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» 2013年08月26日 11時00分 UPDATE

【一人メーカーことはじめ】LEDフロアスタンドを作ろう(1):今日からあなたも一人メーカー!? まずは照明器具の計画から (1/2)

この連載では、一人メーカーである筆者がLEDフロアスタンドを例に「自分が欲しいモノを作る方法」について解説する。第1回は、照明器具の計画について。

[佐久間茂/キテラス,MONOist]

 ここ数年、特に2013年に入ってから限りなく個人事業に近い規模のメーカーの活躍が注目されています。「メーカー」という存在の定義は、製品の「企画」「開発」「設計」「製造」「販売」など一連の仕事を行う組織のことではないかと思います。PCとソフトウェアのコストパフォーマンスが桁違いに上がっていること、インターネットの普及によって組織を超えての情報流通が容易になった背景があり、メーカーに必要な仕事のほとんどがアウトソーシングしやすい環境が整ってきていることが、今日の“一人メーカー”続出状態の大きな要因になっているのでしょう。

 私自身も一人メーカーです。この連載では、私が生業(なりわい)として作っている照明器具を例にして、“一人メーカーのやり方”を紹介します。ここでは実際に、LEDフロアスタンドの設計や製作をしていきます。

一人メーカーのノウハウ

 私は2010年に照明器具の光学設計と機械設計を受託する会社を起こしました。主に美術館・博物館向け展示照明用の照明器具に関わっています。この業界で使われる照明器具は同じ形のモデルを一度に生産する量が少ない場合が多く、組み立てを含めて私自身で部品加工する場合もあります。

 当然ながら、そこで使われる部品はそれぞれ専門の加工屋さんで作ってもらっています。加工自体は好きなのですが、お金をいただけるだけの質を確保できるリソースがないからです。実は、この「数が少ない」という条件が、いろいろと部材の調達や部品の設計に制約を与えるもので、この制約を乗り越えるノウハウが今の仕事を続けて行くための武器の1つになっています。こうしたノウハウは一人メーカーをやっていく上で大切なところだと私は考えています。

 起業前にさかのぼりますと、学生を終えてから独立するまでの間、約18年間は会社勤めをしていました。性格が災いしてか5つもの会社にお世話になりました。ひたすら深謝です……。その中で一貫して機械設計屋を務めてきました。お世話になった5つの会社では、写真現像機、コピー機、レーザー発振器、そして照明器具といろいろな製品に携わることができました。そして、このときの経験が、とても大きな財産となりました。

「モノ」を作るために必要なこと

 さて人が「モノ」を作ろうとするとき、ほとんどの場合、何らかの果たしたい目的があります。この果たしたい目的と現状にはギャップがあり、それを埋めるものがこれから作る「モノ」となります。「モノ」を作るのに必要となる情報を生成そして編集する作業を総じて設計と呼べるのではないかと考えます。

yk_ledmakers_01.jpg 図1 目的と現状のギャップを埋める

 では「モノ」を作るために、最初に必要となるのはどのようなことでしょうか?

 それは、

  • 現状に対する何らかの不満
  • それを解消した「あるべき状況」をしっかりと捉えること

 です。

照明器具の場合

 それでは今回のテーマである照明器具の場合は、どうでしょうか。

yk_ledmakers_02.jpg 図2 タスク&アンビエント照明の例(写真提供 YAMAGIWA)

 例えば居間で読書をするときに、手元が暗く感じるのと、居間が窮屈に感じられることに不満を持っているとしましょう。最高の解決策としては、居間を広くし、直射日光が入らないような天窓を作ることです。しかし、これにはそれ相当の費用が掛かるので、解決策としてはちょっと外しましょう。

 このようなときは、天井側にフワッとした“光のたまり”を作るようにして部屋を広く感じさせるという照明手法があります。そうした光はその空間を認識したりするには十分な明るさがありますが、その下で読書などの作業をするにはちょっと明るさが足りません。こうした上向きな光とセットで手元への光も組み合わせて使う照明手法は、「タスク&アンビエント照明」などと呼ばれ、オフィスやリビングなどで使われています(図2)。

 ここまでで、課題とあるべき状況の2つが明確になりました。

  • 課題=「居間の広さが感じられない。手元が暗い」
  • あるべき状況=「読書するのに十分な手元の明るさと、広さを感じる空間」

「モノ」の作り方

 上記2つの状況を埋めるためには、どのような「モノ」を作ればよいでしょうか? 少々直球な感じですが……、「天井方向に対して上向き」で、かつ「手元が十分明るくなる光」を実現できるよう照明器具を作ればよさそうです。以降は、そのようなイメージの「モノ」を実現していくようにします。

照明器具の計画図を描く

 いきなりCADで計画図を描き始めてもよいかもしれませんが、その場合、「思考するスピード」と「それを記録するスピード」とのギャップが大きくなります。本当の構想初期には、手描きでスケッチするのがよいでしょう。

 私はちょっとかわいそうなくらい(笑)絵が下手なので、私のスケッチでは「例にしていいの?」思われてしまうかもしれません……が、今回のような場合、少なくとも構造や大きさ、そしてやりたいことが伝わる絵であれば、その役目を十分果たせると思います。

yk_ledmakers_03.jpg 図3 私の描いたスケッチ:画像クリックで拡大します

 図3のように、LEDフロアスタンドの大まかな構造を考えてみました。

大事な指標「明るさ」を決める

 今回作る「モノ」は「オブジェのようなモノ」ではなく、「用をなすモノ」ですから、その達成目標を大まかに決めておく必要があります。「用をなすモノ」にはさまざまな性能指標がありますが、今回のお題は照明器具ですので、何と言っても「明るさの指標」が大事になります。

 光が当たっている箇所の明るさの指標に「照度(ルクス:lx)」があります。これは、SI単位系に組み込まれています。

 一般的な環境ではどの程度の照度が必要とされているのでしょうか。照明に関するJIS規格(日本工業規格)である「JIS Z 9110」(照明基準総則)には、工場や事務所などさまざまな環境についての推奨照度が掲げられていますが、今回は「住宅向け」かつ「居間の部分」だけを抜粋します(表1)。

yk_ledmakers_h1.jpg 表1 照明基準総則に基づく推奨の明るさ

 いま検討している照明器具の光の目的は、「天井を照らすこと」と「手元を照らすこと」です。

 天井を照らす方に関しては、その照度の定義はちょっと難しいところです。もしこの照明だけで居間に必要な照度を確保するだけの光量を求めようとすると、天井の反射率なども考慮に入れて複雑な計算をしなくてはなりません。

 最近ではこうした照度計算をするソフトもフリーでよいものがありますが、このソフトの中で計算をさせるためにその照明器具の配光や全体光量など幾つもの条件を特定のフォーマットで記述しなくてはならず、それほど手軽というわけではありません。

照度計算ソフトについて

照度計算をするソフトにはいろいろとあります。古くは各照明器具メーカーが自社の照明器具を照明計画の中に組み込みやすくするために専用の照度計算ソフトを無償で提供していました。

その流れが大きく変わったのは、「DIALux」というソフトが出てきてからです。このソフトは、照明器具からの配光具合を定義する業界標準のIESデータを読み込むことができます。ソフトの中で部屋を定義し、データを持った照明器具を配置することにより照度計算が簡単にできます。



 こうしたこともあり、天井向けの照明に関しては、照度の明確な設計仕様を決めないでおきましょう。おおよそ「10W」程度のLEDなら、十分に明るさを感じられると私は思います。「色温度」は「明るさ感」と「落ち着き感」のバランスを考えると「4000K(ケルビン)」ぐらいとします。

 もう1つ、手元を照らす方法に関しては、今回は読書用ですので、「照明器具先端から1mの距離で」「φ300程度の照射範囲内で」「500lx」は欲しいところです。

 こちらの色温度に関しては、ゆっくりと読書する事を目的とするので3000K程度が最適かと思います。また3000K付近であれば、「演色性」に優れた製品が各社から出ているので、割と容易に質の高い光を作ることができます。

 「照度」「色温度」など上記で出てきた言葉や単位については、次のページで説明します。

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