ホンダの新ハイブリッドシステム「i-DCD」、欧州と日本の技術融合により実現エコカー技術(1/2 ページ)

ホンダの新型「フィット ハイブリッド」に搭載されている1モーターハイブリッドシステム「SPORT HYBRID i-DCD」は、欧州が得意とするDCT(デュアルクラッチトランスミッション)と、日本が先行して開発を進めてきたハイブリッドシステムの技術融合によって実現した。

» 2013年10月10日 07時00分 公開
[朴尚洙,MONOist]
「i-DCD」のDCTのカットモデル

 ドイツの駆動部品メーカーSchaeffler(シェフラー)の日本法人・シェフラージャパンは2013年10月4日、東京都内で会見を開き、ホンダの新型「フィット ハイブリッド」の1モーターハイブリッドシステム「SPORT HYBRID i-DCD(以下、i-DCD)」に、シェフラーの部品/技術が採用されたと発表した。

 新型フィット ハイブリッドのJC08モード燃費は36.4km/l(リットル)で、電気自動車やプラグインハイブリッド車を除く国内の量産車で最も良好な燃費を達成している。その最大の立役者であるi-DCDは、ハイブリッド車に最適化した排気量1.5lのアトキンソンサイクルエンジンと、出力22kWのモーターを内蔵する7段変速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)、リチウムイオン電池を用いたIPU(インテリジェントパワーユニット)などから構成されている(関連記事:新型「フィット ハイブリッド」燃費世界一の立役者、「i-DCD」の仕組み)。これらのうち7段変速DCTに、シェフラーの部品/技術が採用された。

シェフラージャパンの四元伸三氏 シェフラージャパンの四元伸三氏

 シェフラージャパンのマネージング・ダイレクター兼代表取締役で自動車事業部プレジデントを務める四元伸三氏は、「燃費No.1を目指すホンダのハイブリッドシステム開発の取り組みを支援するため、ドイツ本社のシェフラーと日本法人のシェフラージャパンを挙げて協力した。シェフラーが欧州以外の地域での事業成長を目指す中で、シェフラージャパンには、単なる“日本支社”ではない存在感や実力が求められている。今回のi-DCDに対する開発貢献は、シェフラージャパンが掲げる『West meets East』型イノベーションの成果の1つと言えるだろう。欧州が得意とするDCTと、日本が先行して開発を進めてきたハイブリッドシステムの融合によって新たな進化を実現できた」と語る。

 シェフラーは、DCTだけでなく、マニュアル変速機(MT)、自動マニュアル変速機(AMT)、自動変速機(AT)、無段変速機(CVT)といったほぼ全ての方式のトランスミッションに部品を供給している。中でも、i-DCDが用いている、最大トルク300Nm以下のパワートレイン向けの乾式DCTについては、同社の部品が広く採用されているのだ。

 2012年のDCTの生産台数は380万台(全世界のトランスミッション生産台数の5%)。このうち約300万台にシェフラーの部品が用いられている。DCTの市場は今後も拡大し、2016年には820万台(同9%)、2020年には1200万台(同12%)になると予測されている。「欧州では既にDCTがかなり普及しており、中国でも搭載比率が伸びている。日本では、通常の内燃機関車にDCTを搭載するのは難しいかもしれないが、i-DCDのようにハイブリッドシステムとの組み合わせであればチャンスがある」(四元氏)という。

世界規模のトランスミッション市場におけるDCTの比率 世界規模のトランスミッション市場におけるDCTの比率(IHS調べ)。DCTの生産台数は、2012年の380万台から、2020年には1200万台まで増加するという(クリックで拡大) 出典:シェフラージャパン

5つのシェフラー製部品を採用

本田技術研究所の齊藤進氏 本田技術研究所の齊藤進氏

 会見には、i-DCDの開発を担当した本田技術研究所 四輪R&Dセンター 第4技術開発室 第3ブロック 主任研究員の齊藤進氏も登壇した。ホンダは、二輪車向けにDCTを自社開発した実績があるものの、「四輪車にDCTを採用するのはi-DCDが初めてのこと。そこで、DCT部品のトップサプライヤーでもあるシェフラーと共同開発するのはごく自然な流れだった」(齊藤氏)という。

 i-DCDの要となるDCTは、エンジン側からデュアルクラッチ、ギアボックス部、モーター+モーター内プラネタリギア(1速ギア)から構成されている。

「i-DCD」のDCTの構造 「i-DCD」のDCTの構造(クリックで拡大) 出典:ホンダ

 採用されたシェフラー製部品は5つある。具体的には、エンジンとギアボックス部の間にある乾式デュアルクラッチ(DDC:Dual Dry Clutch)と切り離し機構のコンセントリックスレーブシリンダー(CSC:Concentric Slave Silinder)、変速時のショックをやわらげるデュアルマスフライホイール(DMF:Dual Mass Flywheel)、変速の動力として用いるギアアクチュエータ(GA:Gear Actuator)、クラッチ切り替えの動力として用いる電動油圧クラッチアクチュエータ(HCA:Hydrostatic Clutch Actuator)、GAとHCAの駆動制御ユニット(TDU:Transmission Driver Unit)である。これらのうち、CSCとGA、HCA、TDUの制御ソフトウェアはi-DCD向けに新たに開発された。

「i-DCD」のDCTに採用された5つのシェフラー製部品 「i-DCD」のDCTに採用された5つのシェフラー製部品(クリックで拡大) 出典:ホンダ
「i-DCD」のDCTのカットモデル 「i-DCD」のDCTのカットモデル。黄色い色で示されているのがシェフラー製部品である(クリックで拡大)
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