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» 2013年09月26日 09時00分 UPDATE

法律家が見るサプライチェーンの知財侵害リスク(1):グローバルサプライチェーンにおける知的財産盗用のリスク (1/3)

全世界にサプライチェーンが広がる中、サイバーセキュリティに対するリスクは急速に高まっています。本連載では、知財の専門家が製造業のサプライチェーンに潜む情報漏えいリスクにどう向き合うかについて紹介。第1回では、企業の知財保護を支援するNPO法人CREATe.orgが、情報漏えいがどのように起こるかを解説します。

[パメラ・パスマン/CREATe.org.代表、名取勝也/CREATe.org.日本代表,MONOist]
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 サプライチェーンのグローバル化が進む中、知的財産(Intellectual Property: IP)盗用のリスクは高まる一方です。最適地生産を目指し、自社工場と外部委託工場、調達先の現地化など、サプライチェーンの鎖の輪はより複雑で高度に絡み合うようになっています。その中で知財を保護し、情報漏えいのリスクを下げるのには、大きな負担を伴い、十分な対策が取られているとはいえない状況に陥っています。

 本連載では「サプライチェーンにおける知的財産を守る」という観点から、知財の専門家たちがグローバルサプライチェーンにおけるリスクがどこにあるのか、を解説します。第1回は、企業の知財保護を支援するNPO法人であるわれわれCREATe.orgが、サプライチェーンにおける知財保護とリスク回避のための対策案を紹介します。



無策企業は犯罪多発地域でドアを開け放し!?

 想像してみてください。多発する泥棒に警察の対応が追い付かない地域に住んでいるにもかかわらず、家のドアを開けっぱなしにし、宝飾品やステレオやテレビが丸見えになっているとしたら……。

 多くの企業は、知財の盗用という「窃盗行為の脅威」が増大する中で、同じような対応をしているのです。サプライチェーンがグローバル化するということは、治安のいい日本の常識が通用しないということを意味しています。

 実際に、多くの企業経営者は、この問題について懸念してはいるものの、いまだに営業機密、顧客リスト、設計図、データ、調査資料、事業計画を守るために意味のある対策を取れているとはいえない状況です。これらの無形資産は、企業の競争力への影響力を高めていますが、その根幹が大きなリスクにさらされているといってもいいでしょう。もしこれらの情報が漏えいすれば競争力を損なうだけでなく、風評リスク(レピュテーションリスク)も背負うことになります。

 これらの問題に対し、規制や法律による知財保護に頼るだけでは、十分ではありません。グローバル化が進む中でさまざまな国々での生産や調達、取引が行われています。企業が製造や資材調達を行っている世界各地の多くの地域では、法律や規制による仕組みがその役割を果たせるレベルに達していないからです。

 一方、情報通信技術が進化する現在、知財盗用の被害を完全に避けることは難しくなってきています。状況によっては被害額は莫大なものになる可能性があり、企業にとってセキュリティギャップの解消に取組むことが一層喫緊の課題となっています。特に製造業では、デジタル化による効率化が進み、資産をデジタル形式で保管することが増えているため、リスクが高まっています。

アジア太平洋地域の知財被害が最大

 被害は深刻です。IDCとマイクロソフトの共同調査「The Dangerous World of Counterfeit and Pirated Software (PDF)」によると、情報漏えいや侵害による推定被害額は3050億ドルに達する可能性があるとしています。

情報漏えいなどによる地域別被害額 IDCとマイクロソフトの共同調査による情報漏えいなどによる地域別被害額。アジア太平洋地域におけるデータ侵害の被害額は、他の地域に比べて大きい(出典:IDC)(クリックで拡大)
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