ワクワクする心が燃料となる リーン・プロダクトアウトとは?マイクロモノづくり概論(2)(2/2 ページ)

» 2013年09月20日 08時00分 公開
[三木康司/enmono,MONOist]
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「ワクワク」する心こそがリーン・プロダクトアウトを継続させる燃料である

 「リーン・プロダクトアウト」にはもう1つの要素が必要である。それは、前回のマイクロモノづくり概論(1)でも紹介したように、「自分が心からワクワクすること」を製品化するということである。

 リーン・プロダクトアウトが「プロダクトアウト」である理由が、ここにある。市場や外部にある競合品を横目に見ながら自社製品開発するのではなく、開発者自らが、自分の“心の内”にある思いを製品化させ、自分自身が一番のユーザーとなる。

 自らが一番欲しいプロダクトを開発するためには、それこそ、開発者自身が製品開発するために「ワクワクしていること」が絶対的に必要なのである。

 「ワクワクすること」はどんな金銭的な報酬をも超えるモチベーションを技術者にもたらし、夜も昼も、週末も休日も関係なくその開発者を開発へと駆り立てることになる。そうして開発を続けるうちに、最初に開発したプロトタイプモデルが取るに足らない質感のものであっても、「ワクワク」から生み出される圧倒的な情熱で半年から1年も開発を続けることにより、驚くほどの製品の質感が向上されるのである。

 この経験は、われわれが町工場から自社製品を開発するコンサルティングの中で経験してきた事例のような、われわれがその企画からクラウドファンディングまでをサポートしたプロダクト全般にいえることである。

 先ほど紹介した五光発條のSpLinkと、基板設計業のケイ・ピー・ディによる基板アート「Healing Leaf」(「基板設計エンジニアが作る美しい基板アートで、電機業界不況に挑む」)、精密加工業の光精工によるトレーニング器具「くるくるパンプアップ」(「“筋肉バカ”な精密加工屋さん、かわいい筋肉育成グッズを開発する 」)、プレス・機械加工業のニットーによるiPhoneカバー「iPhone Trick Cover」(「町工場発! 面白ガジェットとクラウドファンディング 」)の4事例である。

 最初の試作品は疑問が浮かぶような製品であっても、開発者自身が“ワクワクオーラ”を放出しながら2カ月、半年、1年と黙々と開発を続けることにより、驚くべき製品の質感を生み出すことになる。

ワクワクオーラをまとったマイクロモノづくり製品は、クラウドファンディングとの相性が極めてよい

 このようにリーン・プロダクトの手法を用いて開発された、マイクロモノづくり製品は、開発者の思いがこもっているだけに、クラウドファンディングに掲載してみると、非常に反応がよい。

 その結果とも言えるのが、先ほども紹介した4点の製品だ。これらは全て、クラウドファンディングで資金調達を完了している。

クラウドファンディングでの成功事例

 しかも、目標金額をはるかに超える200%、場合によっては340%までの資金調達率になっている。既にお気付きだと思うが、クラウドファンディングでは、「いかに一般ユーザーの共感を多く集めるか」ということが重要な要素である。ワクワクがモチベーションとなるマイクロモノづくりで生まれた製品は、共感を多く集める素地が既にある。後は、写真やテキスト、また動画などを使って、開発者の思いを込めたストーリーを表現すればよいだけだ。

 よって、クラウドファンディングを用いて、資金調達を検討されている中小企業の方には、まずこのリーン・プロダクトの手法を用いた製品開発を勧めている。(次回に続く)

Profile

三木 康司(みき こうじ)

1968年生まれ。enmono 代表取締役。「マイクロモノづくり」の提唱者、啓蒙家。大学卒業後、富士通に入社、その後インターネットを活用した経営を学ぶため、慶應義塾大学に進学(藤沢キャンパス)。博士課程の研究途中で、中小企業支援会社のNCネットワークと知り合い、日本における中小製造業支援の必要性を強烈に感じ同社へ入社。同社にて技術担当役員を務めた後、2010年11月、「マイクロモノづくり」のコンセプトを広めるためenmonoを創業。

「マイクロモノづくり」の啓蒙活動を通じ、最終製品に日本の町工場の持つ強みをどのように落とし込むのかということに注力し、日々活動中。インターネット創生期からWebを使った製造業を支援する活動も行ってきたWeb PRの専門家である。「大日本モノづくり党」(Facebook グループ)党首。

Twitterアカウント:@mikikouj

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