パナソニックの20型「4Kタブレット」は“メイド・イン・ジャパン”製造マネジメントニュース(2/2 ページ)

» 2013年09月06日 19時15分 公開
[三島一孝,MONOist]
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高い生産技術が必要に

 タフパッド 4Kは、高精細・高性能の一方で堅牢性や軽量、薄型化を実現するため、生産方法なども含めて多くの技術的な挑戦を行っている。例えば、薄さと堅牢性を実現するために、従来ではカバーガラスと筐体を両面テープで接着していたのを、ホットメルト(熱を掛けることで溶融する接着剤を用いて接着すること)方式を用いて直接接着し、強度を約3倍に高めた他、薄型化を実現したという。

 ホットメルト方式によりカバーガラスに直接ボンディングする方式は、スマートフォンでは多く採用されているが、タブレット端末では画面が大きいため難しい。パナソニックグループ内では初めてタブレットに採用したという。

ホットメルトで堅牢性 ホットメルト方式を採用し薄型化とともに堅牢性を実現(クリックで拡大)

 また、内部には堅牢性を確保するためマグネシウムフレームを採用しているが、これも薄型化を実現するため、一部でパーツを貫通させる設計としている。さらに筐体はグラスファイバーを採用し軽量化を実現。従来技術のまま開発した場合は、厚みは17.4cmとなっていたが、これらの技術を組み込むことで12.5cmに削減することに成功したという。

国内の技術力を生かし神戸工場で生産

筐体はグラスファイバー 筐体はグラスファイバーを採用。カバーガラスに直接ボンディングすることで薄型化を実現(クリックで拡大)

 これらの新たな技術的な挑戦を形にするために同社では、タフパッド 4Kの生産をPCのマザー工場である神戸工場で行う。神戸工場はマザーボードの実装工程から、組み立て工程まで一貫生産する他、品質保証部門、コールセンター部門、修理サービス部門など多彩な機能を併せ持つ生産拠点だ(関連記事:「レッツノート工房」に見るパナソニックの強さ――同質化競争を逆手に取れ)。

 同社ではPCの提案において、1台からのカスタマイズなどに応じる「一品一様」提案や、ソフトウェアやサービスなどを組み合わせて納品するソリューション提案などで差別化を進めているが、これには神戸工場の高いモノづくり能力が寄与している。この生産能力を生かして、タフパッド 4Kも神戸工場で生産ラインを立ち上げるという。

 パナソニック AVCネットワークス社 ITプロダクツ事業部 プロダクトセンター(神戸工場)所長の清水実氏は「ホットメルトによるボンディングなどは、工場と技術部門、既に活用しているスマートフォンの開発部門などで協力して、新たな接着剤を開発し、生産工程を確立した。生産における課題をどう乗り越えるか、という点を多彩な発想で解決できるのは、自社開発、自社生産であることとともに、国内工場だからこそだ」と語る。

 タフパッド 4Kは、2013年9月6日から独ベルリンで開催されている欧州最大の民生機器展「IFA2013」でも発表され、欧州と米国でも販売を行うことが明らかにされている。タブレット端末やスマートフォンは、日系企業が自社生産するケースは少なく、外部のEMS(受託生産サービス)企業に委託するケースが主流。タブレットとしては貴重な「メイド・イン・ジャパン」製品が世界に挑戦することになる。

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