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» 2013年09月27日 11時00分 UPDATE

3次元って、面白っ! 〜操さんの3次元CAD考〜(27):レンタルのメカCADってどう思いますか? (1/3)

数は少ないながらも、レンタル契約のメカCADが登場している。それが「高いのか、安いのか」は、考え方次第?

[水野操 テクノロジーコラムニスト/3D-GAN,MONOist]

 クリス・アンダーソン氏の「Makers」の日本語版が出版されてから、早1年。相変わらず、3Dプリンタブームは続いています。私自身も取材を受ける機会は減らず、つい先日はテレビにも出演しました。

 どうやら、「急激なブームが起きた後は、何も残らなかったら……」という心配は無用でしょう。最近、ようやく3Dプリンタに関するガイド本も出そろってきていますし、3次元出力サービスも充実してきました。

 今後、3次元データを扱う製造業の人たちも、それ以外の業種の人たちも、3Dプリンタを何らかの形で、もっともっと活用するようになっていけば、よい意味でユーザーベースが広がり、可能性も広がる、と言ったら楽観的過ぎるでしょうか?

3次元データ作りの2つのハードル

 ブームの当初あったような「魔法の箱」的な伝えられ方は影を徐々に潜めています。「3次元データなるものが必要だ」という認識と、「全く経験のない人にとって3次元データ作りは大変だ」という認識も広がりつつあります。

 さて「3次元データを作る」ということには、2つのハードルがあると私は考えています。

 1つは「スキルのハードル」です。一般の人が、日常的に3次元(3D)で何かを作るという経験はありません。製造業の人たちも、その全員が3次元データを作っているわけではありません。それに私がCADベンダーに在籍した頃から現在まで、「2D to 3D」は大きなトピックです。

 しかし、スキルのハードルの問題は、既に解決に向かっているのかもと思っています。そう感じるようになったきっかけは、前回の記事でもお伝えした子ども向けの3次元CAD講座です。小学生の子どもたちが、ごく自然に、3次元モデリングのツールに慣れ親んでしまうのを目の当たりにしたのです。もう少し年上の子たちでも同じようです。2013年の9月からある私大で機械系の3次元CADを教えるようになったのですが、初日にオリエンテーションを兼ねて触らせてみると、皆さん覚えが早いのです。

 3次元CADに関するきちんとした教育体制があれば、若い世代の人たちが増えるにつれて、「スキルのハードル」の問題は自然と解消していくのではないかと思います。

 さてもう1つは、「ツールのハードル」です。要は、「使いやすい3次元モデラーに容易にアクセスできること」ということです。こちらについても、お手軽に3次元モデリングを楽しむ環境は整いつつあり、この問題についても解消に向かっていると思います。

 3次元CGは、以前から既に、安価もしくは無償で比較的機能が充実したソフトウェアがいろいろありました。一方、3次元CADは、“お気軽ツール”のバリエーションが、それほど多くありませんでした。

 ただ、ここのところで無償CADがいろいろ登場してきています。オートデスクの「Autodesk 123D Design」(関連記事:「あの無償3DCADのその後 ――もっとCAD初心者寄りに 」)や「Tinkercad」、PTCの「Creo Elements Direct Modeling Express」、つい先日リリースされたRSの「DesignSpark Mechanical」(関連記事:「RSが無償3次元CADに参入――CAD技術者もそうでない人も構想設計をより手軽に」)などです。ある特定のものに特化したCADアプリであれば、3Dプリントの出力サービスサイトで見かけることもあります。この手の無償ツールは、今後も引き続き増えてくるのでしょう。

小さな事業視点からのCADライセンス

 さて“週末の趣味”ではなく、“仕事で”3次元CADを使いたいという個人や小規模な事業にとって、現状は、まだ十分な環境とはいえないかもしれません。

 最近は私も、3次元CADの導入について相談をお受けすることが少なくないのですが、やはり、「ライセンス費用が理由で、二の足を踏んでいる」といったケースがよくあります。そうかと言って、設計業務で無償ソフトを使うというわけにもいきません。それに無償ソフトの場合には、教育体制もありませんし、機能的にも本格的な設計には向きません。

 「ビジネスにおける設計で使うこと」ということをあれこれ考えていくと、結局、なんだかんだで、「最低限、100万円クラスのメジャーなミッドレンジCADがほしい」という話になるものです。30万〜50万円クラスの3次元CADもあります。モデリングの機能的にも通常の設計を行う上で問題はありません。ですが、「できれば、機能的に充実し、“こなれたツール”を使いたい」と考えるのは正直なところであって、さらに解析・シミュレーションまで踏み込んだり、顧客や協力会社との取引まで考えたりすると、やはり、「業界でメジャーなツールを……」という話になってきます。

 とはいえ、事業がスタートアップ段階だったり、零細事業(私自身もそうですが)であったりする場合、やはりふところ具合に余裕があるとはいえず、数十万円のソフトウェア1本買うのすらきつい選択だったりします。それに、1年365日ずっとCADを使うわけではありません。「極限まで初期投資を抑えたい」という思いは、特に個人・小規模事業主には誰にもあるのではないでしょうか。

 そんなときに役に立つライセンスが、「サブスクリプション方式」だと思っています。CADベンダーはよく、単なる年間保守費用のことをサブスクリプションと呼んだりますが、そちらと誤解しないでください。ここで、サブスクリプションと呼ぶのは、「ライセンスのサブスクリプション」、つまり「一定期間限定のライセンス契約」です。CAD業界の中では、分かりやすく「レンタル方式」と呼ばれることも多いようなので、以降は「レンタル」としましょう。

 私自身もさまざまなクラウドベースのサービスを使用していますが、その課金方式はほとんどが「月額ベースのチャージで自動更新」、または「年間契約で、少しだけ割安になって、自動更新」というものです。

 今や、アプリケーションも「購入する」というイメージではなく、「契約期間中の使用料を払う」というのが当たり前になってきています。まあ、もっともソフトウェアは、決して「ものを買っている」のではなくて、あくまでも「使用する権利を買っていたにすぎない」のですが……。

 また実際、全てのアプリがクラウドで動いているわけではなく、ソフトウェアをPCにダウンロードし、データのやりとりだけをクラウドでというものも多いと思います。ただし将来は、ソフトウェア自身もクラウド上で動かすことが増えてくるでしょう。

 業務用のクラウドベースのソフトウェアでは、例えばAdobeのクラウドデザインツール「Creative Cloud」があります。私も現在、年間6万円(月5000円)を払ってCreative Cloudをレンタルし、必要なソフトウェアだけを使用しています(関連記事:「Creative Suiteシリーズがアップデート終了」)。

 クラウドサービスではない従来ライセンスの「Creative Suite」の場合には、新規パッケージを買うとそれなりの価格になってしまいましたし、単品で買うと割高になりました。とはいえ、必要なものを単品で買うしかなかったのです。それが、レンタル形態になることで、私個人としてはライセンスが扱いやすくなり、費用も負担しやすくなったと感じています。いらなくなったら更新しなければいいだけですし、常に最新バージョンも使えますしね。

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