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» 2013年08月29日 10時00分 UPDATE

【短期集中連載】ドングルPCが実現するスマート社会(2):「Chromecast」とは何か? 世界で動き出したドングルPCビジネス (1/3)

2013年6月に開催された「COMPUTEX TAIPEI 2013」では、ドングルPCの扱いは非常に小さなものだった。まさかそれが、たった一夜にして世界中の注目の的になろうとは――。Google(グーグル)が同年7月のプレスイベントで発表した新製品「Chromecast(クロームキャスト)」。なぜ、GoogleはChromecastを市場に投入したのか。本稿でその狙いと、Chromecastが開くドングルPCの未来について解説する。

[金山二郎(イーフロー),MONOist]
Google Chromecast

 米国時間、2013年7月24日に、Google(グーグル)のプレスイベントが催されました。プレス側としての主な期待は新型「Nexus 7」のスペックでしたが、期待と言いつつも、内容は想定の範囲内でした。しかし、プレス側が全く予想していなかった新製品の発表が後に続いたことで、会場は色めき立ち、たちまちにして世界中の話題をさらいました。その突如として現れた台風の目こそ、本連載のテーマであるドングルPC(スティックタイプの小型コンピュータ)を利用した新製品「Chromecast(クロームキャスト)」でした(図1)。

 Chromecastにより、ドングルPCはにわかに脚光を浴びることになり、今後の展開も大きく変わっていくと考えられます。今回は、Chromecastの機能とGoogleの狙い、ドングルPCの今後について解説します。


Chromecast 図1 「Chromecast」のオンラインページ。米国内では既に販売が開始されている。35米ドルという価格にも注目が集まった

Chromecastとは何か

 Chromecastは、近年にない注目度をもって迎えられました。プレスイベントから時をおかずして、世界中のメディアがこの発表を大きく取り上げました。GoogleやApple(アップル)といった企業の場合、IT系のWebマガジンやブログのみならず、一般向けの新聞などもその動向に注目しています。Chromecastについても、日本の新聞などもGoogleのハードウェア戦略の一部という位置付けで紹介されました。

 Chromecastの機能的な詳細については、既に分かりやすい記事がたくさんありますので、他稿に譲りたいと思います。端的に表すならば「『Google Cast』という映像ストリームのミラーリングを主たる機能とする、Google製のドングルPC型Androidデバイス」となります。

 Google Castが主たる機能と言ってしまうと、米国で最大手のビデオ配信サービス「Netflix」に怒られてしまうかもしれません。Chromecastは、Netflixや音楽配信サービス「Pandra」に対応していますし、そのサービス一覧をぱっと見た限りでは、ポータブルなSTB(Set Top Box)と捉える人も多いでしょう。

 しかし、このデバイスが誰にとってどんな意味を持つのか、それは搭載サービス一覧で静的に決まるものではありません。

なぜChromecastなのか

 ここで、Googleのビジネスについておさらいします。Googleほど、その会社自身について話題にされるところも珍しいと思いますが、クラウドサービスやスマートフォン、ドングルPCまで手掛けながら、広告を本業とする、GoogleはIT業界においては異端の会社です。従って、そのGoogleが投入するサービスやデバイスは、全て広告収入に寄与するという説明が可能のはずです。Chromecastもその例外ではありません。

 そういう見方で搭載サービスを考えると、端的に目にとまるのは「YouTube」です。YouTubeをTVで楽しみたいというエンドユーザーの欲求は強く、それは「PS3(プレイステーション3)」などのゲーム機や「AppleTV」といったSTB、そして、TV自身にも積極的に採用されていることからも、うかがい知ることができます。Googleが、YouTubeなどの動画サービス向けに「動画広告向け AdWords」という広告サービスを提供していることは、YouTubeを少しでも利用したことのある方ならご存じでしょう。すなわち、ここに広告収入を拡大するという大きな動機付けが存在します。

 申し上げた通り、YouTubeをTVで楽しむための方法は既に何通りも存在します。「Google TV」という動画サービスに特化した自社製品まで持っていて、もちろんYouTubeが利用できます。なぜ、わざわざChromecastが必要なのでしょうか?

 広告という観点で考えると、答えは明快です。広告は人の目に触れなければ意味がありません。Chromecastは安く、数が出る製品です。すなわち、広告を目にする機会を大きく増やせるという点で、投入に値する優秀な製品なのです(図2)。

Googleの広告戦略 図2 Googleの広告戦略。Chromecastによる自社広告枠の拡大はGoogleの広告ビジネスに直結する

 Google TVとの類似点を、Googleが意識していなかったと言えばウソになるでしょう。さすがに、「ああ、かぶってるな〜」くらいのことは考えたに違いありません。ただし、それも広告という目的を軸にした分析と判断がなされたことでしょう。Google TVが単体として成功していれば、話は違ったかもしれません。しかし、どのデバイスも販売がぱっとしないか、YouTubeプレーヤーの品質がぱっとしないかのいずれか、あるいは両方という厳しい現実の一方、35米ドルという「何だか分からないけれど、取りあえず買ってみるか!」と思える安さのデバイスを、販売しようと思えばできる世の中になったときに、ラインアップの問題は二の次にされたということでしょう。

 新しい広告媒体という目的に、1つだけ付け加えるならば、スマートフォンとの連携です。誰が何と言っても、スマートフォンは他の家電製品よりも飛び抜けた影響力を持っています。GoogleがAndroidを自ら手掛けた理由も、その大きな力を自社の事業、すなわち広告に生かそうと考えたからです。スマートフォンにはその画面の小ささという解決できない課題があります。スマートフォンで利用しているコンテンツをTVの画面で楽しむ道筋を作ることは、スマートフォン利用の新しい一歩です。広告事業のための最重要デバイスであるスマートフォンの補佐も、Chromecastの重要な役割といえます。

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