートを展開。カー・オブ・ザ・イヤー選考委員の他、国土交通省の独立行政法人評価委員会委員や環境省の有識者委員も務める。



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